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【レポート】企業変革実践シリーズ第18回「2020~21年度DBICソーシャルイノベーションプロジェクト報告会」~睡眠障がいと発達障がいプロジェクトへの取り組みについて~

開催日:

2022年3月15日(火)、DBICでは企業変革実践シリーズ第18回として「2020~21年度DBICソーシャルイノベーションプロジェクト報告会」をオンラインで開催しました。DBICは、働く女性の健康問題に加えて、2020年から「睡眠障がい」と「発達障がい」の2つの社会課題解決のための支援プロジェクトを行ってきました。これらの障がいは、21世紀になってから多くの発症事例が出てきており、"現代社会病"と言っても良いものです。今回は具体的な課題解決型のプロジェクトのケースとして、2つの障がいにおける深刻さをDBICメンバーの方々に理解して頂く機会として報告会を開催しました。

報告会は、DBIC副代表の西野弘による睡眠障がいの現状からスタート。「日本は世界一眠らない国であり、睡眠不足による経済損失は15兆円以上と言われている」という内容が紹介されました。東京近郊に住んでいる人の通勤時間の平均は、1時間20分。往復3時間も通勤に費やしている。さらに最近の研究ではっきりしてきたのは子どもたちへの影響で、特に15歳以下の子供たちの脳の発達に悪い影響を及ぼしているとのこと。ちなみにOECD調査による各国の平均睡眠時間は、1位の米国が8時間48分、2位のスペインが8時間36分なのに対して、日本は7位で、7時間22分だそうです。また、この2年間はコロナ禍の影響で生活パターンが乱れているだけに睡眠障がいが社会課題としてクローズアップされています。 人がなぜ眠るのかについて西野副代表は、「1つは身体を休めるため、もう1つは脳の温度を下げるためです。このクールダウンには一定の時間が必要ですが、症状がひどくなるとオーバーヒートしかねない」。米ハーバード大学で撮影した脳の断層写真をみると、睡眠障がいの人の写真は普通の人にみられる赤色が少なく、黒い部分が多くみられる。脳の機能が働いていないことの証。この睡眠障がいに対して、日本でしっかりと治療ができる病院は兵庫県明石市にしかないそうです。
西野副代表によれば、重度の睡眠障がいでは、脳が身体のスイッチを切ってしまう。バットで叩かれても起きない。そうでなくても、突然、不登校になったりする症状が発生するとのこと。頑張り屋さんで、優等生タイプに症状が出やすいようです。初動での間違いとして家族が精神科に連れていくことが挙げられる。それで「うつ病」と診断される。さらに、「睡眠障がいの子どもたちに学校が薬を飲ませようとしている事実があります。うるさい子どもに蓋をしようという話しです。これは絶対に止めないといけません」と声を大にしていました。

最近では、睡眠障がいと発達障がいの相関関係が注目を集めているとのこと。睡眠障がいが進むことで、本来、発病しないはずのADHD(注意欠如・多動症)が発病してしまうという事例にも触れ、睡眠障がいと発達障がいを合わせると小学校4年生くらいからの発症が増加している。これは、「塾」の影響があるようで、子どもたちの生活パターンが大きく変わるため。それに最近ではスマホも大きく影響しているようです。

続いて、「すいみんログプロジェクト」について、開発を担当した野村総合研究所の水鳥裕太さんから報告がありました。それまで、手書きで紙に記録していた睡眠時間などを、アプリを使って子どもたちに直に入力してもらうというのがこのプロジェクトの目的。睡眠の長さ、就寝時間、起床時間、夜中に起きてしまった時間、朝食を毎日規則正しく取っているかを入力してもらうもので、AI診断によって、改善提案を知ることができる仕組みだそうです。それまでのアナログ記録では、記録紙を回収しなければならず、その診断に2週間、専門家のフィードバックを得るのに数か月かかっていたそうです。AI診断には、睡眠障がいの研究で著名な三池輝久・熊本大学名誉教授らが過去に収集した膨大なデータを活用しているとのことです。
このプロジェクトの所感と気づきとして、水鳥さんは、「子どもたちの生活スタイルを多面的にみることの重要性、原因と対策を繋げることの重要性を痛感した。ユーザーインターフェースにしても、開発のある段階から、子どもが使いやすいデザイン、子どもが使いたいと思うデザインを目指すようになった」ことを挙げていました。また、「何を作りたいかではなく、何を解決したいか、という意識が重要」という気付きについてのお話しも印象的でした。

続いて、野村総合研究所の大歳岳さんから「発達障がいのポータルサイト」についての報告がありました。発達障害情報・支援センターが運営しているポータルサイトのリニューアル・プロジェクトで、まず手掛けたのが、分散していた発達障がいに関する情報を収集し、誰が利用するのか、どのような情報を探しているのかなどの整理作業。その中で、必要な情報が必要としている当事者、家族、支援者に届いていないことが判明したと言います。また、発信者によって、表現の仕方が異なり、互いの理解を妨げていたとのことです。
そこで実際に手掛けたのが、ステークホルダーごとの行動プロセスと必要情報要件の整理。ここではDBICで学んだデザインシンキングのアプローチ手法を使って、顧客をはじめ、ステークホルダーの行動や課題を理解するためのジャーニーマップを作成、そこから、彼らの行動を理解し、どのような場面でどのようなことを考えるのかを整理したそうです。
大歳さんは最初、ホームページを分かりやすいものにリニューアルすれば良いだろうという考えだったようですが、いろいろ取材するうちに、「自分の子どもは周りと違う行動をしていることに悩んでいる」ことや「支援者は、保護者が相談に来るのが遅いことに悩んでいる」といった状況が把握でき、支援者と保護者の行動を後押しできるホームページづくりを目指すように変わっていったそうです。

野村総合研究所の2人の報告の後には、昨年、NHKの「おはよう日本」の中で紹介された子どもの睡眠の乱れについての映像が紹介されました。(https://www.nhk.jp/p/ohayou/ts/QLP4RZ8ZY3/blog/bl/pzvl7wDPqn/bp/pKQwB26yn7/) その解説の中で、睡眠マネジメントに真剣に取り組んでいる学校の場合、2、3年もやれば不登校が30%から40%ほど減るという報告も副代表の西野からなされました。睡眠マネジメントは成績低下の防止にも役立つし、家族に対して怒りやすいという問題も解消されるのではと言います。

続いて、国立障害者リハビリテーションセンター病院長の西牧謙吾先生から「発達障がいの現状と今回のHP統合化の意味と価値」についてのお話しを頂きました。
「発達障害ナビポータル」(https://hattatsu.go.jp/)のリニューアルでは、Webサイトと連動したSNSとの連携のほか、教育と福祉の連携による支援人材育成のための研修動画のアップ、地方公共団体での発達障がい支援に関する取り組みを紹介するデータベース機能も付加したそうです。また、多言語対応にも着手して、現在のホームページでは5言語に対応したそうです。注力している特集コンテンツについては、外国人保護者向けの多言語版パンフレット(18言語)、女性の困難さへの気づきと対応(女性の発達障害)、強度行動障害、新型コロナウイルス感染症の関連情報、災害時の発達障害児・者支援などの情報提供についてのコンテンツ掲載について準備を進めているとのこと。
西牧先生からは、DBICメンバーに対して、「実際にポータルにアクセスし、現時点で必要と思われる修正点や改善点、サイトを周知するためのアイデア、ユーザーを飽きさせないためのご意見があれば西牧宛にご連絡ください」とのメッセージがありました。

次に、西牧先生から紹介されたのが精神医療や発達障がい(ASD)に関する歴史で、これらは、その時代性と関連が深いと指摘されました。例えば、20世紀初め。1次産業から2次産業への移行期には、自閉症など一見風変りな人を座敷牢に閉じ込める。変わった人だとして精神病院に閉じ込めて社会から隔離することが少なくなかった。日本は、現在も統合失調症を理由に入院させる国。今、約30万人もいる。こんな国は世界のどこにもないと憤りを隠しませんでした。
次のテーマとして取り上げられたのは、不登校の問題でした。この問題が出現したのは、高度成長時代の昭和30年代。引きこもり第一世代も現在、何十万人もいる。発達障がい、精神疾患、引きこもり、認知症などは社会から同じような扱いを受ける代表的な病気とされたまま。本当に日本が住みやすい国になるには、こうした精神疾患、発達障がい者に対する対応の仕方を本質的に変えていくことが現代の日本に求められていると言います。2025年問題とされる日本の超高齢化社会の到来の中で、この問題は最も大事な社会課題だと位置づけるべきと強調されていました。

最後に現在進行中のDXを使ったプロジェクトについて話されました。
1つが、「未来の子ども病院プロジェクト」。新潟県が手掛けている新しい「小児病院」の建設プロジェクトで、小児病院を中心に医療、福祉、教育につながる仕組みの創設。地域全体がリンクするものを目指しています。
もう1つが「北海道小児慢性特定疾病支援プロジェクト」。北海道をフィールドに子どもの慢性疾患を支援するプロジェクトで、大人の難病の人に、自分とは違う難病であっても難病で苦しむ子どものためにひと肌脱いで下さいとお願いしているもの。一般財団法人北海道難病連の助けを借りて、北海道の医育機関、教育、保健所、親の会をICT活用により、相談機能を高めるのが狙いだそうです。

【スピーカーご紹介】

西牧謙吾(にしまき けんご)氏
国立障害者リハビリテーションセンター病院 院長
同センター 発達障害情報・支援センター長
【学歴】
昭和56年 3月  大阪教育大学教育学部特別教科(数学)課程 卒業
昭和63年 3月  大阪市立大学医学部 卒業
【職歴】
昭和63年 6月  大阪市立大学医学部附属病院臨床研修医(小児科)
平成15年 4月  独立行政法人国立特殊教育総合研究所奉職(病弱教育研究部長)
平成25年    国立障害者リハビリテーションセンター病院第三診療部長
平成28年 4月  国立障害者リハビリテーションセンター病院長
平成29年 4月  同発達障害情報・支援センター長(併任)
現在に至る。
【専門医等】
小児科専門医、認定小児科指導医
社会医学系指導医、専門医
医師会認定産業医
日本医師会健康スポーツ医、日本体育協会スポーツドクター

デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)が活動を続ける理由

設立エピソード

2014年、世界で起きていることを肌感覚で確かめるため、半年をかけて世界を回った。そこで感じた危機感を日本企業に正しく伝え、行動を促すための研究会を発足するために奔走。26社の名だたる企業と世界有数の大学と連携し、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)の立ち上げとともに我々のイノベーションジャーニーが始まった。

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