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【横塚裕志コラム】「信頼経営」は「社員ファースト」でサステナブル

これからの経営の大きなテーマが「サステナブルな経営」だ。特に、「ヒト」という資源は世界的に見ても限界にきているなかで、限られた資源「ヒト」をいかにサステナブルに活用していくかが経営の最重要戦略となっている。
一方、日本の大企業のこれまでの人事戦略を振り返ると、人財の無駄遣いをしてきた側面もあるのではないだろうか。大企業では、学歴の良い優秀な新人を大量に採用し、社内競争で少数の課長・部長を選抜する。その結果、社内競争で報われなかった多くの人が上意下達ピラミッドのなかで言われたことだけをやっているという状況を招いている。その状況の中では、多くの社員がその能力をあまり発揮せずに眠らせているように見える。まさに、「もったいない」し、サステナブルではない、ように思われる。もちろん、それは他人事ではないし、自分も反省しながら書いている。

では、限られた資源である「ヒト」の能力を十二分に活用したサステナブルな制度とはどのようなものだろうか。そのサステナブルな経営を実践しているのが北欧の国・企業であり、私たちは彼らから多くのことを学ぶことができると思う。
そのキーが「信頼経営」であり、その根幹をなすのが「社員ファースト」という考え方だ。今後、その制度の内容を調査したいと考えているが、断片的な情報を集めると以下のような考え方だ。

  • 仕事と人生:社員が人生を幸福に過ごしたいという想いを尊重し優先する
  • 仕事の内容:社員が取り組みたい仕事を選ぶ
  • 仕事の環境:16時終了、残業無し、週休2日、年間5週間の休暇
  • 仕事の権限:社員が一定の意思決定権限を持ち自主的な行動ができる
  • 能力拡大 :個人別に本人が希望する能力取得を会社がサポートする
  • モチベーション:全員がフロー状態で夢中になって働ける
  • 組織の形態:フラット
  • 制度の基盤:経営と社員とが厚い信頼で結ばれている

このような仕組みが実現できれば、社員全員がそれぞれの能力を120%発揮できる状況になることは想像できる。しかし、現実にこのような仕組みをつくることはとても難しいのではないかと考えるのが今の私たちの本音だろう。
例えば、「日本には日本の事情があり、日本の仕組みの良さがあり、大企業ならそれなりに新卒人気もあるし、慌てる必要はない」というご意見。あるいは、「そのような主張をするなら、具体的な事例を見せてもらわないと信用することはできない。政府も学者もそのようなことを主張している人はいない」というご意見も多い。「経営としては、かなり以前から残業縮減、休暇取得へ向けた活動をやってきてある程度改善してきているが、残業無しや5週間の休暇は無理でしょう」というご意見が多数だと思う。

しかし、北欧諸国は国土や人口が少なく、「ヒト」を活用する以外にリソースがないなかでグローバルの激しい競争を勝ち抜こうとしている。その必死の努力が、上記の「社員ファースト」の状況をつくるサステナブル戦略にたどり着いている。その戦略で間違いなく生産性を飛躍的に拡大して、日本の1.5倍の平均年収を獲得している。この事実を無視して日本流を貫いていていいのだろうか。

私は、日本は今、組織・人事戦略を大きく変革すべき時期に来ているのではないかと考える。例えば、「ヒト」資源の確保だけでも以下のような課題が表面化している。

  1. 既に数年前から、20代・30代の若者の雇用流動性が高まっており、大企業でも転職をする若者がかなり増えてきている。新卒でも、外資や海外への流出が目立ち始めている。個人が会社を選ぶ時代に変化しており、Z世代はますますこの傾向が強まると想定される。
  2. 企業経営にとっては、「価値を創造できる」人財が重要だ。そのためには、例えば、学校の成績が良いというのではなく個人の想いを強く持っているかどうかなど、多様な人財を採用していく必要がある。
  3. 世界で戦うためには、世界で通用する人財を海外から採用することや、海外人財と日本人財との深いコミュニケーションなどで、世界のマーケットの厳しい風を感じる環境に置く必要がある。

人財確保だけでも大きく変化することが求められているなか、人事評価、社員育成などのスキームも新しい時代への変革が求められている。従って、断片的に人事制度を改革するのではなく、このタイミングで「社員ファースト」の考え方を学びながら、目指すべき新しい組織・人事制度の方向性全体を議論していくことが、サステナブル経営の大事な一歩になってきていると私は思う。

※DBICでは12月16日にVision Paper 2「Small Smart Nationsから学ぶ信頼経営への進化」を発刊しました。このコラムにも通じる内容ですので是非ご一読ください!
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2014年、世界で起きていることを肌感覚で確かめるため、半年をかけて世界を回った。そこで感じた危機感を日本企業に正しく伝え、行動を促すための研究会を発足するために奔走。26社の名だたる企業と世界有数の大学と連携し、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)の立ち上げとともに我々のイノベーションジャーニーが始まった。

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