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【横塚裕志コラム】会社の文化とか常識を 壊したくなりませんか

私の知り合いから聞いた話だ。知り合いは、ある大手企業のIT関連会社の社長になって、金融業界や親会社の匂いがする文化をいくつか壊してみたそうだ。その話を書こう。

1. 社長室でときどき宴会

社長室に会議用の机と椅子があり、詰めれば10人くらい座れるので、社員を集めて17時から時々宴会を開いたそうだ。そのために、社長室にはワインセラーと冷蔵庫を設置した。日本酒を楽しむ会、とか、ヤギのチーズを食べる会、とか、プロジェクトの打ち上げとか、理由は何でもいいので社長と呑むことを目的とした。お酒やつまみは持ち寄りだ。オフィスでは残業している人もいるのでドアを閉めてやっていたようだが、きっとうるさかっただろうし、匂いも漂っていたに違いない。
これを始めた動機を聞いてみた。業界としての常識は、上下の職制が厳しく、上司に対して自分の意見を言うことがなかなか難しい雰囲気があった。また、同様に、親会社の人に対して子会社の身分で意見を言うこともかなり勇気がいるような雰囲気だった。こういう雰囲気を壊さないと、自由闊達に議論ができない。議論ができないと最適な情報システムが作成できない、という問題意識を持ったからだそうだ。それで、社長室というある意味神聖な場所で、社長という絶対的な権威者とお酒を飲むという、常識外の暴挙をしてみたようだ。すると「神聖でもなければ、権威者でもない」ということを多くの社員が体で感じることになり、そうなれば、親会社も上司も同じ人間じゃん、という感覚になり、自分の意見を言うことができるようになってきたとのこと。
もちろん、仕事場という場所で酒を飲むということについては、賛否両論あるだろう。規律や緊張感を旨とする伝統的な考え方とは相いれないかもしれない。しかし、彼は、それを崩してでも壊さねばならない空気感を感じていたようだ。もっと自由に自分の想いを語ることが何より重要なのだ、という信念でそうしたようだ。
社長室で宴会という事実が、今までの常識を疑ってかかろうという雰囲気を会社全体に醸し出したというのが彼の感想だ。

2. 中期経営計画を年度ではなく、粘土で作成

中期経営計画を粘土で作成したそうだ。社員全員で3時間くらいかけて、5人のチームにしてワールドカフェ方式で入れ替えながら、チーム別に5年後のわが社の姿を粘土で作成するという試みだ。従って、参加者数÷5=140個の粘土のオブジェができた。「言葉」で表現するより、粘土というカラフルな立体の方が、私たちの感覚をより正しく表現しやすい。また、感覚を表現するという作業なので、自分の心の奥底に潜んでいる5年後のわが社への想いが引き出されていく感じがするのだそうだ。そして、ワールドカフェ方式で多くの社員の会社への想いを聞く時間を浴びることができ、その経験だけでも貴重な体験だったようだ。
これは、彼の着想ではなく、経営企画部が考えたそうだ。会社の将来を全員で考えてみたい、中期計画を全員参加でつくりたい、という想いがあったようだ。今までは、役員中心に中期計画を決めて、それが計画書になって上から下りてくる方式だったので、読む気になれないし、読んでもすぐに忘れてしまう代物だった。それを改めたい、という想いだ。さらに、役員が決める中期計画は、どういう仕事をするかは書いてあるが、どんな文化の会社にしていきたいのか、とか、会議のあり方、予算の作り方、組織での分担のあり方などを対話する機会がなく、会社の将来を考える機会になっていない、という問題意識もあったようだ。
彼の感想を聞いてみると、結果がどのようになるのかがまったく想像できなかったが、部下を信頼してやってみたらことのほか面白かったそうだ。社員が自分の会社の将来を自分ごととして考えてみる機会を持つことは、今までの常識・慣習にはなかったことで、新しい風が吹き始める空気感を感じたそうだ。
もちろん、親会社への提出は、親会社が作るグループ会社標準のフォームに年度ごとに書いたそうだ。それは、彼が30分程度で完成させたそうだ。

日本企業の文化は、「組織行動」とか「徹底」とかを旨としているのが一般的。それは、一定の生産性を維持するものの、多くの社員が思考停止になる。これでは、価値創造には向かない。「組織目的」を共有しながら、みんながフラットに対話しながらそれぞれの考えを発揮していく文化、みんなが自分で考える組織、それが価値創造や高い生産性を生む源ではないだろうか。

デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)が活動を続ける理由

設立エピソード

2014年、世界で起きていることを肌感覚で確かめるため、半年をかけて世界を回った。そこで感じた危機感を日本企業に正しく伝え、行動を促すための研究会を発足するために奔走。26社の名だたる企業と世界有数の大学と連携し、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)の立ち上げとともに我々のイノベーションジャーニーが始まった。

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