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【横塚裕志コラム】「信頼経営」と「パーパス経営」

DBICは、日本企業の生産性を欧米並みに引き上げる方法を探るため、既にこれを成し遂げている4つの小国(デンマーク、シンガポール、スウェーデン、スイス)の戦略を調査した。その調査結果からインサイトを得たうえで提言という形で考えをまとめた。それが、今回発行した「DBIC VISION PAPER 2」だ。

この調査の中で、生産性向上の最大の施策は「信頼経営」にあるとの結論に至った。経営と社員とが「信頼」で結ばれることで、組織をフラットに変革し徹底した権限委譲を進めることができる。社員は一定の権限が与えられ、信頼という心理的安全性が保たれている中で、自ら意思決定を行うことができるので、思う存分能力を発揮することができ、生産性が飛躍的に拡大する。日本で現状行われているピラミッド型組織での上意下達・マイクロ管理という方法とは180度異なる形態である。
この「信頼経営」という大きな構造改革(トランスフォーメーション)なくして1.5倍の生産性は実現できないだろう。現状の組織・体制を温存したままでは、いくら「デジタル化」したところで大きな効果は生まれてこないことは、これまでの日本のIT化の結果を見れば一目瞭然だろう。

4つの国の方々のご発言から私が勝手に推察すると、「信頼経営」を構成する要素には、少なくとも以下の4つがある。

  1. 社員が個人として自立し、企業という組織の従属物ではない、自由な意思を持った「人」として存在し、自分や家族の幸福を大事に考える
  2. 企業は、社員を独立した「人」としてリスペクトし、その人が持つ能力をできるだけ拡大することに努力し、その人の幸福を第一に考える
  3. 経営と社員はお互いに「信頼」し合い、心の絆で結ばれ、挑戦を尊重し、失敗を許容する
  4. 組織はフラットにして、社員に権限を委譲して「応援」するが「管理」はしない

仮にこの基本原則をベースに、「パーパス経営」の実践方法について考えてみた。
「パーパス経営」は、企業の存在意義を「パーパス」として掲げ、それを軸として企業活動を進めようとする手法である。新しいステークホルダー資本主義に基づく企業経営の考え方であり、「社会価値創造」を存在意義に掲げる企業が多い。従来の売上や利益の拡大を目指した経営とは大きく異なる。ただ、現実の活動の中では単なる「お題目」になりやすく、全社員のモチベーションにまで染み込ませることが悩みとなっている企業が多い。

これを「信頼経営」の4要素で実践すると以下のような考え方になる。

  1. まず、社員一人一人が自分の生きがい、生きる意味、働く意味を考え、自分のパーパスを確立する
  2. 企業は、社員が持つそれぞれのパーパスを尊重し、仕事の中でそれが実現できるようにサポートする
  3. 経営が定めた「企業のパーパス」と社員が持つ「個人のパーパス」を尊重し合いながら、その両立を目指す
  4. 企業パーパスと個人パーパスが重なり合うテーマで、新しい価値創造が現場から始まる

以上のようなことを想像してみると、ポイントは、個人のパーパスと企業のパーパスの二つがあること、個人が自分のパーパスを持つことが「パーパス経営」を成功させる本質であること、と推察される。逆に言うと、「パーパス経営」も旧来のピラミッド型組織ではうまくいかない、ということではないだろうか。
1月6日の朝日新聞朝刊6面に、SOMPOグループが全社員6万人に「マイパーパス」を言葉にするように活動しているとの記事を見つけた。新しい経営を模索するとても素敵な活動だと思う。

DBICも私も「信頼経営」をしっかり考えていく1年にしたいと思う。EGBもQUESTも4Dも、「信頼経営」を実践するための一貫した考え方であると確信しましたので。

※DBICでは12月16日にVision Paper 2「Small Smart Nationsから学ぶ信頼経営への進化」を発刊しました。このコラムにも通じる内容ですので是非ご一読ください!
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設立エピソード

2014年、世界で起きていることを肌感覚で確かめるため、半年をかけて世界を回った。そこで感じた危機感を日本企業に正しく伝え、行動を促すための研究会を発足するために奔走。26社の名だたる企業と世界有数の大学と連携し、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)の立ち上げとともに我々のイノベーションジャーニーが始まった。

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