【DBICメンバー企業】大日本印刷 :ソーシャルイノベーションから切り開く印刷会社の未来

2019.09.26

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世界の企業がDX(デジタルトランスフォメーション)に取り組む現在、特に高い危機意識を持つ業界の代表格として印刷業界を想像する人も少なくないでしょう。出版不況やペーパーレス化は、もはや一時的なトレンドではなく、ビジネスにおける前提条件として定着しています。

そんな逆風の中、DBICメンバー企業である大日本印刷(以下、DNP)は、2018年3月期の年間営業利益が464億円、2019年3月期では499億円と成長を続けています。同社の躍進の原動力はどこにあるのでしょうか。

本記事ではDNPのイノベーションへの取り組みと、DBICとのコラボレーションについてご紹介します。

印刷業界に吹く逆風の中、成長を続けるDNP

1876年に創業したDNPは、戦後に印刷技術を紙からフィルムや金属などに応用することで梱包や建材の分野に、そしてディスプレイ製品や電子デバイスなどのエレクトロニクス分野に進出し、「第二の創業」を実現しました。更に1970年代には早くも情報のデジタル化に取り組み、ICカード関連の事業やネットワークサービスなども展開しています。

このような歴史を踏まえると、DNPはDXという言葉が生まれるずっと前から、デジタル化によって印刷事業領域そのものを拡大することに成功した印刷会社であったと言えるでしょう。

更に2019年8月に発表した「DNPグループ統合報告書」において、北島義斉社長は「私たちは今、大きな時代の変化の中におり、これまでは取引先企業の課題に対応していれば業績を伸ばすことができたのに対して、現在はDNPが自ら人々や社会の課題を発見し、その解決に真摯に対応していく必要があります」と語り、DNPが社会課題を解決する価値を提供し続けていく挑戦を同社の「第三の創業」と位置づけ、グループを挙げてその実現に取り組んでいます。

受注型ビジネスモデルから、社会課題の発見・解決へ

北島社長の言葉からわかることは、急速なテクノロジーの進歩とディスラプターの脅威にさらされる中、クライアント企業自身が自らの課題を把握しきれなくなってきたことをDNPが敏感に感じ取っているということです。そして、DNPが主体的に社会課題を発見してクライアント企業と共に解決していく提案型アプローチへの切り替えを進めているのです。

この動きは、DBICが2019年度から新たに「ソーシャルイノベーション」を活動のテーマとして掲げたことにも合致し、SDGsに代表される世界的なビジネストレンドとも呼応しています。もはやDNPにとって印刷事業の領域拡大は当然の取り組みであり、それに加えて真に新しい価値を生むためには「目指すべき社会」を描くことから始めなければならないという決意が伺えます。

2018年から本格化したイノベーション創出活動

DNP内でその中核を担う情報イノベーション事業部は、DBICが主催するプロジェクトやイベントに対して経営幹部や社員の積極的な参加を促し、イノベーションを生み出し続ける組織風土づくりを進めています。


DNP情報イノベーション事業部コンサルティング営業本部のメンバー

同事業部に所属するコンサルティング営業本部では、2018年10月にクライアント企業の要望に対応する従来型の受注事業に加えて、DNPがプラットフォーマーとなって新しいマーケットを創出することを目標としたイノベーション創出活動を開始しました。クライアント企業も含めた多様なステークホルダーと共に社会課題を解決することを通して、新規ビジネスにつなげることを目指しています。

8チームがイノベーションアイデアを競う

2019年7月には東京・日本橋のDBIC Tokyoにてコンサルティング営業本部による社内イベント「イノベーション活動ピッチ」が開催されました。部門内の8チームが考案した新しいビジネスモデルを社外有識者が審査する新しい試みです。

当日は各チームがまずは解決すべき「社会課題」を設定し、パートナーとしてクライアント企業やスタートアップ企業、行政機関などを選定。最後にプラットフォーマーとしてDNPがどのように関与しながら、持続可能なビジネスモデルを構築するかを提案する形式でプレゼンテーションを行いました。


DBIC Tokyoで開催されたDNP社内イベント「イノベーション活動ピッチ」の模様

社外有識者による審査の結果、優勝したのは、規格外として廃棄される農畜産物と出張調理販売をしているフードトラックをマッチングすることで、新しい食のセーフティネットを提案する「フードトラック事業者向けマーケットプレイス」と名付けられたビジネスアイデアでした。

隠れたフードロスに光を当て、食のセーフティネットとして活用

高齢者やひとり親家庭など、孤食を強いられたり栄養バランスに欠けた食生活を送ったりする人々は日本国内で約230万人と推定されています。一方、年間650万トンとも言われるフードロスの集計には、「闇ロス」と呼ばれる推定年間200万トンの規格外農畜産物の廃棄は含まれていません。

今回のビジネスアイデアではDNPがフードトラック事業者向けの規格外食材入札システムとユーザーマッチングのプラットフォームを構築することで、持続可能なビジネスモデルとしての社会課題解決を提案しています。


チームを代表してプレゼンテーションを行なうDNP コンサルティング営業本部 荻野清一氏

フードトラック事業もフードロス解消サービスも既に競合が出はじめていますが、本アイデアの「対象ユーザーを個人宅ではなく地域コミュニティ施設に限定することで、団らんを提供したい」という差別化が外部有識者に高く評価され、優勝につながりました。

コンサルティング営業本部の谷口幸也本部長はイベントを締めくくる総評において、「従来DNPの主力事業であった“紙への印刷”を軸にしたビジネスモデルは厳しい状況に置かれています。これからは既成概念を取り払い、新しい価値の発掘をして利益創出をしていかないと、事業継続が難しい」と語り、改めて危機感を共有しました。


DNP 情報イノベーション事業部コンサルティング営業本部 谷口幸也本部長

その上で「大企業の会社員は、ともすると利益や原価を特に意識しなくても仕事ができてしまうので、ゼロから新しいビジネスモデルを組み立てる経験を積むことで経営者感覚を養って欲しい」と、参加チーム全体に対するエールを送っていました。

社会課題解決の協業パートナーとしてのDNP

印刷会社という伝統的なパブリックイメージとは裏腹に、DNPは早くからアグレッシブにDXに取り組み、近年はソーシャルイノベーションという世界的なビジネストレンドに寄り添った事業開発を進めています。

特徴的なのはDNP自体がMaaSやRaaS(Retail as a Service)の事業者としてマーケットに進出するアプローチを取らず、その領域での事業を手掛けようとしているクライアント企業に対して、解決すべき社会課題を共有して、適切なエコシステムを提案し、協業しようとしている点です。

DBICメンバー企業の中でも、持続可能な新規ビジネスを開発するための有力なパートナーとして、DNPの存在感が増しています。今後もDBICでは各メンバー企業のイノベーション創出や連携を支援していきます。

社外有識者(審査員)のご紹介

最後に2019年7月のDNP「イノベーション活動ピッチ」で審査員を務めた自動車業界、流通業界、新規事業関連の社外有識者3名をご紹介します。


小林 浩氏(国際経済研究所 主席研究員)
国際的な経済情勢の調査・分析を行う研究機関である国際経済研究所において、モビリティ領域の主席研究員を務める


八木橋 裕氏(ダブルフロンティア 代表取締役)
お買い物代行プラットフォームTwidyを創業。日本だけでなく海外のスタートアップの動向にも知見が深い


高島 宏明氏(MASTコンサルティング 代表取締役)
監査法人での中小企業向けIPOコンサルタントの経験を活かし、中小企業診断士を中心とした経営支援コンサルティング会社を創業。中小企業が抱える経営課題全般に知見が深い

関連リンク

・【レポート】ELEKS:次世代SIがDXとデジタルビジネス・イノベーションを推進する

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