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【レポート】企業変革実践シリーズ第20回「信頼経営に必要なものは何か〜日本にある自然経営の事例から〜」

開催日:

2022年5月25日(水)、DBICでは企業変革実践シリーズ第20回として「信頼経営に必要なものは何か〜日本にある自然経営の事例から〜」をオンラインで開催しました。今回の講師は、一般社団法人自然経営研究会 世話人で株式会社SALT 代表取締役の島青志さん。自然のように変化し続ける経営、「日本的な自然観」に基づいた生命的な組織のあり方を研究するために設立された自然(じねん)経営研究会。島さんからは、研究会の活動を始めてから5年経過した今だから見えてきたことをはじめ、日本の自然経営、ティール組織、自律分散型組織の現状についての話しを語って頂きました。DBICが今年深堀りしようとしているテーマの「信頼経営」に必要なものは何かを考えるための大きなヒントを頂きました。

島さんが自然経営研究会に参画するキッカケになったのは東日本大震災における復興支援活動での経験だったそうです。なかでも、西條剛央早稲田大学大学院講師(当時)が震災直後に立ち上げた復興支援組織「ふんばろう東日本」に参加した経験が大きかったとのこと。この組織は、3,000人以上の震災ボランティアが参加したもので、「構造構成主義」に基づく自律型の組織形態を追求した活動を展開。震災によって一時期は、青森県から千葉県まで50万人以上の避難民が存在していたそうです。全国から支援物資がたくさん集まってくるが、それをどう仕分けしてどう届けるのかは大きな課題でした。ふんばろう東日本ではTwitterを利用した「避難所のほしいものリスト」を提供し、物資を待っている人々と配送業者との橋渡し役を担ったそうです。
この活動に参加して島さんが気づいたことは、「ここ(被災地)は日本の問題点が凝縮している。つまり未来の日本の場所である」ということでした。その後、慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科に入学し、2018年には、ティール組織やホラクラシー経営などの調査活動に従事。その中で自然経営研究会の存在を知ったそうです。研究会に参画した後は、25社の自律分散型企業の実態調査に臨みました。 調査後の定性的分析では、1)経営権限の委譲 2)社員の自律性 3)フラットな組織 4)情報の透明性 5)自己組織化する組織 6)ITの活用 7)給与、報酬の自己関与 8)理念経営 の8つのキーワードが共通項として浮上したとのこと。これをナラティブ分析にかけると、「ITの活用に裏付けられた情報の透明性に基づく権限委譲でフラット化した組織が、社員の自律性を増進させる。社員の自律性と理念経営に基づき暗黙知化された(共有)ビジョンが、組織の自己組織化を生じさせ、さらなる権限委譲と自律化を促進させる。」という文章が出現したそうです。自然経営の2つのポイントとして、企業理念の浸透、情報の透明性によって、目的と状況が確定すれば方法も決まるという分析もなされたようです。

次に島さんから、自然経営を標榜し、実践する国内5社が紹介されました。
最初に紹介されたのが、サイボウズ株式会社。設立は1997年、従業員数は969名。「キントーン」などのグループウェア開発で知られている会社ですが2005年当時、退職者率が28%になり、それを機に大幅な企業改革に着手。その結果2012年には4%まで改善した実績を持ちます。青野社長は「従業員の要望をすべて聞いて改革に着手」。その結果、在宅ワーク、時短、育休、副業制度をいち早く導入。今回のコロナ禍でも早くから在宅ワーク制度を導入していたことが功を奏したそうです。同社の大きな特徴として、経営会議をリアルタイムで動画公開していること、さらに経営データはすべての社員がアクセスできるようにし、文字通り情報の透明性を確保している点だと島さんは解説します。

2番目は、株式会社ガイアックス。ソーシャルメディアやソーシャルアプリの開発会社で設立は1999年。従業員数は正社員が142名ですが、多くは同社を退職した契約社員との雇用形態を取っているのが特徴だそうです。経営会議は社外にも動画で公開しているほか、合宿は社外の人も参加が可能な仕組みを採用。最近ではシェアエコノミーの事業を展開していて、東京・永田町のオフィスはシェアオフィスを提供し、島さんも会員として活用しているそうです。

3つ目は株式会社ネットプロテクションズ。ここはフィンテック事業がメインで2000年設立。従業員数は269名。人事制度「Natura」の採用、マネージャー制度を廃止し、その代わりにカタリストと呼ぶ人を設置しているのが特徴。カタリストとは触媒という意味で、マネージャーとカタリストの違いは、「部下の評価をしない」ことだそうです。従来の評価制度では、上司への"受け"ばかりに気をとられ、お客様を軽んじる傾向が。そのために360度評価制度を取り入れるようになったとのこと。同社のユニークな点は、評価する相手を自分で選べるようにしていること。さらに評価して欲しい人も選ぶことができる。評価の高い人から評価を受けるとポイントが高くなる。評価の高いサイトからリンクを受けると点数が高くなるグーグルのページランクと同じ仕組みを取り入れています。

4社目は企業向けアプリ開発の株式会社ゆめみ。設立は2000年で従業員数は288名。日本マクドナルドやパナソニックなどの企業向けアプリを開発している企業で、2018年に「アジャイル組織宣言」をし、一夜で制度変換をしたことで知られています。社員全員がCEOと同じ権限を持てるという「全員CEO制度」、「有給取り放題制度」、「給与の自己決定制度」のほか、プロジェクト実行や購入などで上司の承認決済がない「アドバイスプロセス制度」を導入したことでメディアでも取り上げられています。同社社長によると、個々の人は信頼しているが、基本は性悪説で経営に取り組んでいる。各種ユニークな制度を運営している同社が歯止めをかけるために採用しているのがイエローカード制度。カードが2枚になると有給や給与に関する制度の権利がなくなる。島さんがインタビューした2年前の時点では1枚貰った社員はいたそうです。そうした制度があると皆んな無茶なことはしなくなるとのことでした。

最後に紹介されたのは、未来工業株式会社。1965年設立で、従業員数は1,223名。電気設備資材、給排水設備資材の製造・販売会社で島さんの話しにも力が込められていました。コンセントの裏側、壁内や天井裏の電気設備を製造販売しており、「ホウレンソウ禁止」「残業禁止」「ノルマ禁止」の3つの禁止を経営に活かしている会社です。社是は「常に考える」こと。会社の至る所にこの言葉が貼ってあり、考えてアイデアを出し、それを目安箱にいれる。机の配置を変えたら仕事がやりやすくなるとか、社員食堂の食べ物がこうしたら美味しくなるとか、なんでも良いから考えろ、そうしてアイデアを目安箱に入れたら500円貰える。採用されようがされまいが貰える。採用されたらその内容によって報奨金が貰える。残業禁止も、ノルマ禁止も"考える"ことにつながるから採用したそうです。ノルマがあると付き合いがある代理店まわりばかりしがち、ノルマがなければ自分たちの設備資材がどのように扱われているのかを知るために現場まわりに時間が割ける。そうして、天井にぶら下がりながらネジを取り付けるとか、壁の向こうの穴を手探りで開けるといった現場作業の実態を把握。そうしてネジの角度はこうしたら良いのではと大工さんと一緒に考える。現場で得た情報を会社に持ちかえり改良を加えていくという好循環が3つの禁止から生まれたそうです。
社員を徹底的に信頼しているのも同社の特徴。社員食堂では食券なし、自己申告制で給与から天引き。チェックもしない、チェックするとそのための人件費がかかるからというのがその理由。例え5,000円護摩化されても、チェックする人件費より損害は少なかろうという合理的な考え方で運営している。岐阜の工場には守衛所があるけれど、守衛さんはいない。24時間の警備員を雇うなら、盗まれてもいいというスタンス。 何故、ホウレンソウ禁止なのか、ホウレンソウがなければ、部下が都合の良い報告をすることもなくなり、部長は自ら現場に行くしかない。部長は命令するのではなく、情報の結節点であるべき。部下には勝手にやらせていて、実際、いつの間にか支店が増えていたりするそうです。

信頼経営を解き明かすヒントとして、島さんからは自律型組織手法の歴史のほか、蟻(社会的昆虫)にみる「信頼経営」や猿の「序列」の話し、自律型組織を実現するためのマインドやアプローチ手法などについても解説して頂きました。
セミナーは冒頭、島さんからのアイスブレイクおよび15分間のブレイクアウトにより、参加者が4人1組のチームに分かれて、会社に対する自分の考え方やセミナーで持ち帰りたいことなどを確認する形式で始まりましたが、この模様は割愛しました。

【スピーカーご紹介】

島 青志 氏(しま せいじ)氏
一般社団法人自然経営研究会 世話人
株式会社SALT 代表取締役
システム思考、デザイン思考、アート思考を活用した自律型組織開発のコンサルティングを展開。認定スクラムマスター。人工知能を応用した検索システムやインターネット決済システムの開発を行うベンチャー企業を経て、2003年インターネット広告会社に勤務。事業開発やEコマース運営の関連会社社長などを歴任した後、2006年に独立。2010年10月、ソーシャルメディア広告・マーケティング会社、株式会社SALT設立。

自然経営研究会 http://jinen-management.org/

デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)が活動を続ける理由

設立エピソード

2014年、世界で起きていることを肌感覚で確かめるため、半年をかけて世界を回った。そこで感じた危機感を日本企業に正しく伝え、行動を促すための研究会を発足するために奔走。26社の名だたる企業と世界有数の大学と連携し、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)の立ち上げとともに我々のイノベーションジャーニーが始まった。

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