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【横塚裕志コラム】ミドルのみなさんの双肩に企業の将来がかかっている

福沢諭吉の「痩我慢之説」という本の冒頭に以下の言葉がある。

「立国は公にあらず私なり」

この国を建てる、あるいは、この会社を立派にしよう、と考えることは、実は公事ではなくて、純粋な私事だ、と言っている。私たちが属する企業の衰亡も興亡も、企業を構成する人間の自覚・想いがどれだけあるかないか、つまりそう思っている人間がどれだけいるかということにかかっている。企業を変えていくということは、どこかの部門やどこかの担当がやる仕事ではなく、私がやらねばいけない、私がやっていい仕事なんだと自覚すべしと言っている。
私は、50年近く組織で働いてきたが、この言葉通りと実感している。会社を変えていこうとする部門が最初から社内にあるわけではなく、こういう風に変えたいと思いついた人が仲間を集めて大きな動きにしていくわけだ。私は5回ほど大きな変革を担いだが、1回だけ自分が言い出しっぺで大きな動きを起こした。他の部門の人たちを仲間に引き入れるために、米国での事例を調査したり、現場での賛同を集めたり、応援してくれそうな役員を探したり、何気に別の名前で予算をとっておいたり、必死に活動した。他の4回は、仲間になってできるだけの活動をした。そんな思い出があるので、この言葉の「私なり」というところに強く惹かれる。個人的にやりたいと思うことがすべてのエネルギーの素になっていくと実感するからだ。そして、仲間が増えたときのパワーの大きさは予測をはるかに超えるものになる。
いろいろと迷っている人のために、2つのことをアドバイスしたい。

1.「この講演を社長にも聞いてもらいたい」
ミドルのみなさんがセミナーを受講した後の感想でよく言うのが、「社長にも聞いてもらいたい」「社長に話に行ってくれませんか」というセリフだ。気持ちはよくわかる。社長もこれを聞けばやるべきことがわかるはずだから、会社を先導して変革してくれるのではないだろうか、という期待だろう。しかし、あえて言う。それは、社長に対しての期待過剰だ。実は、社長が聞いて納得したとしても、そう簡単に会社を変革するようには動けないのだ。なぜなら、社長には権限がない、職務権限規程に社長の権限は書いてないのだ。これは冗談としても、会社を動かすためには、多くの人が納得する企画書が必要だ。それを社長が書くのは忙しく難しい。どう考えても、ミドルの具体的な企画とミドルの共感する仲間の力、が必要なのだ。だから、社長を頼ることなく、ミドルが事を始める必要がある。もちろん、途中では社長のコミットや応援も必要だから、仲間に入れなくてはいけないが、スタートはミドルのみなさんだと覚悟してほしい。

2.同士との対話の繰り返しが解像度を上げる
変革は、「何か変えたいけど、うまく言語化できない」というぼんやりした感じからスタートすることが多い。東京海上日動の「抜本改革」というプロジェクトも、「会社の中の血液がさらさら流れていない感じがする」からスタートして、商品・ビジネスプロセス・基幹システムを全面的に変革した。「日本って、ITがうまく活用できていない感じがする」から始まってDBICをつくった。
ぼんやりした危機感を解像度を上げた企画に練り上げていくためのプロセスは、志を同じくする同士との「対話」が一番いいと考える。「議論」ではなく「対話」であり、同士でなくてはだめだ。対話は、弱火で具だくさんの鍋をぐつぐつ煮ているようなもので、煮ている間に化学変化が起きて想定していない本質に気づかされることになる。創発というのか刺激し合いというのか、人間というのは不思議な生物だ。つぎつぎといろんなことが想起されていく。そういう状態をつくり、実行すべき具体策が見えてくる。
同士をつくるのも大事だ。偶然に任せて探すのもいいが、DBICの自己変容プログラムに参加して自立しかかった人と話すのが速いらしい。1社でこのプログラムに1000人以上を参加させた方は、「会社を変革したい」という共通言語で語れる仲間が多くなり、大きな動きを起こせる感じがすると語っている。

ミドルが会社のガンだ、とか、とかくミドルに対しての視線が冷たいが、これも期待の裏返しと理解して、仲間を集めて動き出してほしい。変革が始動できるのは、ミドルだけなのだから。

デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)が活動を続ける理由

設立エピソード

2014年、世界で起きていることを肌感覚で確かめるため、半年をかけて世界を回った。そこで感じた危機感を日本企業に正しく伝え、行動を促すための研究会を発足するために奔走。26社の名だたる企業と世界有数の大学と連携し、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)の立ち上げとともに我々のイノベーションジャーニーが始まった。

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