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【レポート】DBIC企業変革実践シリーズ 第8回 :「細胞農業という新産業創出とルール形成」

2021年3月17日(水)、DBICでは企業変革実践シリーズの第8回として「細胞農業という新産業創出とルール形成~技術で勝ってルールで負けないために~」をオンラインで開催しました。講師は多摩大学院ルール形成戦略研究所(CRS)客員教授の福田峰之さん。福田さんは前衆議院議員でCRS傘下の「細胞農業研究会」の事務局長も兼務している方です。今回のテーマは"培養肉"を中心とした細胞培養ビジネスの現状と展望について。米国では、2040年には培養肉と植物代替肉が食肉市場全体の60%に成長すると予測されており、スタートアップ企業も続々と登場しているようです。同研究会では、そうした細胞培養ビジネスの研究だけでなく、国際標準化や業界基準制定についても研究しており、今年5月には提言書も発表する予定だそうです。

福田さんが事務局長を務める「細胞農業研究会」は、世界人口の増加による食糧不足問題や食糧安全保障を論点として、これまでにない技術によって課題解決を図ろうとするのが目的。そのために国内外の大手企業、ベンチャー企業、省庁、研究機関の関係者を招き、国内・国際ルールの形成についての研究に邁進しているそうです。

細胞農業とは、本来、動物や植物から収穫される産物を特定の細胞を培養することで生産する方法のこと。牛や豚、鳥の細胞、植物の細胞を使って、食肉や毛皮、建築資材などを作る研究が行われています。建築資材で言えば、大型の3Dプリンターが開発されれば、つなぎ目のない100mのヒノキの板を作ることも可能だそうです。つなぎ目のない堅牢な木材が実際の建築に応用されれば建築の世界観がまったく変わってしまうと期待されています。

細胞農業における米国のプロダクト事例としては、メンフィス・ミート社の細胞肉のほか、パーフェクト・デイ社が着手している酵母から生産した牛乳、フィンレス・フーヅ社の魚肉培養、モダーン・メドウ社の皮革製品などを紹介して頂きました。これらは、まだまだ商品化にはほど遠いものの実用化に向けて果敢な挑戦がなされているようです。
福田さんは、細胞培養ビジネスは遺伝子組み換えではないことを周知徹底させるため日々努力を重ね、そのために、見せ方やコンセプトづくり、商品の企画についても専門家を交えて鋭意研究中とのことです。

細胞農業関連では、スタートアップ企業が世界中で急増していると言います。ビジネスモデルもいろいろ想定されており、例えば、垂直統合型では、種細胞から培養して精肉し、出荷する「細胞農業メーカー型」、水平統合型では、畜産農家や集約飼育農家、培養工場・食品会社が連携する「ファブレスモデル」、そのほか、ブランド牛の細胞をライセンスする細胞ライセンスモデルや肉愛好家も参加するクックパッド型などが考えられているようです。

市場については、培養肉の中に様々な栄養分を入れることで健康志向に応えようする研究事例に市場拡大の期待が集まっているようです。あるいは、ビーガンの人たちや宗教上の理由から肉を食べられない人たちに対しては、"と殺"していないことを理解してもらうことで新しい市場が創出できると考えているそうです。

培養肉業界の人たちが必ず使う資料に米国A.T. カーニーのグローバル食肉市場のシェア予測(2019年)がありますが、それによると、2040年には培養肉と植物代替肉の市場シェアが60%に拡大。ちなみに、培養肉は35%、植物代替肉は25%、畜産肉は40%と予測されています。
同研究会では現在、提言書づくりに着手しており今年5月にはその第1弾を発表する予定だそうです。例えば、「培養肉」という名称をどうするのか、ちなみに欧米では「カルチャード・ミート」などと呼称されるケースが出てきていますが、まだ統一されていないようです。さらに食肉に分類するのか加工食品に分類するのか、細胞の知財管理はどうするのか、海外とのルール形成はどうすべきかなどについても言及する予定。このほか、既存法の解釈でこの新しい世界を作り上げていくのか、新法の制定が必要なのか、さらには倫理問題に対する解決策など幅広い議論の真っ最中だそうです。

今後、注目されるのは、培養食品、培養建築物が本格的に出現してきた場合、既存の業界はどう対応していくのか。例えば、つなぎ目がない木材で高層ビルが建築できるようになった場合、保険会社はどう対応するのか、これまでフェイクファーと呼ばれて敬遠されていた人工毛皮が本物のミンク細胞商品として販売されれば新しい市場が形成されるのではないかとか。様々な細胞を集めて管理する細胞バンクの誕生や細胞が汚染されていないかをチェックする機械メーカーの誕生、培養肉への味付け技術の開発競争など夢は広がるばかりだそうです。

福田さんの講義後、Zoomを活用した質疑応答、意見交換が1時間近くにわたってなされましたが、この部分は割愛させて頂きます。

【YouTubeでの配信】
2020年8月から社会課題解決を示すイノベーターやルール形成人材を招いての対談を配信する「CRSTube」をスタート。毎月第1火曜日配信。

【CRS細胞農業研究会ニュースレター】
配信頻度:隔週刊(予定)
登録方法:CRSホームページから登録可能
https://crs-japan.us17.list-manage.com/subscribe/post?u=4533e9c4c59f04f4cb58daef6&id=5e0f580972

【スピーカー】
福田峰之(ふくだ・みねゆき)さん
前衆議院議員・多摩大学院ルール形成戦略研究所客員教授

【略 歴】
1964年生まれ。
1988年立教大学社会学部卒業、衆議院議員秘書。
1999年34歳で横浜市会議員初当選(2期)。
2005年41歳で衆議院議員初当選(3期)。
現在、多摩大学院ルール形成戦略研究所客員教授。

【国 会】
2012年自民党IT戦略特命員会事務局長兼資金決済・サイバーセキュリティ・データ活用・プラットフォーム・社会保障番号制度、各小委員長。
サイバーセキィリティ基本法、官民データ活用推進基本法の策定。常にITの関する新たな取り組みを支援し、自らもビットコインによるクラウドファンディングでの資金調達等、挑戦を続ける。

【政 府】
2015年内閣府大臣補佐官(社会保障番号制度担当)
2017年内閣府副大臣(IT・サイバーセキュリティ・科学技術・ 防災・知的財産担当)

【大学院】
講 座:議院内閣制度における公的ルール形成論
研究会:細胞農業研究会・サスティナブルエネルギー研究会

以上

デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)が活動を続ける理由

設立エピソード

2014年、世界で起きていることを肌感覚で確かめるため、半年をかけて世界を回った。そこで感じた危機感を日本企業に正しく伝え、行動を促すための研究会を発足するために奔走。26社の名だたる企業と世界有数の大学と連携し、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)の立ち上げとともに我々のイノベーションジャーニーが始まった。

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