【レポート】DBIC地方創生研究会 ローカルツアー東北(2018年2月期)

2018.03.03

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 2017年11月にスタートした「DBIC地方創生研究会」のローカルツアー東北が2018年2月24日(土)〜26日(月)に開催されました。宮城県南三陸町で「全国被災地シンポジウム in 東北」に参加し、東日本大震災からの復興最前線で活躍する皆様から学ぶ3日間となりました。

目次
2018年2月24日(土)震災を風化させないための語り部バス

2018年2月25日(日)全国被災地シンポジウム in 東北 Day1

2018年2月26日(月)全国被災地シンポジウム in 東北 Day2

2018年2月24日(土)震災を風化させないための語り部バス

語り部バス〜戸倉中学校

 ローカルツアー東北の宿泊地となった南三陸ホテル観洋は、2011年3月11日の東日本大震災発生直後から約600人もの被災者を受け入れ、半年近くにわって避難所として地域住民をサポートし続けました。


南三陸の海を見渡すことができるホテル観洋のロビー

 地図が変わるほどの地震と津波被害を受けた南三陸で、当初は「道案内」としてホテルスタッフがバスに乗り、地震の前後の状況を説明する活動だったのが2012年2月から「震災を風化させないための語り部バス」としてホテルの正式プログラムに成長し、運行され続けています。
 2017年にはホテルの取り組みが評価され、第3回ジャパン・ツーリズム・アワードの大賞を受賞。今回は語り部の指導者でもある後藤一磨様による語り部バスに搭乗しました。


南三陸町文化財保護委員 語り部ガイド 後藤一磨様

 語り部バスに乗った参加者は後藤様が震災発生時に居た戸倉中学校で一度下車します。当日、OB会長として中学を訪れていた後藤様が学校を出ようと玄関にいたとき、地震が発生しました。
 高台にあった中学には多くの地域住民が集まりました。3月の東北の沿岸地域の厳しい寒さに加え停電で校舎内が冷え切る中、校庭のクルマの中で暖を取っていたグループが津波の被害にあってしまったと後藤様は語ります。


校舎の前で語る後藤様の背後、上部に見える赤いラインが津波が到達した位置を示している


津波に押し流された自動車がぶつかっため、校庭の端にある体育館では下部の窓が破れ、ドアが破損している


震災発生から2分後に送電停止となった時間を指したまま止まっている時計

語り部バス〜災害対策庁舎、高野会館

 一行はバスに戻り被害の大きかった沿岸部に向かいます。移動中に見える風景を占めるのは工事車両とむき出しの土壌。道路をかさ上げする盛り土工事と、巨大な防潮堤建設工事があちこちで行われています。
 後藤様が「震災前、ここには鉄道の気仙沼線が通っていて、駅がありました。この時間は駅前に高校生が集まって遊んでいました」と指差す方向はなにもないススキ野原で、初めて訪れる参加者には「震災前」を想像することは難しい状況でした。


高い防潮堤が建設されている沿岸部

 沿岸部における南三陸の被害を語るときに象徴的なふたつの建物を訪れました。天候不良もありバスに乗ったままの見学となりましたが、職員が最後まで避難放送を続けて犠牲となった町役場の災害対策庁舎、そしてイベント開催のために集まっていた300人以上が屋上に避難して助かった高野会館です。
 それぞれの場所で過去の災害から何を学び、どのように将来に語り継いでいくことができるのか、後藤様は問いかけます。


鉄骨の骨組みだけが残る防災対策庁舎。震災遺構として保存されることが決まっている


結婚式場だった4階建て高野会館。建物の屋上付近に、津波の到達地点が青く記されている

南三陸ホテル観洋

 語り部シンポジウムの会場であるホテル観洋に移動し、南三陸の震災復興における中心人物のひとり、ホテル女将の阿部憲子様にお話を伺いました。

南三陸 ホテル観洋 女将 阿部憲子様

 震災から7年が経とうとする現在、外部からだと復興も進んでいるという意識を持ちがちですが、地元のニーズと国や自治体の対応のギャップによる問題は多く存在します。


DBICディレクター 渋谷 健

 例えば語り部バスの道中で見かけた大規模な防潮堤。地域住民は津波発生時に「引き波」と呼ばれる海面の水位が下がる現象を目視して規模を判断する習慣があり、防潮堤によって海を見ることができなくなってしまうことに大きな危機感を感じています。それを訴えると、防潮堤に小さな「覗き窓」を開ける、という対応をされたとのことですが、解決策としては不十分と言わざるをえません。また、防潮堤建設による用地買収によって経済格差が生まれ、地域住民の対立が生まれる原因にもなっています。


DBIC地方創生研究会の参加者からも多くの質問が出てディスカッションは白熱

 更に、地域の交通の要であったJR気仙沼線が復興されなかったため、お年寄りが子共といった弱者の交通手段に悪影響が出ています。中でも深刻なのは「通学の足」がなくなってしまったことにより進学を考える子育て世代が家族ごと他の地域に流出しまっている現象です。震災直後から子供の教育を重視し、ホテル内で子供のための寺小屋やパソコン教室を開催してきた阿部様にとっては看過できない問題となっています。


「我慢だけでは復興はできない。声を上げていかなければ」と語る阿部様

 他にも、震災当時の仮設住宅が「抽選制」でしか選べなかったことにより地域住民が分散してしまい、一度他の地域に出てしまった住民が戻ってこないこと。そして、移設された商店街が「居住地としての利用は不可」の地域に指定されているため、住居を別の場所につくらなければならないことから、再開できなかったり商店街と離れて営業再開をせざるを得ないといった小売業が多い問題などをご説明いただきました。東北ローカルツアーの初日はここで終了です。

2018年2月25日(日)全国被災地シンポジウム in 東北 Day1

番外編:南三陸さんさん商店街

  ツアー2日目の午前中はシンポジウムの語り部バス予定時間でしたが、前日に搭乗済みだった一行は阿部様のお話にも登場した「南三陸さんさん商店街」を訪問しました。ホテル観洋から自動車で近くのバス停まで送っていただき、そこからJRバスで商店街に向かいます。


JR気仙沼線の代替交通手段として運行されているJRバスの駅。線路は撤去されアスファルトで舗装されているのが見えるが、バスは線路とは異なる道路を走っている

 震災前の町の中心部を8.3メートルかさ上げした高台の造成地に2017年3月3日にオープンした真新しいこの商店街。地域住民の皆様の生活の拠点と観光スポットの両方の顔を持ち、多くの来訪者で賑わっていました。「現地に来て消費活動をしていただくことが、地域経済の復興につながる」という阿部様、後藤様の言葉を胸に、一行も積極的に買い物をさせていただきました。


南三陸さんさん商店街


わかめ、蛸、岩牡蠣など地元の海産物がいっぱいの店内で買い物


商店街を少し離れると復興工事中の景観が広がる

パネルディスカッション

 午後からはホテル観洋で開催された「第3回 全国被災地シンポジウム in 東北」のパネルディスカッションの観覧。


会場は400人を超える参加者と多数のメディア取材で満員となり、関心の高さが伝わります。

 約2時間半にわたるパネルディスカッションのテーマは「KATARIBEを世界へ」と題し、東日本大震災の語り部、熊本地震の被災者、ジャーナリスト、文化研究者といった様々な立場から被災体験を語り継ぐことの重要性が議論されました。

 日本外国特派員協会理事であるジャーナリストのメリー・コーベット様は長野県が発信した「森林浴」が「SHINRIN-YOKU」として英語に定着したことを例に、「KATARIBE」の世界共通語化に向けた発信や普及活動を提言されていました。また、防災対策庁舎が震災遺構として保存が決まる一方、高野会館が対象外となっている現状について「アメリカであれば、メモリアルパークとしてエリア全体を残すのではないか。ひとつずつ個別の物件で判断は難しい」とのコメントをされていました。


メリー・コーベット様(右からふたり目)


東日本大震災発生時には気仙沼消防署指揮隊長として市内の津波火災の消火活動に尽力した佐藤誠悦様。津波によって奥様を亡くし、国内外の講演活動を通して震災を後世に伝える活動をしている

分科会「未来への伝承」

 パネルディスカッション終了後は「語り部として私たちが今、伝えたいこと」「震災遺構と語り部が伝える震災伝承と教訓」そして「未来への伝承 10年・100年・1000年先へ繋ぐために必要なこと」の3つの分科会に分かれてのディスカッションが続きました。


「未来への伝承 10年・100年・1000年先へ繋ぐために必要なこと」と題し、地元南三陸の入谷小学校、志津川小学校、志津川高校、そしてゲストの福島県新地高校の生徒たちによるプレゼンテーションが行われた


入谷小学校の生徒は震災時4歳で、現在は小学4年生の11歳。震災当時は「地震や津波の意味がわからず、どうして大人たちは慌てているのか不思議だった」と回想している。ホテル観洋が会場提供を通したサポートしたパソコン教室に通い、全国のプレゼン大会で優勝


来場者が付箋に書いたメッセージを読み上げる志津川高校の生徒

 その後も会場を変えて復興トーク&ドキュメンタリー上映会が開催。岩手県大槌町を舞台にしたドキュメンタリー映画「ちかくて とおい」が紹介されるなど、遅くまで熱気に満ちたイベントが続きました。


ホテルロビーで開催された復興トーク&上映会「“伝える”〜東日本大震災から7年、阪神・淡路大震災から23年」の模様。夜間にも関わらず多くの人が集まった

2018年2月26日(月)全国被災地シンポジウム in 東北 Day2

クロージング

 シンポジウム2日目は「震災語り部の講話」、そして浪曲師菊池まどか様による「稲むらの火」の実演後、クロージングイベントでシンポジウムが総括されます。


1854年の安政南海地震津波をテーマにした「稲むらの火」を披露する浪曲師菊池まどか様

 初日のパネルディスカッションで提言された「KATARIBE」の世界共通語化を含む「全国被災地語り部 南三陸宣言」が採択され、活動や情報発信を多言語化していくことが発表されました。次回の「全国被災地シンポジウム」は熊本にて開催予定とのことです。


「全国被災地語り部 南三陸宣言」を読み上げる北淡震災記念公園総支配人の米山正幸様

 ここでシンポジウム本編は終了。最後に、希望者のみ気仙沼または大川小学校への語り部バスツアーにオプション参加しました。


ホテル観洋ロビーから見える南三陸の美しい海

 地域ビジネスをテーマに2018年1月に開催されたローカルツアー九州に対して、震災復興をメインテーマとしたローカルツアー東北は、また異なる視点の発見に満ち溢れていました。
 DBIC地方創生研究会も残るは成果発表のみ。いよいよ最終フェーズに入りました。

関連リンク

イベント告知ページ
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