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【横塚裕志コラム】「正しい危機感」のススメ

私は、「DXが何か」を説明するときに、「あなたの会社は10年後も輝き続けていますか」という問いを投げかけることにしている。DXは、企業が生き残りを賭けて戦うビジネス変革プロジェクトだと考えており、「生き残りを賭ける」モチベーションがなければ、DXはスタートできないと考えているからだ。

この問いを投げるとほとんどの企業の方は「今のままでは生き残れないかもしれない」と答えるだろうと私は想像していた。そういう危機感を前提として、DXを語り合いたいと願っていたからだ。

あえて言うまでもなく、この時代は不透明な要素が多数存在する。

1. お客様の好みがモノからコトに変わっていく、Z世代が出現している

2.デジタル技術が速く進化して、自動運転・再生可能エネルギーなどの新しい産業が生まれ、既存事業が脅かされている

3. 地球温暖化をはじめとして環境や健康問題などで、従来の製品が行き詰まってくる

4. 株主資本主義の限界が見えてきている

5.日本のマーケットでは人口減少・高齢化が激しい

などなどの要素で、既存の産業は破壊される可能性がどんどん生まれている。

しかし、話はそう簡単ではない。
「10年後は誰もわからないから、今を生きるしかないのではないか」とか、「今まで苦しいときも頑張って生き残ってきたから、今後も何とかしのいでいけるのではないだろうか」とか、「そこまで私が心配する責任はない」とか、意外と私が考えているほど危機感を持っている方は多くないようだ。

確かに、正確に10年後を見据えることはできない。10年後の姿を正確に予測できる人は一人もいない。一方で、長期的な危機感無しに3年計画のような短期的な経営で済ましていて将来は大丈夫なのだろうか。

私の提案は、あまりガチに正確なことを予測しようとせずに、10年後は苦しくなっていると想像したほうが、価値ある人生を送れるのではないかということだ。このままではわが社の10年後は売り上げが大きく落ち込んでいる、とか、今の雇用が維持できていない、とか、単なる部品屋になってしまっている、とか、と考えた方がいいと思うのだ。

そのようなネガティブなことを想像して、「正しい危機感」を持った方がDXを創造するモチベーションになり、価値ある人生を送れると考えるべきではないだろうか。

今、間違いなく世界の企業は、グローバルに激しい競争を仕掛けてきている。「正確な予測」より、「正しい危機感」を持つことが、後世から今を振り返った時、「正しい判断」だったと評価されるに違いないと思うのだが、いかがだろうか。

DXは、「正しい危機感」を共有する複数の侍が、新しい企業ビジョンを作る旅に出ることで初めてスタートする。「正しい危機感」が超重要なのだが・・・。

著者紹介

横塚 裕志 Yokotsuka Hiroshi
一橋大学卒業。1973年、東京海上火災保険入社。2007年に東京海上日動火災保険の常務取締役に就任、2009年に東京海上日動システムズ株式会社代表取締役社長就任。2014年より特定非営利活動法人CeFIL理事長となり、2016年にデジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)を設立、以降代表を務める。DBICでは日本を代表するメンバー企業約30社と共に、DX促進や社会課題の解決に取り組んでいる。
  • 特定非営利活動法人CeFIL 理事長 / DBIC代表
  • 日本疾病予測研究所取締役
  • 富山大学非常勤講師

デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)が活動を続ける理由

設立エピソード

2014年、世界で起きていることを肌感覚で確かめるため、半年をかけて世界を回った。そこで感じた危機感を日本企業に正しく伝え、行動を促すための研究会を発足するために奔走。26社の名だたる企業と世界有数の大学と連携し、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)の立ち上げとともに我々のイノベーションジャーニーが始まった。

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