ウェイド教授は同書で「デジタル」を「つながること(コネクティビティ)によって可能になる、複数のテクノロジーイノベーションが融合する世界」と定義しています。また、国連におけるIoTの定義も「Any Time / Any Place / Any Thing connection」つまり、いつでも、どこでも、どんなものでもつながることです。すべてがつながったデジタル社会においては、どのような業界も企業も、その影響下にあると言えます。 書籍「対デジタル・ディスプラプター戦略」の原題は「Digital Vortex(デジタル・ボルテックス=デジタルの渦)」です。デジタル・ボルテックスにも自然界の渦巻きと同じ特徴があります。渦に巻き込まれると、速度の速い中心に引き込まれること。渦巻きの中の物体は、それぞれ動きが異なること。そして中心に近づくほど物体がぶつかり合い、バラバラになったり他の物体とくっついたりします。 IMDによるデジタル・ボルテックスのイメージ図 同書ではビジネス領域に応じたデジタル・ボルテックスの影響の強弱を、渦の外周か中心かで表現した図を紹介しています。渦の中央にあるメディア、IT、小売、金融、通信といった業界は例えばAmazonの進出によって強い影響を受けていることがわかります。これは「Amazon効果」と呼ばれています。 プログラム中のブループワークでは参加者が自社のDBT状況や課題をディスカッションした それでは外周に近い物流ビジネスは安全かというと、アメリカではAmazon Flexというサービスがあり、Uberのように一般から自家用車を持ったドライバーを募って指定したルートの配送を委託しています。日本では法規制により同様のサービスは始まっていませんが、既存の流通業界がこれを「法律で守られている」と見るか、「法律によって自分達も縛られている」と見るかが問われているのではないでしょうか。
IMD教授兼グローバルセンター・フォー・デジタルビジネス・トランスフォーメーション(DBTセンター)所長。デジタルがビジネスモデル、ストラテジーやリーダーシップに与える影響に関する調査、研究、教育に取り組んでいる。
IMDによる世界各国各社の幹部向けの公開短期研修「Leading Digital Business Transformation (LDBT)」のディレクター、「Orchestrating Winning Performance(OWP)」の前ディレクター。日本を含む世界各国の先進企業の幹部教育プログラムを指揮。