【横塚裕志コラム】データ活用で陥る2つの大きな問題

11月の企業変革実践シリーズでは、データサイエンティストの堅田氏を講師に招いた。
堅田氏は、一橋大学を卒業後、外資系メーカーやコンサルティング会社を経て、サンフランシスコ大学でデータ分析学修士号を取得、2017年には株式会社データミックスを設立してデータサイエンティストの育成と多くの会社のデータ分析を支援している。

堅田氏は、日本で「データ活用」において陥りやすい大きな問題を2つ指摘する。

  1. データ分析チームとビジネスチームを分断してはいけない。

データ分析という仕事は、ビジネスのことを知らずには十分機能しないし、逆に、データに基づきビジネス施策を企画する仕事も、データ分析の結果から深い意味を察知することができなければ機能しない。したがって、分析と企画の二つの機能が分断されては効果が激減してしまう。

  • ビジネスパーソンこそがデータ分析の基本を学ぶ
  • データ分析しか知らない(アカデミアにいるような)方がビジネスを学ぶ

の両方が行われ、結果的にビジネスチーム、データ分析チームという分け方そのものがなくなることが理想的だ。

  1. データサイエンティストの能力には、仮説を深堀していく直感、感性、好奇心が必要だ。分析スキル一辺倒ではいけない。

「データを活用する」ということは何をすることなのか。それは、「データを分析すること」で、従来できなかった「虫の目」「鳥の目」で、ターゲットとするお客様や森羅万象を可視化していくこと。従って、「虫の目」「鳥の目」で対象を見ながら、さらに詳しく正しく可視化するために、より深い仮説を立てさらなるデータを分析していくプロセスが重要となる。だから、分析作業と観察作業は分断できない。そして、仮説を立てながら深堀していくためには、対象に対しての好奇心、分析結果に対する感性、仮説を立てる直感が肝要で、その強い感性は分析するスキルとは全く異なるアナログ的な能力だ。「データ活用」というと、いかにも論理的なデジタルな業務と誤解しやすいが、実は、人間としての感性が最も大事な要素である。

私は、この主張を大事にしたいと思う。「データ活用」は手段であって、その目的は「ターゲットにとっての最大の価値を探して提供すること」にあるわけで、まさにターゲットにとっての正しい価値を共感する感性がなくては正しい「目的」を見つけられないと考えるからだ。
「データ活用」に限らず、デジタルツールを活用する目的は「価値づくり」にあることが本質である。そして、真の価値を見極めていく仕事は、複雑な状況を紐解いていかないとはっきりしてこないという難しい仕事である。だから、実はデジタルを活用するという仕事は、今まで以上に人間臭い仕事なのだということを日本企業はもっと認識すべきと思う。
DXを実施するためにはデジタル人材が不足している、という議論が先行し、しかもその「デジタル人材」の能力を「デジタルツールを扱うスキル」に偏りすぎた議論になっている状況にはとても危機感を感じる。このような議論で進んでいくならば、日本はまたデジタルで世界に取り残されていくことになるのではないかと危惧している。

デジタルを活用したビジネス変革でなにより大事なのは、ステークホルダーへの価値づくりである。価値づくりという目的を持たないデジタル投資は何千億かけても意味をなさないことはすでに歴史が証明している。あふれる感性で価値のビジョンを作り、実現していく情熱が日本に不足している。

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