【横塚裕志コラム】ビジネスプロセスが 企業の競争力を左右する

最近、我が家のリフレッシュ工事を済ませた。3週間にわたる工期で、屋根や外壁の洗浄・塗装、お風呂の入れ替え、階段などの手すり設置などを行った。その経験の中で工事の「価値」とは何なのかを改めて考えてみた。その「価値」と、企業競争力との関係について考えてみようと思う。

1.工事で感じたこと
① 工事を依頼した会社の営業の方と、私たちの課題認識をご相談しながら、工事の内容を決めていく時間が楽しかった。営業の方のプロとしての深い経験知をうかがうことで、こちらの考えが整理されたり、促進されたり、修正していただいたりで、中身の濃いアドバイスを受けた充実感があった。
② 工事は、足場設置・洗浄・塗装、風呂解体・設置・電気工事・水回り・手すりの設置・壁紙張替えなど、それぞれ専門会社が入れ替わり来られる。そのすべての担当の方の挨拶・態度・振る舞いが、実に爽やかで気持ちがいい。作業着の雰囲気と趣が異なるその清々しさに感動していた。
③ 工事が完了してみて感じることは、具体的にきれいになったお風呂や階段が気持ちいいということだけでなく、家全体が明るくなった感がして、もっともっと長く生きていきたいというような喜びみたいなものを感じた。家のリフレッシュって、そういう効果があるんだなと改めて知った。

2.「リフレッシュ工事会社」が提供する「価値」
実際に工事していただいた部分が刷新された、という価値は当然のこととして存在するが、それ以外に、上に書いた「心地よさ」とか「満足感」とか「楽しさ」みたいな感覚が得られたという「価値」がある。もし、これが逆の印象であったらと思うと、この会社に頼んでよかったとつくづく思っている。

この「価値」は、ビジネスモデルキャンバスの中核である「バリュープロポジション」にその説明がある。「バリュープロポジション」では、ビジネスモデルの中核要素は「お客様に どのような価値を どのような製品・サービスを介して 提供するのか」であると定義している。
よーく読まないとわかりにくいが、「価値」と「製品・サービス」とは違う、と言っている。製品・サービスを「介して」、価値を提供すると言っている。
私の例で言うと、リフレッシュ工事を行うという「サービス」を介して、私が感じた「心地よさ」「満足感」「楽しさ」「長く生きようという意欲」という「価値」を提供いただいた、という整理になる。

3.「価値」をつくりだすのは「ビジネスプロセス」
では、私が感じた「価値」はどのようにしてつくられているのだろうか。それは、工事会社が運営するビジネスプロセスそのものだ。営業の方の的確なアドバイス、工事担当者の態度の素敵さ、そして家がきれいになった喜び、などの「価値」は、風呂ユニットや壁紙という製品の価値以上に心に響いている。
つまり、製品というよりビジネスプロセスの方が企業の競争力を左右しているのだ。

一方、この大事な競争力を、企業が意識して強化しているだろうか、ということが気なる。製品・サービスに重きを置きすぎてはいないだろうかと心配になる。営業の方をどのようにトレーニングしているのだろうか、営業の方の評価をどのようにしているのだろうか。また、工事を担当する会社はすべて別の事業体なので、どのような基準で選別したり、態度の教育などを行っているのだろうか。リフレッシュ工事が全体として「長生きしたくなるように」するために、どういう工夫をしているのだろうか。
ビジネスプロセスの価値を重点的にデザインして、現場をマネジメントしている部門があるのだろうか。

自分の会社が「製品・サービス」を介して、どのような「価値」を提供するのかを明確に定義しているだろうか。それが社員やステークホルダーに共有されているだろうか。そしてそれが実現できるビジネスプロセスにデザインされているだろうか。現場で実際にそれが実践されているだろうか。
猫なで声で電話の向こうから債券の購入を勧めておきながら、工事代金を支払いに支店に出向くと冷たく待たせる銀行、彼らの価値は何だとお考えか聞いてみたい気分になる。

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