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【レポート】DBICソーシャルイノベーション実践シリーズ2022 「日本の障がい者就労にオープン・イノベーションを起こす!」プロジェクト説明会開催

開催日:

2022年4月28日(木)、DBICではソーシャルイノベーション実践シリーズ2022 として「日本の障がい者就労にオープン・イノベーションを起こす!」プロジェクトの説明会をオンラインで開催しました。DBICでは約2年前から、「働く女性の健康問題」をはじめ、「発達障がい」や「睡眠障がい」といったソーシャルイノベーションに関するプロジェクトに取り組んでいますが、今回はDBICメンバーが協業して日本で初めて「障がい者就労のプラットフォームづくり」に取り組もうというのが目的です。説明会では、プロジェクトの主旨のほか、障がい者雇用に特化したスウェーデン国営企業サムハルの活動について、また、住友生命がシンガポールで取り組んでいるTomoWorkの活動紹介、さらに今回の協業の提案企業である特例子会社NRIみらいとのコラボレーションプランについての紹介がなされました。
本レポートでは説明会の内容を再構成してお伝えします。

冒頭、DBIC副代表の西野弘からDBICが今年推進しようとしている「障がい者雇用促進のためのデジタルスキル・トレーニングプラットフォーム構想」についての説明がなされました。コロナ禍の影響で、障がい者就労のメインだったコピー作業や簡易印刷、社内便の振り分け作業などアナログ的な仕事が激減していること、さらにデジタルスキルを活かした仕事がまったくと言っていいほど創造されていない日本企業の現状について警鐘が鳴らされました。
次に、同プラットフォームづくりの参考事例として、障がい者雇用に特化したスウェーデン・サムハル社の事業概要についての紹介がありました。サムハルは社員数が2万5,000人。そのうち85%から90%は何らかの障がいを持つ人が雇用されている。ちなみに、スウェーデンは人口が1,000万人で、就労人口が600万人。この数字からみればサムハルがいかに大規模な会社であるかが分かる。従業員規模でいうと同国で15位内。しかも全国で600か所、1万3,000件の提携先と障がい者雇用を実現している。このように世界の中でも稀有な存在と言えるサムハルで就労している人は、心臓や血管、肺の機能障がい、聴覚、視覚、運動障がい、精神疾患、一般的な学習障がい、社会医学的障がい、ぜんそく、アレルギーなど、障がいの内容も多岐にわたっているとのことです。
日本の特例子会社の場合、障がいの種類が1つもしくは通勤が可能な軽度の障がい者雇用が多数。サムハルの場合は真逆で、精神障がいと身体障がいなど複数の障がいを保有している人を優先的に雇用する決まりになっているそうです。スウェーデンは同一賃金の国なので、障がい者だからと言って差別はなし。同じ職種であれば、その職種の85%の給与が払われる仕組み。何故、85%なのかと言うと、サムハルの従業員2万5,000人のうち、毎年1,500人が100%の賃金がもらえる企業に転職しているから。実際、政府からは毎年1,000人以上を一般企業へ就職できるように育成するようにとの指導がある。このためサムハルでは、読み書きをはじめ、計算能力、体力、集中力、コミュニケーション能力など16のスキル分類を実施するとともに、24の職務分掌で障がい者のスキルを診断し、2~5日間の研修を実施。就労後も定期的な研修や面談を行い、派遣先職場での正社員雇用の支援をしているとのことです。
最後に触れられたのがDBICのプロジェクト・ビジョンについてでした。
具体的には、

  1. 社会全体がデジタル化していく中で、"昭和のモデル"で留まっている障がい者の育成と雇用モデルに変革を起こすためのプラットフォームをつくる
  2. 住友生命がシンガポールで先行しているモデルを参考に諸外国の先端事例も導入し、デジタル時代の障がい者雇用モデルを確立する
  3. この課題は1社だけで解決できるわけではなく、共通の課題を有しているDBIC企業が協力して解決する

というものです。

次のセッションは、住友生命がシンガポールで約3年前から取り組んでいるTomoWorkの紹介。シンガポールからZoom参加した住友生命の百田牧人さんからTomoWorkの活動についての事例が話されました。TomoWorkは、2019年9月にシンガポールで立ち上げた障がい者就労の新しいモデル創発の取り組みで、これまでに130人の障がい者が参画し、マイクロソフトやグーグル、メタなど50社の多国籍企業から各種サポートを得ているとのこと、また、200人を超える企業ボランティアメンターの参画を得て、障がい者のデジタルスキル向上のためのトレーニングプログラムを実施しているそうです。スタート以来、こうしたIT企業と共同でウェビナーやイベントを開催し、すでに大手企業への就労実績も出てきているようです。
TomoWorkとして、なぜ、障がい者就労に取り組むのか。なぜ、シンガポールで取り組むことにしたのかについては、「シンガポールはIMDの世界競争力ランキングで2019‐2020年に2年連続1位になっているアジアNo.1のイノベーション都市。同国のビジネスの俊敏性、オープン性が活かせるのではないか。政策面でもテクノロジーの活用やデジタルスキル開発を前提とした障がい者就労のモデル創発を目指す環境が備わっていた」と百田さん。実際、政府として時代に即したスキルやリカレント教育に莫大な投資を行っており、IT企業も多くの学習コンテンツや資格試験を提供し、新たなスキル獲得に注力している。例えば、シンガポール政府は肝入りの政策として「SkillsFuture」という学習プログラムを実施、グーグルは政府とタイアップして「Skills Ignition SG」というリカレント教育を、メタでも「Meta Blueprint」というオンライン学習コンテンツを提供。ちなみにTomoWorkの参加者もメタのコンテンツを活用して資格を得ているとのことです。
TomoWorkでは現在、パートナー企業とともに、TAP(タレント・アクセラレーター・プログラム)とTEP(タレント・エクスプローラー・プログラム)の2つのスキル開発プログラムを障がい者や特別支援教育を必要とする学生に提供。TAPは実践的なプログラムを提供し、昨年23人、今年も20人近くが取り組んでいる。デジタルマーケティングやデータ分析に挑戦したり、UX、UIのデザイン開発にチャレンジしてもらう。このプログラムには、メタやグーグル、マイクロソフト、ブルームバーグなどの企業が参加しているそうです。TEPは少し軽めのプログラムで昨年は60人ほどが参加し、企業からのメンタリングを得てキャリアビジョンを描いてもらう。履歴書の書き方やインタビューの受け方とか、効果的なプレゼンテーションのやり方などを学んでもらうそうです。このうちTAPでは昨年、大手警備会社の「ショッピングモールで稼働させる自走警備ロボットのUI開発」で優勝、すでにモールで活躍しているとのことです。
百田さんによると、「日本で障がい者の採用をしたいが、なかなか良い人材が見つからない」、「日本にTomoWorkのような取り組みはないのか」、「日本で障がい者インクルージョンの取り組みを一緒にやれないか」といった声が、メタやグーグル、バークレイズ、ボーイング、リンクトインなどから挙がっており、こうした声を今後DBICメンバーに紹介していきたいと語っていました。

最後に、NRIみらいの長崎浩一社長から今回のコラボレーションプランについて説明がありました。同社は創業7年目を迎えるNRIの特例子会社で、長崎さんが社長に就任したのは2020年。コロナ禍が発生したばかりで、社長就任の第一声が「全社員自宅待機」だったそうです。10数人からスタートして、毎年新卒を採用、現在は従業員数104人の規模に成長しているとのこと。これまでは、郵送物の仕分けやコピー作業などのアナログ作業のほか、社内向けのカフェ・サービスなどを主業務としてきたが、DBICを通じて、サムハルやTomoWorkの活動に触れ、障がい者がもっと活躍できる新領域の開拓を決めたそうです。
その一環で立案したのが、「デジタルスキル・トレーニングプラットフォーム構想」です。具体的なプランについてはこの構想図をご覧ください。

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長崎さんからは、この後、今年7月末までの構想の進め方についての説明がありました。

デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)が活動を続ける理由

設立エピソード

2014年、世界で起きていることを肌感覚で確かめるため、半年をかけて世界を回った。そこで感じた危機感を日本企業に正しく伝え、行動を促すための研究会を発足するために奔走。26社の名だたる企業と世界有数の大学と連携し、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)の立ち上げとともに我々のイノベーションジャーニーが始まった。

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