【シンガポールレポート】マレーシアのイノベーションエコシステム

2019.05.21

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シンガポールイノベーションプログラムでは、大学での語学研修とともにマレーシアの社会課題やビジネス環境を学ぶ追加プログラムを開催しています。シンガポールと隣国でありながらもまったく異なる文化を持つマレーシア。いままさに成長しているマレーシアのイノベーションエコシステムを学びます。

マレーシアのイノベーションエコシステム

5月16日(木)はJETROクアラルンプールに訪問し、マレーシアのビジネス環境およびイノベーションエコシステムに関するレクチャーを受けました。ご対応いただいたのはJETROクアラルンプールの田中麻理様と天野隆様です。マレーシア政府は数年内の先進国入りを目指す政策の一環として、イノベーションエコシステムの構築に力をいれています。その代表が財務省管轄でスタートアップ全般を支援する「MaGIC (Malaysian Global Innovation & Creativity Centre)」と、コミュニケーション&マルチメディア省管轄でIT系スタートアップを支援する「MDEC (Malaysia Digital Economy Corporation)」で、イノベーション創出に向けた様々な施策と投資を推進しています。


JETROクアラルンプール

しかしまだマレーシアでは民間企業や大学によるイノベーション投資が活発とは言えません。一部のエネルギー系企業や通信系企業がイノベーション活動を始めていますが、まだシンガポールや日本に比べると小規模な活動に留まっています。これにはマレーシアが抱える「中所得国の罠」という社会課題が関係しています。


JETROクアラルンプール ディレクター 田中 麻理 様

マレーシアを代表とする東南アジア各国は、その安い労働力を活用して経済発展を遂げてきました。しかし現在では外資系企業がより賃金の安いカンボジアやミャンマーに流出しています。そして外資系企業からの受注に頼ってきたため、国内に産業で価値を生み出すナレッジやノウハウが蓄積しておらず、自国だけでの成長ができない状況に陥っています。また優秀な若者はより給与の高いシンガポールや中国に流出しており、将来の経済発展の担い手が足りない状況にあります。これがマレーシア政府がイノベーション政策を進めている理由です。


JETROクアラルンプール郊外のコワーキングスペース「Sandbox」

一方でこの数年間でクアラルンプールには100を超えるコワーキングスペースが設立され、どのコワーキングスペースも若者たちの熱気であふれています。マレーシアらしく多国籍でフラットな文化が醸成されており、中にはシンガポールで起業したがやはり故郷のマレーシアのために何かをしたい、といった情熱を持った人もいます。これらの若きイノベーターに魅力ある環境を作れるかどうかが、これからのマレーシアの成長を担っていると言えるでしょう。

 

デジタルテクノロジー研修

2019年5月14日(火)と5月15日(水)の2日間は、ITに強みをもつAPUの教授にご協力頂き、デジタルテクノロジーを学ぶ特別講義を開催して頂きました。ご登壇いただいたのはAWS(Amazon Web Service)とAzure(Microsoft Cloud Service)に精通されているKalay Anand Ratnam教授。主にブロックチェーンとクラウドについて、ケーススタディとデモを交えながらレクチャーをして頂きました。


Kalay Anand Ratnam 教授

現在のイノベーションを考える上で必要不可欠なのがブロックチェーンです。日本では仮想通貨と混同して議論がされており混乱を招いています。パブリックチェーンとプライベートチェーンはまったく異なる性質を持っており、違いを正しく理解した上で活用方法を考える必要があります。主に企業が採用するのはプライベートチェーンであり、組織をまたがる情報共有や耐障害性などの利点を活かし、どのようにチェーンに情報を格納していくかがポイントになります。


APUサイバーセキュリティーセンター

またクラウド技術は日本ではいまだにハードウェア技術として捉えられていることが多いですが、その本質はクラウドアプリ(マイクロサービス)を組み合わせ、いかに素早くビジネスを形にするかという点にあります。前述のブロックチェーンやAIの機能はすでにクラウドサービスとして提供されており、簡単なAIチャットボットや画像認識などはすぐにAWSやAzure上で利用できます。これらの技術を正しく理解し、いかに組み合わせを考えるかがビジネス創出の鍵となります。こういった最新技術を含めた授業が大学で開催されることが、優秀な人材を生み出す原動力になっています。


APUサイバーセキュリティーセンター入口

 

サンウェイ大学留学生へのインタビュー

5月12日(日)はサンウェイ大学に訪問し、デザインシンキングの観察の一環として現地留学生へのインタビューを実施しました。サンウェイ大学はマレーシアの財閥が運営する大学で、イギリス・アメリカ・カナダなどの大学との強いパートナーシップがあり、日本人留学生にも人気の私立大学です。大学内にはいたるところにSDGs(Social Development Goals)が掲げられており、社会課題への強い関心がうかがえます。


大学中庭や案内看板などに掲げられているSDGsのパネル

今回はトルクメニスタン、中国、日本からの留学生にインタビューを実施しました。なぜマレーシアへの留学を選んだのか、なぜサンウェイ大学を選んだのか、という質問を中心に、学業や生活についてインタビューを実施しました。


サンウェイ大学生インタビューの様子

学生のワークブックを見せてもらって驚いたのが、一般教程の必修科目として「データマネジメント」があることでした。基礎知識としてデータの扱い方や統計学の基本を学んでいます。すべての学生に「データ」を学ばせているのです。授業内容も標準偏差や重回帰分析に留まらない内容で、マレーシアの高いITリテラシーがうかがえます。


サンウェイ大学生インタビューの様子

マレーシアで学ぶ理由として、実戦的なビジネス知識を学びながら英語力を身に付けられる点が挙げられます。日本では大学に入学すると学業そっちのけになってしまう学生や、研究ひとすじになってしまう学生が多く見受けられます。英語が話せてビジネスの基礎知識があるマレーシアの学生と、英語が片言しか話せず就職するまでビジネスに触れない日本の学生、どちらがグローバルビジネスの環境で活躍できるかは一目瞭然です。大学の偏差値やランキングに関わらず、自分で何を学び何をしたいのか、それをはっきりと考えながら大学で学んでいる点が日本との大きな違いと言えそうです。


サンウェイ大学中央入口に掲げられているSDGsパネル

 

マレーシア事前研修も残り1週間を切りました。5月25日(土)にはいよいよシンガポールに渡航し、本格的な課題発見(プロブレムステートメント)に取り組みます。

 

関連リンク

イベント告知ページ
【シンガポールレポート】国内研修第1週目「イノベーターズ・マインド」
【シンガポールレポート】国内研修第2週目「デザインシンキング」
【シンガポールレポート】国内研修第3~4週目「プロブレムステートメント」
【シンガポールレポート】マレーシア事前研修

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