【横塚裕志コラム】パーパスをDX戦略に具現化する方法

多くの企業がDXに苦戦している。「既存事業」のデジタル化はイメージがわきやすいので順次進めているが、10年先という長期視点での自社の未来の姿が描き切れない故に、本質的なビジネス変革というDXが描けないようだ。自社のビジョンなりパーパスは定めてみたものの、それを具現化するビジネスイメージが企画できなくて苦労しているようだ。そこで、それをブレークスルーする方法を以下に提案したい。

停滞の原因の一つは、「DX推進室で企画する」というやり方に由来しているのではないだろうか。DX推進室のメンバーが悪いのではなく、「DXを企画する」というライン組織の限界に着目する必要があると考える。
ライン組織は、既存のビジネスを進行させるための部隊であり、ピラミッド型組織の一部を担い、決められた予算と決められた期間のなかで期待されるアウトプットを出していくことが求められる。故に、従来からの文化、例えば、実現可能性への責任や短期間での規模感へのコミットなどがのしかかる。
このLOCK状態の中では、未来に向かっての新しい発想を繰り出す余地がない。そこで、DX戦略を自由に発想するスタッフ型のバーチャル組織を提案したい。

DX推進室が事務局となって、自由に対話しながら自社の未来を語り合い、その中で新しいビジネスの種を見つけていくチームをつくったらどうかと考える。まず、そのチームメンバーは、徹底してダイバーシティにこだわる。若い人、ジェンダーフリー、お客様に近い職場の人、密接な関係のあるパートナー社の方、お客様、デザイナーなど、いろんな方に集まっていただく。そして、議論ではなく、結論を探さずに皆さんの想いを対話しながらお互いに反応していく。そのテーマは「自社のビジョン、あるいはパーパスの意味とは何か。それを追求するとどんな企業になるべきなのか。どんなビジネスをしていたらいいのか。」に集中する。その過程で、お客様をしっかり観察すること、ある領域の専門家の意見を聞くこと、そして海外での動向など、調べたいことはどんどん調べる。そして、いくつかのイメージを整理したところで、経営者を交えて対話しながらビジョンとの整合性を深堀しつつ方向性を見直していく。そして、一定のコンセンサスができたら、それを受けてDX推進室がプロジェクトに起こしていく。そんな進め方を提案したい。

この方式のいいところは、以下の点でライン組織の課題をクリアしているところにある。

  1. ライン組織ではないので、既存の文化に染まらずに自由に発想する機会となる。
  2. メンバーを思い切りダイバーシティに振り切ることで新しい発想を呼び込む。既存のライン組織では、メンバーのダイバーシティを実現することは難しいが、こういうバーチャル組織ならトライできる可能性が高い。
  3. DX推進室で悶々と企画するより大勢の方と楽しくやることが創造性を生む。
  4. 議論ではなく「対話」することで、お互いが創発されて創造性が発揮される。

一方で、注意すべきはチームメンバーの資質と進め方だ。メンバーは多様化しているだけでは、創発される対話が生まれない可能性もある。少なくとも、チームのリーダーはDBICのDX Questプログラムを卒業し、UNLOCKされ、自分の想いをしっかり持った人財をあてる必要がある。リーダーの文化が古いままだと何も生まれない。また、メンバーのうち自社から出す人は、DBICのトランスパーソナルプログラムを卒業して自由な発想を繰り出す可能性がある人を選びたい。そして、外部のメンバーも真剣に自分の意見を言う方を選ぶ必要がある。
リーダーは、ファシリテーターに徹することも重要な点だ。本質を切り裂く「問い」を発することが重要な役割だ。その「問い」の質に対話の質が依存するからだ。伝統的な会社には、そういう資質があるファシリテーターはまずいない。なにより、そういう訓練を受けないことには、上質なファシリテーターには誰もなれないからだ。

この方式を理論的に説明すると、このチームが「知の探索」を担当して、広くて長期的な夢を語り合いながらパーパスを実装するビジネスイメージを描き、それを受けたDX推進室が「知の深化」を担当して、DX戦略に落とし込んでいく作業をするというスキームだ。

そして、DX推進室がビジネス戦略案にまとめ、経営の承認をいただき、再び先の探索チームのリーダーに戻して、戦略のプロジェクトを実行するという段取りでどうだろうか。ビジョンやパーパスは多くの角度から対話することで具体的に深まっていくもので、神棚に上げておくだけでは機能しない。また、DX Questプログラムの卒業生を具体的に活用する「場」を作ることができる。ご検討いただきたい。

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