2017.06.30

 DBICではデジタルビジネスの研究と教育で世界トップを走るIMD(International Institute for Management Development)の教授陣から東京で直接学べる「DBIC-IMDデジタルビジネス・トランスフォーメーションプログラム」を開催しています。

 本プログラムはIMDで開催されている「リーディング・デジタルビジネス・トランスフォメーション(LDBT)」をベースに、日本向けにカスタマイズされたものです。2017年5月、第3回目のプログラム開催のために来日したIMDのマイケル・ウェイド教授にDBICがインタビューを行いました。

デジタルビジネスの最前線から生まれたプログラム

– LDBTの成り立ちについて教えてください。

ウェイド: LDBTは2015年3月にIMDで始まりました。非常に人気が高く、年に4〜5回ほど開催しています。企業の経営陣を対象にデジタル破壊(Digital Disruption)のチャンスと脅威を理解していただくことを目的とした5日間のプログラムです。


マイケル・ウェイド教授

 多くの企業がデジタルテクノロジーを理解していますが、それを自社の中でどうやって活用したらいいかを把握できていません。どうやって組織を変革させて、デジタルの恩恵を受けたらよいのかがわからないのです。

– 企業からの要望を受けてデザインされたプログラムということでしょうか?

ウェイド: はい。最初はとてもシンプルな要望で、企業が「デジタルについてもっとよく知りたい」という類のものでした。しかし時間が経つと「価値を生み出す組織に変わるために、テクノロジーをどのように使えばいいのか教えてほしい」という要望へと変わってきました。

– 実際のプログラムの内容はどうやって開発されているのでしょうか?

ウェイド: 私はIMD内でデジタルに特化したファカルティ・チームのメンバーです。同時に、私は「Global Center for Digital Business Transformation」というCiscoの出資で設立されたリサーチセンターを運営し、その中でLDBTプログラムのコンテンツの多くを開発しています。私ひとりだけではなく、IMDの他の教授やCiscoの研究員など、多くのメンバーが多彩なスキルや専門性を研究とプログラムに持ち込んでくれています。

– プログラムの内容の中で最近アップデートした事例を教えてください。

ウェイド: アナリティクスを使ってパフォーマンスを向上させる事例を追加しました。アナリティクスは最近になって関心が高まっている領域ですね。

 また、デジタルトランスフォメーションのプロセスに関する新しい事例もたくさん追加しています。特にデジタルを活用してパフォーマンスを上げるための組織づくりについては最近よく質問されるようになりました。

 どういった特性の人材が必要なのか? 社員に対するインセンティブの設計をどう変えたらいいのか? 具体的な変革のプロセスはどう進めたらよいのか? このように、デジタル変革の中でもかなり特定のテーマにおけるニーズが高まっています。


2017年5月に開催された「DBIC-IMDデジタルビジネス・トランスフォーメーションプログラム」の模様

 もうひとつ最近ニーズが高いテーマにリーダーシップがあります。デジタル破壊時代のリーダーはどうあるべきか? どんな能力や行動が成功するリーダーとそうでないリーダーを分けるのか? IMDの調査では、伝統的なリーダーが現在では通用しなくなってきているという結果がでています。

 プログラムを開催するたびに内容の25%から30%がアップデートされています。世の中がこれだけスピーディに変わっているのですから当然のことです。

– 受講対象者を経営幹部に限定しているのはどうしてですか?

ウェイド: 意思決定を持つ経営幹部こそが変革の源になるからです。このプログラムだけでなく、IMD全体としてのターゲットも経営幹部です。

 プログラムは体験型になっています。コンテンツを学んだだけで終わりではなくて、それを実行するためのフレームワークをセットで提供することで、自分の組織を実際に変化させることができるのです。


マイケル・ウェイド教授

 プログラムの中で安全な状況下において体験型のエクササイズを行ったり、ケーススタディからシミュレーションしたりした上で、自分の組織に帰って実行していただくためのものです。

デジタルトランスフォメーションは日本だけの問題ではない

– DBICで日本向けにLDBTを開催していただくにあたり、どういった部分をカスタマイズしましたか?

ウェイド: 最初のカスタマイズは翻訳ですね。完全なバイリンガルにするために、スライド、配布資料はもちろん、同時通訳を導入しました。英語能力に関わらず、すべての経営幹部に受講していただきたいと考えたためです。これを行っているのはDBICとだけです。


会場に設置された同時通訳ブース

 その他の変更はコンテンツの一部をローカライズしたことです。できる限りたくさんの日本の事例を反映しました。日本のためだけに新しく導入したケーススタディもあります。

 例えばデジタル破壊に直面した組織変革の好事例として富士フイルムを取り上げました。コダックが敗北する一方、同業であった富士フイルムがどのように戦い、成功したかを紹介しています。CEOの古森重隆さんのインタビュービデオも教材に取り入れています。

– 日本企業からの受講者を見て特徴的に感じたことはありましたか?

ウェイド: 欧米の受講者は転職経験者が多く、複数の組織、国、そして業界からの知見を持ち込んでくれます。一方で日本の受講者は、新卒採用された一社にずっと勤務していることが一般的です。


2017年5月に開催された「DBIC-IMDデジタルビジネス・トランスフォーメーションプログラム」の模様

 加えて、日本企業の受講者はデジタル習熟度が若干欧米に比べると低い印象を受けます。もちろん、産業テクノロジーの観点から見れば、日本企業のレベルは総じて高いです。一方、ビッグデータ、クラウド、VR、ブロックチェーン、AIといった最新のデジタルツールに関しては諸外国に比べて日本であまり成熟していないのではないでしょうか。

– 世界の中で日本企業だけがデジタル戦略に課題を抱えているのでしょうか?

ウェイド: いいえ、世界中の企業が同じ悩みを抱えています。テクノロジーそのものに困っているのではなくて、組織変革に苦しんでいるのです。どうやってマインドセットや組織カルチャーを変えるかが本当のチャレンジなのです。


マイケル・ウェイド教授

 会社にデジタル部門を立ち上げて新しいITプロジェクトを実行したり、クラウドやAIの活用を考えたりすることはデジタル戦略の一部分でしかなく、「考え方」を変えることをセットで行う必要があるのです。

– それは意外でした。GoogleやAmazonは欧米文化だからこそ出てきた企業であり、日本企業は文化的にイノベーションが難しいという言説もありますが、欧米企業も苦労しているのですね。

ウェイド: はい。国を問わず多くの大企業ではカルチャーが硬直的で、柔軟性に欠ける傾向があります。例に挙がったGoogleやAmazonのようなインターネットジャイアントは、イノベーティブで柔軟、俊敏(agile)なカルチャーを努力してつくり出しています。

 中でもアジリティ(俊敏さ)は大企業にとって究極に困難な課題です。日本企業ではなおのことでしょう。ですから、DBICのプログラムの中ではアジリティについて多くの時間を割いています。


2017年5月に開催された「DBIC-IMDデジタルビジネス・トランスフォーメーションプログラム」の模様

 どうやってイノベーティブなカルチャーを大企業でつくっていくかは日本企業にとってチャレンジングですが、欧米の企業にとっても同様なのです。

– インターネットジャイアントは欧米においても例外的な存在なのですね。

ウェイド: その通りです。インターネットジャイアントの多くはアメリカの企業ですが、アメリカの企業すべてがアジャイルでイノベーティブなわけではないですよね? 彼らも苦労しているのです。デジタル破壊者がすぐそこまで来ているから、必要に迫られて対応しているのです。

 この点が日本企業にとって難しいところで、日本は国内に非常に強いマーケットを持っているので慌ててリアクションする必要がないのです。ドメスティックマーケットに依存すればいいわけですから。欧米の企業に比べるとプレッシャーは少ないでしょう。

デジタルビジネスにおいて特に注目すべき業界や国

– 最近気になっている企業や業界はありますか?

ウェイド: 自動車業界における電気自動車と自動運転はとても興味深いですし、破壊的です。クラウド技術が破壊しようとしている業界には多くの日本企業が得意としている分野が含まれます。


2017年5月に開催された「DBIC-IMDデジタルビジネス・トランスフォーメーションプログラム」の模様

 また、中国におけるインターネットジャイアントが中国以外のマーケットに手を伸ばそうとしています。特にEコマースにおけるアリババとソーシャルメディアにおけるテンセントからは目が離せません。彼らが日本に与える影響は計り知れないでしょう。

– 日本企業で気になる事例はありますか?

ウェイド: 日本からはもっと多くのインターネット企業が登場すると期待していました。日本はIT テクノロジーも発展していますし、グローバル企業も多いですから。

 ところが、思っていたより出ませんでしたね。楽天は長らく成功していましたが、近年ですとAmazonとの競争が激しくなってきています。


2017年5月に開催された「DBIC-IMDデジタルビジネス・トランスフォーメーションプログラム」の模様

 最近ではリクルートの動向には大きな関心を持っています。もっと多くのイノベーティブなインターネット企業が日本から登場することを楽しみにしています。

– 最後に、日本のビジネスパーソンへのメッセージをお願いします。

ウェイド: 近年「デジタルトランスフォメーション」について多くの議論がなされています。IMDの調査では「デジタル」部分も難しいのですが、もっと難しいのは「トランスフォメーション」部分だと結論づけています。

 成功の秘訣は、組織の中核を変革できるかにかかっています。ですから日本企業のみなさんには構造、プロセス、従業員・顧客・ステークホルダーとの関係、戦略などを慎重に考えていただきたいのですが、最重要なのはカルチャーとマインドセットです。

 その上で、デジタルトランスフォメーションはデジタル部署を設立してまかせればよいのではなく、経営者が自身の課題として捉え、組織の日々の活動の中にデジタルを取り込むことが必要です。

 デジタルを目的にしたストラテジーが重要なのではありません。事業全体をより良くするためにデジタルをどう活用するかを「DBIC-IMDデジタルビジネス・トランスフォーメーションプログラム」で一緒に考えましょう。

講師紹介


マイケル・ウェイド Michael Wade
 IMD教授兼グローバルセンター・フォー・デジタルビジネス・トランスフォーメーション(DBTセンター)所長。デジタルがビジネスモデル、ストラテジーやリーダーシップに与える影響に関する調査、研究、教育に取り組んでいる。

 IMDによる世界各国各社の幹部向けの公開短期研修「Leading Digital Business Transformation (LDBT)」のディレクター、「Orchestrating Winning Performance(OWP)」の前ディレクター。日本を含む世界各国の先進企業の幹部教育プログラムを指揮。

IMDについて


写真はIMDスイス、ローザンヌ本校の様子

 IMDはスイスのローザンヌに拠点を置くビジネススクールであり、高インパクトの幹部教育に定評のあるグローバルリーダー育成の世界的専門チームです。

 毎年98カ国から8,000名以上の経営幹部がIMDで学び、120のグローバル企業がIMDで企業カスタマイズプログラムを受講するなど、広く支持を集めています。日本でも多くの大企業とパートナーシップを結び、短期公開プログラムや企業カスタマイズプログラムを提供してきた実績があります。

 IMDは英ファイナンシャル・タイムズにおいて短期公開プログラムが2012-2017年まで連続で世界で第1位、経営幹部教育分野全体が2012-2017年まで連続で世界第3位以内など、連続してトップクラスに位置づけされています。

 IMDについて詳しくは、以下の日本語紹介ページやPDF資料をご参照ください。

本プログラムの詳細

・DBIC-IMD デジタルビジネス・トランスフォーメーションプログラム

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