【レポート】エグゼクティブ向け:シンガポールにおける国家戦略としてのデザインシンキング

2018.07.06

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2018年7月6日(金)、DBIC/虎ノ門OGにて「エグゼクティブ向け:シンガポールにおける国家戦略としてのデザインシンキング」を開催しました。

国家戦略としてデザインシンキングを活用しているシンガポールで、その骨子となるプログラム策定を担当したフレッシュリーグラウンド(FreshlyGround)社ティエリ・ドゥ(Thierry Do)様、シャン・リム(Shang Lim)様をお招きしたDBICメンバー企業のエグゼクティブ向け特別講演です。


シャン・リム(Shang Lim)様

シンガポールでは2010年にDTIA(Design Thinking & Innovation Academy)が創設されました。民間、公共両方の分野においてデザインシンキング主導のイノベーションを起こすための基礎を学び、実地研修を通して既存ビジネスを変えていくための組織です。


ティエリ・ドゥ(Thierry Do)様

DITAによってシンガポールではデザインシンキング普及のために中間管理職向けとエグゼクティブ向けの2種類のプログラムが策定されましたが、優先されたのはエグゼクティブ向けでした。そもそもデザインシンキングを国家戦略として採用したのがリー・シェンロン首相であり、強力なトップダウン型「Ripple Effect Strategy(波及効果戦略)」によって国内への浸透を進めたためです。同首相による「(デザインシンキングは)自然に起こったのでも、自発的に生まれたのでもない」という言葉からも、戦略的な導入であったことが伺えます。

世界経済フォーラム主宰のクラウス・シュワブ氏による「In the new world, it is not the big fish which eats the small fish, it’s the fast fish which eats the slow fish.(新しい世界では、大きな魚が小さな魚を食べるのではなく、速い魚が遅い魚を食べるのです)」という言葉が象徴するように、デジタル社会のビジネスにおいてはスピードの重要性が増しています。ただし、新しいテクノロジーそのものが脅威なわけではなく、まだ未発見のユーザーのニーズを最初にあぶり出すことが成功の秘訣であり、顧客中心を据えたデザインシンキングがその能力を発揮するところです。

Netflixは北米でライバルであったブロックバスターに勝ちましたが、勝因はストリーミングの技術そのものではなく、「ビデオレンタルの延滞料」という顧客視点の問題に対するソリューションの提示です。AirBnBがホテル業界を席巻しているのも、Uberが躍進を続けるのも、テクノロジー以前に「顧客視点のニーズ」を掘り起こして解決したことで支持されたからだと言えます。どんなに成熟した業界においても、後発の「顧客視点を持った企業」が突然現れ、産業を根こそぎ変えてしまう可能性があるのです。

シンガポールにおける国家裁判所、図書館、病院、航空会社、銀行などにおけるデザインシンキング導入事例の紹介後、デザインシンキングの主要3ステップである「理解→探索→テスト」の繰り替えしの重要性が解説されます。仮説に基づいて簡単で安価なプロトタイプをどんどん作成し、ダメならばどんどん捨てる。この「失敗経験を積み重ねる」ことが、デザインシンキングにとって重要です。

シンガポールが首相からのトップダウンでデザインシンキングを導入したように、日本企業においても社長やエグゼクティブからのデザインシンキング導入が効果的です。DBICではデザインシンキング・ワークショップを2014年からスタートし、これまで300人以上が受講してきました。一方、シンガポールでは企業が数万人規模の従業員にデザインシンキングのトレーニングを受けさせることも珍しくありません。更にデザインシンキング教育の受講には政府から補助金も支給されます。このままのペースでは、日本企業が「fast fish(速い魚)」になることは難しいでしょう。

DBICのワークショップ経験者からは「自社に戻って自分ひとり、または数人だけではデザインシンキングを浸透させることができない」という悩みが多く寄せられています。より多くの従業員にデザインシンキングを体験させることで、社内の人数的な臨界点を突破するまでになれば、デザインシンキングが一気に普及し、ユーザー視点でニーズを発掘できる企業文化が育っていくことが期待されます。

関連リンク

イベント告知ページ
DBICパートナーインタビュー :ティエリ・ドゥ / シャン・リム

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