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【横塚裕志コラム】「配属ガチャ」に大きな変化の風音を感じる

最近、初めて「配属ガチャ」という言葉を知った。新入社員として入社後、希望する職種や勤務地に配属されるのかどうかがわからない、という意味だそうだ。某社の就活生に対する調査によれば、「職種や勤務地を自分で決めたい」と55%が答えている。そして、4人に1人が「転勤が多い会社には行きたくない」と答えている。そして、「配属ガチャ」への不安が、結果的に内定辞退や早期退職につながるケースもあると分析している。
隔世の感がある。私も全国規模の会社に入社したので、どこに配属されるかは不明だったし、それが当たり前と思っていた。しかし、「希望通りの職種や勤務地で働きたい」という声を聞くと、確かにそれはごく自然な気持ちだと思うし、大切にしてあげたいとも思う。一方、会社側にしてみれば、社員の希望通りにしたときにすべての部署で予定の体制がつくれるのか不安になるだろう。かなり難しい問題だが、若者のこの風潮は続くと思われ、大きな変革期に入ったと認識すべきかもしれない。

この課題に関連して、2つの視点で日本企業の配属・異動の課題を考えてみたい。

1.社員の個性を尊重し、社員の幸福を大事に考える経営
今、就業人口が減少に転じているとき、希少な「ヒト」資源を存分に活かしていく経営が求められている。特に、以下の二つのテーマに経営の焦点が当たっている。

① コーポレートガバナンスとして、「人的資本」経営のあり方とその開示が議論されている。「ヒト」を資本としてとらえ、どのようにして「ヒト」の能力を増大させているかが、投資家の企業判断のポイントになっている。そしてヒトの能力は、その人が希望する分野で開花するものであり、個人の希望を尊重することが必須となる。
② 社員の創造性を育むために、社員個人が「個人パーパス」を貫きながら、会社のパーパスと合致する仕事に従事できる状態をつくることが求められている。やはりここでも、個人の希望を尊重することがキーとなる。

この経営の二つのテーマを実現しようとすれば、社員の個人的な想いを大事にすることがベースになる。そうなると、個人の希望通りの職種や勤務地に配属すべしということになるとともに、従来の人事異動の考え方も大きく改める必要が出てくる。

2.社員の学びとそれを活かす職場
日本企業の生産性の低さ、それに伴う平均年収の低さが大きな課題になっている。OECDでは最下位あたりであり、アジアでも韓国・台湾の後塵を拝している。その原因の一つが「人財」の問題だ。勉強が足りない、という問題だ。
ただ、日本企業の人財が勉強しないのには三つの理由があると言われている。
① 次の人事異動でどこの職場に行くかがわからないのに何を勉強しろと言うのか、という問題。
② 勉強しても、今の職場でそれを活かすことができない。学びと職場とが連動されていない、という問題。
③ 勉強しても、給料が上がらない。むしろ、仕事をしていなかったということで評価を下げられるリスクさえある。

世界で戦うためには、社員の能力を世界レベルに育成しなくてはならない。従来の考え方である「ゼネラリストが定期異動しながら多くの職種を経験して育っていく」というレベルでは、世界では通用しなくなっている。もっと、その職種のプロフェッショナルを育成しなくては勝てない。そのためには、「学び」を積極的に経営の軸にしなくてはならないのだが、上記の3つの壁が立ちはだかっている。
だから、ここでも社員を希望通りの職種に配属することがキーとなってくる。

「配属」と「人事異動」の課題がはっきりしてきたが、これはもっと大きな課題としてとらえないと、人事部だけでは解けない問題ではないだろうか。

全国のビジネス拠点のあり方、セールスのあり方、マーケティングのあり方、そしてプロの育成など自社のビジネスの根幹を見直すべき大きな問題だと気がつく。

「配属ガチャ」そして「若手社員の退職ブーム」をきっかけに、自社のビジネスの根幹を変革すべき時が来ていると考えてはどうだろうか。

デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)が活動を続ける理由

設立エピソード

2014年、世界で起きていることを肌感覚で確かめるため、半年をかけて世界を回った。そこで感じた危機感を日本企業に正しく伝え、行動を促すための研究会を発足するために奔走。26社の名だたる企業と世界有数の大学と連携し、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)の立ち上げとともに我々のイノベーションジャーニーが始まった。

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