【横塚裕志コラム】渋沢栄一は毎日オートミールを食べていた

渋沢栄一は毎日オートミールを食べていたらしい。では、毎日オートミールを食べると渋沢栄一のような行動が実践できるか?それはNOだ。
この例はわかりやすくNOだが、案外似たような誤解が蔓延している。

成功するイノベーションはエコシステムになっている。だから、エコシステムをつくればイノベーションが成功する。これもNOだ。

成功する新規事業は最新のデジタル技術を使っている。だから、デジタル技術を使ったアプリを考えれば新規事業が作れる。これもNOだ。

成功するビジネスはデータを活用している。だから、データを活用することを考えればビジネスが企画できる。これもNOだ。

成功しているDX企業は、DX推進チームが先導している。だから、DX推進室をつくればDXができる。これもNOだ。

DXやイノベーションは化学変化に似ている。変化するための「十分条件」を満たせば変化は起きるが、変化した結果の特徴を調べた「必要条件」では変化は起きない。

しかし、多くの企業や行政機関などが誤解しているように見える。過去に、「データ活用フォーラム」をつくって多くの企業を集める取り組みがあったが、どれも成功していない。データサイエンティストを高報酬で競って採用するブームがあったが、どの企業も成功していないようだ。みんなで集まってオートミールを食べても、渋沢栄一にはなれないのだ。

では、DXを実現する「十分条件は何か」。それが、DBICが発信している「DBIC VISION PAPER」であり、更に掘り下げた「エスカレーションガイドブック(EGB)」の実践が必要となる。

DXを成し遂げるための「十分条件」は、売上至上主義を卒業して自社の社会的な存在意義を明確なステートメントで表現する新しい経営ビジョンと、それを実現するために本業を大きく変革する新しいビジネスモデルのデザイン、そして過去の成功体験や固定概念から脱皮できた人財、そしてビジョンに共感して実践していく土壌である。

この「十分条件」を整えずに、手軽に事例を見てその形を学んでも、それを実施することはできない。スポーツも同じで、プロの映像を見て学んだだけでは、それを再現することはできない。そこに気が付かずに、デジタル案件というシステム開発を繰り返しても、DX事例のセミナーを受講しても、DXは決して実現できない。

なんとか、この「十分条件」を理解していただける方を増やしていきたいと思うのだが、まだまだ私たちの力が足りない。巷には、必要条件があふれかえっている。しかし、あきらめずに着実に、仲間を、いや信徒を増やしていこうと思う。日本企業の10年後はDXの成否に依存していると思うから。

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