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【横塚裕志コラム】「何をやりたいのか」と自問してみませんか

DBICに「社長」が数人来られていますが、そのうちのお一人、日本航空の植木義晴社長(当時)がDBICに来られた時のことです。DBIC設立間もなく(6年前)、当時の虎ノ門のオフィスにお越しになった。西畑智博執行役員(当時)がDBIC入会の話をしたところ、ぜひ行ってみたいということで急に来られた。こういう場所が大事なんだとおっしゃって、1時間ほどソファでお話を伺った。
「私はパイロット出身なので、まさか役員や社長になるとは思っていなかった。社長になって役員会での議論を聞いていると、どんな風にやればうまくできるかの議論ばかりで、何をやりたいのか、という議論がないので驚いた。何をやりたいのか、という議論が大事だと思っている。DBICのような場で、何をやりたいのか、を発想することが大事だ。」とおっしゃったことを今でも鮮明に覚えている。

植木社長の「何をやりたいのか」という言葉は私にもグサッと刺さった。デジタルとかイノベーションとか言っている私は、いったい何をしたくてDBICをつくったのか。自問自答したが、表面的なことしか頭に浮かばなかった。6年経過した今、その意味が少し理解できるようになってきた。会社の方針をそのままうのみにして行動するだけでは価値ある仕事はできない。会社の方針とか、世間の空気とか、そういう洞窟からはい出して本当の自分に戻り、自分が何をしたいのかをまっさらな状態で考えることができれば、初めて世間に役に立つことを考えることができる。自分が精神的に自立しなくては、創造性も生まれないし、イノベーションも起こせない、ということではないか、と。

社員が常に自分は「何をやりたいのか」を考えている会社は、きっと元気が良くて、自由で、楽しくて、創造性があふれている感じなのだろうと想像できる。一方、日本の会社の多くは上司の方針に沿う形で行動するように管理されているので、自分は何をやりたいのかを考える機会はほとんどないように思う。従って、社員が「何をやりたいのか」を考えるような会社にするには、以下のような二つの文化的な大きな変革が必要だろう。

  1. 社員が自立すること。会社という集団に属してその一員として働く、ということではなく、自分の独自の考えを持ち、自分は「何をやりたいのか」を常に考えながら行動する社員の存在。
  2. 会社の文化を社員ファーストに転換すること。日本企業がずっとやってきた「ビジネス戦略」と「年間予算」で社員を縛り、「上意下達」「滅私奉公」で恒常的な残業や単身赴任を強いる文化を180度転換して、会社のパーパスを目指して、社員一人ひとりが自分の想いと家族の幸福を実現していく経営に転換すること。

植木社長の「何をやりたいのか」というメッセージは、まさに日本企業が今後目指すべき経営だと改めて感じている。このメッセージが言う「個人の自立と個人の尊重」という考え方は、教育界でも問題提起が始まっている。教育に関する文化の大転換を主張されている方をご紹介する。
麹町中学校で定期テストや宿題を廃止するなどの学校改革を実行された工藤勇一氏が、今、横浜創英中学・高等学校の校長をされているが、以下のように、教育の大改革を訴えている。Facebookの発信から概略を紹介する。

【日本の学校教育の転換に向けて】

日本の自動車産業は、自動車の心臓部であるエンジンの開発にどれだけ多くの技術者が関わり、どれだけたくさんの時間を費やしてきたことだろうか。
しかし、電気自動車の出現により、長年にわたって高め続けてきたこの心臓部の優れた技術のほぼすべてを捨てなければいけないことになった。 今、日本の学校教育にはまさにこれと同じことが起こっているように思う。
「教える側主体の学び」から「学ぶ側主体の学び」への転換だ。
世界は「一人一人のwell-beingと社会のwell-being」を学校教育の最上位目標に掲げ、本質的な転換を図っている。なぜ「学習者主体」なのかの理由もすべてここにある。この本質的な転換を日本も受け止めなければならない時が来ている。

横浜創英もそうだが、まだまだ従来の教育スタイルから抜け出せないでいる。
以下に、一斉教授スタイルの中で信じられてきた言葉の一例をあげてみた。
これらのフレーズは、特性がある子どもたちも含めて、すべての子どもたちに本当に強制すべきものなのだろうか?
結果として、多くの教師たちに極端で偏った教育を行わせてしまい、多くの子どもたちを傷つけてしまっているのではないだろうか?
「毅然として叱る」
「基礎基本は教え込む必要がある」
「板書技術」
「教師の職人技」
「心の教育」
「心をひとつ」
「団結」
「和」
「心技体」
「何事にも頑張れ」
「挨拶、礼節、号令、姿勢」
「起立、気をつけ、礼、着席」
「前へならえ」
「時間を守れ」
一見、美しく正しそうな言葉についても、誰一人置き去りにすることなく使える言葉なのかを吟味していくことが大切だ。

「心を一つに頑張れ」という今までの文化がこれからも正しいのか、という問題提起は、ビジネス界でも問われるべきテーマだと考える。個人が自立し、個人を大事にするという文化に日本を大きく転換する時期が来ているのではないだろうか。私たち一人ひとりが、自分の人生と今までの生きざまを振り返り、これでよかったのだろうか、「何をやりたいのか」と思いを巡らせてみることが日本再興のスタートではないかと感じている。

デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)が活動を続ける理由

設立エピソード

2014年、世界で起きていることを肌感覚で確かめるため、半年をかけて世界を回った。そこで感じた危機感を日本企業に正しく伝え、行動を促すための研究会を発足するために奔走。26社の名だたる企業と世界有数の大学と連携し、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)の立ち上げとともに我々のイノベーションジャーニーが始まった。

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