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【横塚裕志コラム】イノベーションの「ゲームチェンジ」

21世紀の「イノベーションの作り方」は、20世紀のそれとは180度違っている。20世紀のままの意識でとどまっていると、たぶん前には進めない。今日の時代の変化・社会の変化・市民の変化によってビジネス自体が大きく変わったからだ。
まず20世紀のイノベーションの特徴を羅列してみる。株主資本主義、企業の利益が目的、企業の強みからの発想、ハード主体、組織の職制での指示、会社人間の残業に依存。
21世紀はどうか。マルチステークホルダー資本主義、社会価値創造が目的、地球人や社会からの発想、ソフト主体、個人の想いと共感の輪が醸成、会社から自立した人の意志。
同じイノベーションとはいえ、まったく180度違う構造である。従って、20世紀のままの考え方・体制ではイノベーションが生まれないことは明白だ。全く違うゲームに変わってしまっているからだ。

DXはイノベーションをベースに企業を変革することだから、DXを進めるためにも、企業の文化・人財を新しいゲームに合わせた21世紀バージョンに変革していくことが求められる。それが、競争力の強化そのものになる。

ゲームチェンジの内容を少し具体的に捉えてみよう。

  1. 社員の資質は次のように変容しなくてはならない
    20世紀:「24時間働けますか」「会社に人生賭けて戦う」
    21世紀:「自分の幸福が最優先」「人生を賭けたい社会課題を見つけて取り組みたい」
  2. イノベーションのテーマの変容
    20世紀:他社と差異化する新商品の開発
    21世紀:企業の存在意義(パーパス)に基づいた社会価値の創出
  3. 検討のプロセスも大きく変える必要がある
    20世紀:新商品実現のための技術的・科学的課題の研究・開発
    21世紀:市民の実態に寄り添った困りごとに共感・真の原因を深堀

この違いがまさにゲームチェンジそのものである。日本企業はこの「ゲームチェンジ」に対応すべく、企業文化や人財を変革しているだろうか。私の目にはそう見えない。日ごろの仕事が忙しくて、周りのことには関心がないという感じに見える企業が多い。スポーツで言えば、野球からテニスにゲームが変わっているのに、相変わらずバットを持ってテニスコートに立っている感じだ。これではゲームに勝てるはずがない。
そして、さらに重要なのは、企業文化や人財を新しいゲームにあった能力に変えることが簡単にはできない、ということだ。例えば、会社の売上げ増のための施策を考えることが得意な優秀な人でも、お客様がどんなことに困っているかを感じる能力は持ち合わせていない。それは、デザイン思考のトレーニングをするとよくわかる。ポストイットを持ってもインサイトがわいてこないのだ。今までの仕事とは全く違う新しい能力・マインドが必要なのだ。まさに、野球選手が1日の研修でテニスプレーヤーになれないのと同じだ。しっかりテニスの基礎から体で学ぶ時間が必要だ。

企業の「パーパス」も同様だ。テニスをやるために「パーパス」というテニスコートを準備することは大事なことだが、そのコートの中で誰も練習していないようでは宝の持ち腐れ状態だ。その「パーパス」が持つ意味を多くの社員が対話しながら深めていくような「練習」を行うことで、「パーパス」が新しい企業文化を醸成していくことができる。残念ながら、日本企業にはそのような動きがあまり見受けられない。

その会社のDX・イノベーションを企画・実行できるのは、外部コンサルでもなくITベンダーでもない。経営としては、まず経営陣の頭の中を企業論理から地球人発想に大きく切り替えることから始め、「パーパス」という志を練り上げていくことが必要だ。そして、「パーパス」というコートの中で、新しい時代のイノベーションが実現できる人財を、一定の時間をかけて基礎から育成することが必須なのだ。野球が忙しいと言っている場合ではない。少し遠回りのように感じられるかもしれないが、時間をかけて学ばなければならない、大きな変革の時期が来ているということを認識し、覚悟しなくてはならない。

デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)が活動を続ける理由

設立エピソード

2014年、世界で起きていることを肌感覚で確かめるため、半年をかけて世界を回った。そこで感じた危機感を日本企業に正しく伝え、行動を促すための研究会を発足するために奔走。26社の名だたる企業と世界有数の大学と連携し、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)の立ち上げとともに我々のイノベーションジャーニーが始まった。

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