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【横塚裕志コラム】ゼネラリストが運営する時代からプロが価値を創造する時代へ

私たちは、これまでゼネラリストと言われる総合型のタイプとスペシャリストと言われる領域を絞った専門型のタイプの2種類の社員育成に努めてきた。そしてその育成方法は、ゼネラリストは主にOJTで先輩から学び、何年かおきに研修会社による研修を受ける。スペシャリストはOJTの中で学びながら、より高度なことを自主的に学ぶという感じが多い。
しかし、既存のビジネスを運営していくだけであればこの社員モデルが有効だったかもしれないが、新しい価値を創造しなくてはいけない時代では、このモデルが通用しないのではないかと感じている。2つの課題が目につく。

1.専門性がないと価値がつくれない

システム開発を行うときに、普通のSE 5人で行うケースと、PMのプロ・CXのプロ・DBのプロ・WEBのプロ・セキュリティのプロを集めた5人で行うケースと比較した時に、どちらがお客様にとって価値が高く、よりサステナブルなシステムが完成するだろうか。間違いなく後者だろう。
営業経験豊かだがIT素人のCIOと、CIOキャリア3社目のCIOと比較して、どちらがより価値の高いIT活用を企画し実行できるだろうか。
価値が高く効率性の高いビジネスプロセスをデザインするときに、営業現場をよく知るビジネス側の社員が要件を書くケースと、ビジネスプロセス分析を学んだBA(ビジネスアナリスト)が現場を観察しながら新しいプロセスを設計するケースと比較して、どちらがレベルの高いものを作成できるだろうか。

ある領域を深く学んだプロが担当する方が、ゼネラリストよりも価値が高い成果を出す時代が来ているように思う。ここであえて「プロ」と表現しているのは、今までの「スペシャリスト」とは違うことを言いたいからだ。私の知る社内の「スペシャリスト」は社内ではスペシャルで通用するが、世間に出たときに専門性で勝負できるほどのレベルではないことが多かった。それで、世間で通用するという意味で「プロ」という表現を使っている。そして、プロと評価される人は、専門オタクというタイプではなく、一般的なコミュニケーション力や多岐にわたる知見を持っていることは当然のことだ。

すでにITのプロを社内に育成すべしという危機感は多くの企業で見られるが、それと同様に、ビジネスプロセスのプロ、人財育成のプロ、組織改革のプロ、新規事業開発のプロ、広報のプロ、ESGのプロ、CIO・CDOのプロ、などなど、本業の専門性に関するプロに加えて、会社を新しい時代に合わせて変革していくプロを育成・採用していく視点が必要なのではないだろうか。人事制度でJOB型を採用する企業が増えているが、この制度も本来そのJOBを実施できるプロを適切にアサインしていくという考え方だろう。ゼネラリストの希望者をアサインしても効果は出にくいだろう。
新しい価値創造の時代に必要とされる人財は、リベラルアーツを学んで基礎的な感覚や思考力を培うことはもちろんのこと、さらに自分が得意とする分野を深く専門的に学び、その道のプロに育っていくことが求められるのではないだろうか。そういう人財の集団こそが強いパワーを発揮する時代が来ているのではないだろうか。

2.ゼネラリストにマネジメントができるか

一般的な管理職の分野でも課題が多いと認識している。ゼネラリストが課長になりマネジメントをするわけだが、課長研修を受けているとはいえ、新しい時代の「マネジメント」を学んでいるとは思えない。組織ビジョンの持ち方、部下へのリスペクト、心理的安全性の作り方、部下への委任の仕方、などなどを学ばずに、個人的なやり方でふるまうものだから多くの若手が離職する要因をつくっている。人事権を振りかざして強引に指示をしたり、細かいマイクロ管理で部下のモチベーションを下げたりしている事例を多く聞く。管理職というプロが本来必要な時代が来ていると認識すべきだと思う。「マネジメント」とは何かを深く学ぶことが、組織の長としては大事な要素になってきている。なぜなら、そのレベルが低いことが企業の競争力を大きく低下させる時代になってきているからだ。若手の離職問題、組織の生産性が上がらない問題、残業が減らせない問題、残業をさせられないから管理職が遅くまで働いている問題、多くの問題が発生している。

営業で腕を上げた人が組織の長としてもいいマネジメントができるのか。営業で大成果を出している人が役員を務められるのか。普通のゼネラリストがデザイン思考を使って市民の潜在的な課題を掘り当てることができるのか。立ち止まってこれまでを考え直す時期に来ている。
私たち日本人の能力は優秀だ。何が足りないのか。
「学ぶ」ことが足りていないということではないだろうか。
「人財育成」と叫ぶことで思考停止している状況から抜け出し、会社にとって必要とされる能力を洗い出し、そのケイパビリティを育成や採用で埋めていくことが必要だ。OJTのゼネラリスト幻想を脱し、企業の「学び」を変革することが抜本的な課題と認識する。

デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)が活動を続ける理由

設立エピソード

2014年、世界で起きていることを肌感覚で確かめるため、半年をかけて世界を回った。そこで感じた危機感を日本企業に正しく伝え、行動を促すための研究会を発足するために奔走。26社の名だたる企業と世界有数の大学と連携し、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)の立ち上げとともに我々のイノベーションジャーニーが始まった。

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