【横塚裕志コラム】日本流から 世界標準に 仕事を「成長」させませんか

1.米国マイクロソフト社の仕事の進め方
10年ほど前、米国のマイクロソフト本社でプロダクト開発に従事している日本人エンジニアのお話をうかがう機会を得た。それは実に刺激的なお話だった。
プロジェクトをマネジメントするチームリーダーは、プロジェクトをスタートする最初に、チームメンバー全員を集めて、次の宣言をすることが求められている。
「実施するプロジェクトの内容は・・・という特徴があるから、プロジェクトマネジメントのフレームワークは、○○方式を基本的に採用するものの、一部・・・部分を・・・と修正した形で使う。その理由は・・・である。」と説明することが義務付けられているそうだ。
例えば、チームメンバーが7人いるとして、その7人が十分納得した理由と方式で進めないとプロジェクトが円滑に進まないからだそうだ。7人はそのプロジェクトが失敗したら次のキャリアには進めないという強い危機感を持っているから、中途半端なリーダーでは納得しないようだ。だから、リーダーを張るためには、常に新しい手法を勉強すること、それを説明すること、実践できることが必須だそうだ。

2.日本企業ではどうか
この話を聞いて、日本のプロジェクトの甘さを感じた。チームメンバーの次のキャリアへの激しい熱意、必ずフレームワークで仕事を進めるマネジメント方式、チームメンバーの納得感の大事さ・コミュニケーションの真剣さ、どれをとっても、日本はゆるゆるだと恥じ入った。米国は人種のるつぼで常識さえ異なる人たちの集団であるからこそ、このような「マネジメント」という仕組みが進化し、それによってハイレベルな生産性を築いているのだと理解した。日本人は同じ文化で性格が従順だから、それに甘えて「マネジメント」が発達せずに、個人の頑張りに依存した体制のままの状態にあるようだ。

3.日本企業でも世界標準に成長させませんか
しかし、日本でも価値観が多様化し始めているし、なによりも生産性で世界からかなり遅れをとってしまっている。今のゆるゆるのままでいいはずがない。日本も欧米と同様にフレームワークで仕事をする方向に変えていくべきではないだろうか。2つの事例を想像してみた。

(例1)
新規商品の開発チームであれば、リーダーは次のような宣言でスタートさせることにしてはどうだろうか。
「我々のゴールは・・・というジャンルでの新商品なので、会社のパーパスに合わせると・・・という市民の課題に着目したい。そこで、検討方式は、ビジネスモデルキャンバスを使いビジネスモデルを検討し、顧客のペインポイントは、デザイン思考のフレームワークで掘り下げていきたい。そのフレームワークを採用する理由は・・・・だ。そして、アイデアが固まったところで役員の意見を伺い、小さいマーケットでの施行からスケールアップしていく・・・方式を想定している。その理由は・・・だからだ。みんな、どうですか。」

(例2)
組織の長も組織の活動を始めるときは次のような宣言をしてはどうだろうか。
「この組織のパーパスは・・・と決めたい。その理由は・・・だからだ。マネジメントのフレームワークとしては、基本的に「マネジメント3.0」の考え方で行きたい。各チームがミッションを持ち、業務にかかわる権限はすべて委任する。そのうえで、slack上で課題や決定事項を可視化することを原則とし、私からのフィードバックを適宜行う。この方式をとる理由は・・・。Aチームのミッションとメンバーは・・・。Bチームのミッションとメンバーは・・・。企画の内容・予算・スケジュールなどはチームに委任する。この方式で進めたいが、皆さんの意見を聞かせてほしい。」

リーダーは、行動フレームワークとそれを選択した理由を説明して、組織のメンバーと対話し、納得を得たうえで、仕事をスタートさせる。そういう世界標準を学び実践していく必要があるのではないだろうか。既に、システム開発におけるアジャイル方式の採用では、このような形で進んでいると思われる。
組織の高い品質と生産性を目指すのであれば、チャレンジすべきテーマではないだろうか。無手勝流に「がんばろう」方式ではすでに限界にきている。

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