【シンガポールレポート】SMU講義「Innovation Ecosystem, Agility and Startups」

2018.06.08

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2018年6月7日(木)、シンガポールのイノベーションエコシステムについて学ぶSMUの特別講義が開催されました。

講師はシンガポールの3大大学に挙げられる「SMU (Singapore Management Univercity)」のPatrick Thng教授。世界銀行の元CIOでありイノベーションマネジメントの第一人者です。

SMUはシンガポールの都心部に位置し、今回はSIS(School of Information Systems)学部の校舎で授業が開催されました。

まずはPatrick教授によるイノベーションエコシステムについての講義が始まりました。シンガポールでは毎年50,000社以上のスタートアップが生まれ、そのうち5,000社がICT関連、さらにそのうち500社がフィンテック関連と言われています。そしてその95%以上が2年以内に消えていきます。まさに「Fail Fast」(速く挑戦し、速く失敗し、速く学ぶ)が実践されています。

シンガポールに来たからといってすぐにイノベーションが生み出せるわけではありません。エコシステムに加わり、共創できるパートナーを探し、プロトタイピングを繰り返し、具体的なアイデアを生み出すためには、最低でも5年はかかります。今回のDBICプログラムはその最初の一歩を踏み出すためのプログラムになります。

 

続いて「Lee Kuan Yew Global Business Plan Competition 2017」ファイナリストである「Regit」のCindy Nguyen氏から、スタートアップ企業の視点を学びます。最近は様々なWebサイトで何度も名前や住所の入力が必要になりますが、1度入力すれば2度と入力しなくて済むように、様々なシステムで情報をワンストップで管理するサービスを提供しています。

当初はいわゆる大企業をターゲットにしていましたが、組織がサイロ型になった巨大組織では導入が困難であることが分かったため、ターゲットを中小企業や小規模団体に変更しました。これこそがスタートアップに必要なアジリティであるとPatrick教授は指摘します。

またシンガポールでも大企業とスタートアップ企業のスピード感には大きな違いがあり、常に綱渡りの経営をしている実態などが赤裸々に語られました。「なぜそんな苦境に遭遇してもギブアップしないのか?」という質問には、Cindy Nguyen氏の幼少時代の過酷な経験が語られ、そこから溢れる熱意に会場のメンバーは思わず息を飲みました。

 

午後には同じくファイナリストである「Argon」のTan Yishu氏とGlen Ong氏から、二輪車向けのV2V(Vehicle to Vehicle)通信システムのプロトタイプが紹介されました。

シンガポールでは交通事故の半分が二輪車が関連した事故になっています。そこで市販のヘルメットにデバイスを装着し、バイクと周囲の車両との通信を可能にして、衝突防止を図り事故を減少させるソリューションです。

こちらも元々は投資家やアクセラレーターのフィードバックを取り入れていたのですが、それでは顧客目線にならないことに気付き、実際のライダーたちに意見を聞くことにしました。

どのように意見を聞くのか? 彼らは5シンガポールドルでバイクを洗車するイベントを開催し、そのイベントに来場したライダーにヒアリングしてニーズを聞き出しました。その結果、市販のヘルメットに後付けできるデバイスや、機能を絞ったLite版の発案に至りました。ここでもタクシー運転手の家庭に育ったTan Yishu氏の熱い熱意を感じ、すぐに方針を切り替えるアジリティの重要性を感じることができました。

 

続いてSMUの学生向けスタートアッププログラム「IS480」の責任者であるBenjamin Gan教授から、アジャイル手法についてのレクチャーがありました。

デザインシンキングは課題の発見や観察に有効ですが、そこで手に入れたアイデアを形にするためにはアジャイル手法が有効です。メジャーな方法論であるSCRUMを中心に学びましたが、大切なことはプロセスを守ることではなく、お客様とコラボレーションしてフィードバックを取り入れること、プロセス守ることにフォーカスしないように、というコメントが印象的でした。そして「アジャイル4つのマニフェスト」が紹介され、アジャイルの成功には自律した個人が集まることが重要であると指摘されました。

 

最後は改めてPatrick教授による今後5ヵ月のプログラムに向けたイノベーション方法論のレクチャーです。最も力を入れて説明された点は技術ではなく課題を起点とすること。例えば「ブロックチェーンを使って何かしたい」というプロジェクトはうまく進みません。しかし人々の経験に基づいた「この社会課題を解決したい」というプ想いは、壁に当たってもすぐに方向転換ができ、ストーリーを生むことができ、人を動かすことができるようになります。それはこの1日の授業で学んできたことです。

とても内容が濃い1日で、ここには書ききれなかったことも沢山ありますが、参加者それぞれが多くの気付きと学びを得ることができました。

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