【レポート】中川郁夫のデジタル社会研究会(2018年6月期)第2回

2018.07.10

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2018年7月10日(火)、DBIC/虎ノ門OGにて中川郁夫のデジタル社会研究会(2018年6月期)の第2回を開催しました。講師は株式会社インテックの中川郁夫様です。

第2回のテーマは「デジタル変革を捉える時間軸 〜未来志向で考える家・街の将来像〜」です。「デジタル社会研究会」という本プログラム名から連想されるテクノロジー議論から敢えて離れ、30年後の日本社会の変化を議論し、そのために必要となるビジネスを考えます。


中川郁夫様

インターネットで「未来の家」と検索してみると、どんな取り組みが見つかるでしょうか? 例えばエネルギー効率を追求したエコな家、ハウスメーカーが考えるIoT化した家、自動車メーカーによるソーラー充電システムとPHV車をエネルギー源とする家など、各社の技術を活用した提案が目立ちます。これでは技術シーズに頼りすぎているのではないか、と中川様は問いかけます。30年単位で変化を捉え、未来のあるべき姿を描くのが本日のテーマです。

まずは2050年の未来を予想するためのディスカッションからスタートです。30年後の日本の姿について、出席者からは「自宅で暮らさない」「定年廃止」「コンパクトシティ化」「ロボット化」「地域コミュニティが家族を代替する」といった意見が出ました。

中川様は日本の近未来において最もインパクトのある変化である人口減少を解説します。2008年をピークに2020年には1.25億人、2050年には1.02億人へと減少していきます。人口減少は税収減に直結し、インフラの維持が困難になります。国交省の調査では、高度な施設の維持のためには約10万人の人口が必要となり、それを下回る地域には例えば救急医療センターを設置できなくなります。

東京の人口ですら、2025年にピークを迎えた後は減少すると予測されています。2050年には日本の国土の60%が無人化する社会がやってくるのです。

次に、過去30年で日本人の価値観がどのように変わったかディスカッションを行いました。今度は出席者から「外食やコンビニの比重が高まった」「家や車をローンで買う人が減った」「男性も育児参加するようになった」「テレビからネットやスマホへの移行が進んだ」といった意見が集まります。

これに対して中川様が提示するデータは過去30年における不動産価格の下落です。人口減少が進む中、地価が再上昇することは難しく、これからの不動産は「減る資産」であると中川様は指摘します。更には1950年に男女で約1.5%であった生涯未婚率が2020年には男性で27.5%、女性で18.6%になる予想から、結婚も出産も各自が判断して選択する時代が本格化するでしょう。これらの価値観の変化は「家」のあ るべき姿にも大きく影響します。

ここでいよいよ、過去30年を振り返った上で、次の30年で浸透する技術やビジネスをディスカッションします。出席者の議論は大きく「シンギュラリティによる医療の劇的な進化による生命の再定義」と「シェアハウスによるコミュニティ細分化」に分かれました。

中川様は過去30年間の変化の象徴的な例として通信速度の変化を挙げます。携帯デジタル化が始まった頃に9.6Kbpsだったのが、現在では最大20Gbpsの高速モバイル通信が当たり前になっています。次の30年は、もっと劇的な変化が起こることが予想されます。例えば、本プログラムの第1回でも取り上げられた自動運転の普及によって、生活圏が1km範囲から10km範囲まで拡大することが、大きなインパクトを生むことにになります。これは面積でいうと100倍の拡大です。こうした変化は街づくりのあり方を根本的に変える可能性を秘めています。

アメリカを中心とした住宅、不動産ビジネスのエクストリームな進化は、未来のビジネスにヒントを与えてくれます。日本でも知名度の上がったAirbnbは旅行用のホテル代替サービスといったイメージが強いですが、StayAWhileというサービスは家具付きの住宅を月額制で利用し、どんどん住み替えていくサブスクリプション型のサービスです。

コワーキングスペースとして有名なWeWorkは、コリビング(co-living)サービスとしてweliveを運営しており、共同生活やコミュニティ育成に注力し始めています。中でもエクストリームなPodshareでは個室も占有スペースもない共同スペースだけで共生するサービスを展開し、ミレニアル世代の若者の支持を集めています。

最後のワークでは、本日のメインテーマである「30年後の家や街はどうあるべきか?」を議論しました。これまでの議論や事例紹介を踏まえ、参加者からはシェアハウスの躍進やコミュニティによる家族の置き換えについての意見が目立ちます。

テーマに対するひとつのソリューションとして、中川様が設立に携わったTクラウド研究科では「T-Villageプロジェクト」の中で、未来の家や街のあり方を提案しています。可動式かつモジュール式のトレイラータイプの家をレゴブロックのように組み合わせ、配置することで「動産」としての家で構成された街づくりを目指すプロジェクトです。

日本の人口減少によるインフラ維持困難を打開するために、病院や学校などの都市機能は一箇所に集約してコンパクトシティ化し、その周辺を取り囲む郊外にT-Villageで構成された住宅エリアを配置します。自動運転が義務化された未来であれば、10km範囲の生活圏が当たり前になるので、実現可能です。

このように「未来はどのようにあるべきか」とう視点で発想し、「その未来に到達するためには、今何をしたらよいか」と考えるのがビジョナリーシンキングです。技術シーズとは異なる視点で未来に向けた事業創造をするために有効なメソッドではないでしょうか。

次回の「中川郁夫のデジタル社会研究会(2018年6月期)」は7月24日(火)開催予定です。ご期待ください。

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