【DBICメンバー企業】東京海上日動火災保険 × インフォテック:2社の部活動がDBICで出会い、自然体なオープンイノベーションへと発展

2019.09.30

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DBICのメンバー企業である東京海上日動火災保険(以下:東京海上日動)とITベンダーのインフォテックは、システム開発業務におけるユーザー企業とベンダー企業として確固たるパートナーシップを構築しています。

そんな中、ほぼ同時期に2社の中で別々に立ち上がった有志社員による部活動(企業内サークル)がDBICをきっかけに出会い、2019年5月から月に数回のペースで東京・日本橋のDBIC Tokyoに集結して「自分たちが本当に欲しいと思える新しいサービス」をテーマにディスカッションを始めています。

20代〜30代社員を中心としたこのコラボレーションがどのように生まれ、何を目指しているのかについて、4人のメンバーから話を聞きました。

共通する危機感を持った、異なる若手グループの出会い

まずは東京海上グループ(以下:東京海上G)での部活動の立ち上げ経緯から教えてください

東京海上日動 林嵩大氏(以下、TM林):弊社は損害保険会社としてグループも含め「大企業」と呼べる規模になるかと思います。大きな組織にありがちなことだとは思いますが、入社4年目の私のような若手が、若手ならではの発想やアイデアを形にしづらい、という課題を感じていました。

グローバルにはGAFAに代表されるようなデジタル企業が新しいビジネスを駆使して台頭する中、「保険会社はこのままで生き残れるのだろうか?」という危機感を持った若手社員が発起人となり、2018年の11月に20人のメンバーで「Tib(Taiikukai-innovati-bu)」と呼ばれる社内部活動を立ち上げたのが最初です。


東京海上G有志団体「Tib」の林氏(左)と畑中氏(右) パーカーとTシャツは「Tib」のロゴ入り

東京海上日動 畑中翔太郎氏(以下、TM畑中):林さんの話に出たTibの発起人は、経営戦略や事業企画を担当する部署に所属していた私の同期ふたりで、両名とも私と同じ入社5年目です。

東京海上Gという歴史ある大企業を若手のパワーで変えていこう、よい雰囲気を醸成していこう、という彼らの思いから始まっています。そこで同期である私や、林さんのような後輩に声がかかり、今では40名ほどにまでメンバーが増えました。

DBICとはどんな関わり方をされていたのですか?

TM畑中:私は新規事業に興味があったので、2019年4月にDBICで開催された「横塚裕志が聞きたいシリーズ:経営者が新規事業を失敗させてしまう7つの罠」でのソニックガーデン倉貫義人さんの講演を聞きに行きました。

すると、倉貫さんのお話の中にまさしく「部活動のような自由な場から新規事業のアイディアが生まれた」という内容があったので、質疑応答の時間に私が「東京海上Gでも部活動を始めたところなんです」と発言しました。


イベントの質疑応答で発言するTibの畑中氏の様子

その場に居たインフォテックから出席されていた方が私の発言を聞いてくださっていて、懇親会のときに「ちょうどインフォテックでも似たような部活動が始まったところです」と声をかけられたのが、現在の2社コラボレーションのきっかけになりました。

それではインフォテック側の部活動の始まりについて教えてください。

インフォテック 千葉大介氏(以下、IT千葉):2年くらい前から、インフォテックの社内有志で集まって社外のハッカソンに参加したり、地方のイノベーション事例を見学したりといった活動を行っていました。ただ、それだけだと同じ顔ぶれのメンバーだけで固定化してしまって広がらないので、社内の認知向上のために2019年度から「イノベーション研究会」という社内サークルを立ち上げました。


インフォテック千葉氏

15人ほどが参加して「さあ、これから活動方針を決めよう」と話しているところで、先ほどの畑中さんのお話にあったような流れでTibさんと出会うことができて、ラッキーなことに最初から継続的な活動目標が持てたという状況です。

インフォテック加藤翼氏(以下、IT加藤):実は私は千葉さんのイノベーション研究会とは別に「ONE INFOTEC」というサークルを同時期に立ち上げたところでした。


インフォテック加藤氏

私はインフォテックの自社製品開発を担当する部署に所属しているのですが、会社全体としては受託開発の割合の方が大きいです。そのため、ユーザー企業様や案件別にチームが細分化されていて、隣の部署の人が何をやっているのかすら知らない、ということが当たり前に起きます。それではもったいないので、部署やグループの垣根を超えて知見を持ち寄れるような活動を目標にしたのがONE INFOTECです。

IT千葉:私は勤務地が東京・多摩センターであるため「加藤さんという面白いことをやろうとしている人がいる」という噂だけは以前から聞いていましたが、実際に会ったことはありませんでした。DBICでTibさん、ONE INFOTEC、イノベーション研究会が合流して初めて顔を合わせることができました。今年の5月のGW明けくらいのタイミングです。

IT加藤:私も以前から千葉さんの噂だけは聞いていました(笑)。

自分たちが欲しいものを、自分たちでつくる

現在、両社から3つの部活動(サークル)が合流してDBICに集まり、「勉強会の企画者と参加者双方のインタラクティブな体験向上」と「社内の飲み会の精算を楽にする」を目的とした2種類のサービスを企画していますよね。どうしてこのテーマを選んだのでしょうか?

TM畑中:もともとTibでは「自分たちが日頃感じている悩みを解消することで、仕事や日常生活をワクワクするものにしたい」という思いがあった一方、自分たちにアプリやウェブサービス開発のスキルがないのが課題でした。それでも少しずつ自分たちで勉強してつくっていこうとも考えましたが、かなりの時間がかかってしまいます。

そんな中、インフォテックさん側の課題として「自分たちは技術はあるけれど、自分たちがつくったものでユーザーにワクワク感を与えられているのか実感が持てない」という悩みがあることを伺いました。


2019年6月にDBIC Tokyoで開催されたディスカッションの模様

そこで、最初に合同で集まった時にTib側から「自分たちはこんなサービスがあったらワクワクする」というネタ出しをして、それに対してインフォテックさん側も「これなら一緒にやってみたいし、実現可能だ」と思えるようなものをディスカッションしていったんです。そこから選ぶ作業を繰り返し、残ったのが勉強会の体験向上と飲み会精算でした。

IT加藤:私は自社製品開発を担当する部門に居るので、企画者としての視点でも見ていました。既に世の中にあるサービスを模倣しても「車輪の再発明」に陥って広がらないので、世の中にない新しいものを選びたいという思いがありました。

インフォテック社内でもリーンスタートアップに代表される開発メソッドは取り入れているのですが、必ずしも効果的に使えているわけではないのが実情です。DBICでTibさんから異なる視点で意見を出していただきながら企画や開発をする経験が、自社に戻ってからも役に立つと考えています。

TM畑中:勉強会の体験向上サービスの例で言えば、最初は「社内で開催されている勉強会がもっとワクワクするようになったらいいよね」というところから企画が始まっていますが、それだけが目的ではないんです。

TibではDBICで行っているインフォテックさんとのコラボレーション以外にも走っているプロジェクトがいくつかあって、その中に「働き方改革」に取り組んでいるチームがあります。働き方改革の本質は単に残業を減らしたり休暇を多く取ることではなく、自信を持って自分らしく働けるマインドやスキルを身につけることで、「仕事に追われる」のではなく「仕事を自分でコントロールしながら、働きがいを持って熱中できるようになる」ことだと私は考えています。


2019年6月にDBIC Tokyoで開催されたディスカッションの模様

そのためには日頃から意欲的に勉強することで自分なりの武器を身に着け、成長していくことが不可欠です。それで勉強会に参加するわけですが、多くの場合は「教える側」と「教わる側」に分かれていて、単発の講義を聞いて「なるほどね」という感情を持つだけで終わってしまいます。

でも、講師に対して受講者がフィードバックしたり、受講者間で意見交換をしたり、講師側から後日フォローアップがあったりという双方向性のある勉強会のカタチをつくれば、誰もが前向きに学び合い、教え合うという文化を会社に根付かせることができるかもしれません。


開発中の勉強会の体験向上アプリのモックアップ

最終的には「Tibのおかげで東京海上Gの社員がイキイキと働けるようになった」と言ってもらえること、なおかつそれを「インフォテックさんとのコラボレーションで実現しました」と言えるようになることを目標に取り組んでいます。

個人のモチベーションと会社のビジョンは両立するのか?

皆さん日常業務もお忙しい中、仕事終わりの19時から集まって自主的に活動されています。そこには「会社のため」という大義名分だけではなく、各自が個人的なモチベーションをお持ちのように見えます。

TM林:私は「他人に負けたくない。一番になりたい」という強い思いを持っています。現在、保険会社で自然災害のリスク分析をする部署に居て、そこでの業務を人一倍突き詰めることも重要かつ自分の財産になると感じていますが、外に出ないと得られない経験もたくさんあります。


Tib 林氏

こうやってDBICでインフォテックさんとコラボレーションしながら、ゼロベースで新しいサービスを考えることは、現在の部署ではなかなか経験できないことです。若いうちにどれだけ「外の世界」を知っておくかが、将来的に人間としてもビジネスマンとしても大きな違いを生むと思っています。

IT千葉:私は40歳で、他のメンバーよりひとまわり年上ですが、林さんのお話にはすごく共感できます。個人的なモチベーションとしては、私だけではないと思いますがインフォテックの社員はモノをつくるのが好きなのです。

現在はクラウド技術などの普及で、過去には考えられなかった規模のシステム開発が個人レベルで可能になりました。こんな時代に実際に「つくれる」技術を持っていると、楽しいことがいろいろできるんです。

また、加藤さんから話があった通りインフォテックは受託開発が主要な売上を占めており、私も実際、保険会社様向けのシステム開発を担当する部署に所属しています。

一方で、会社全体として「このままのビジネスモデルが10年、20年先まで続くのか?」という大きな危機感を持っているのも事実です。それでリーンスタートアップやデザインシンキングといったメソッドは会社にも導入されてきて、「発想をカタチにする」スキルは上がってきたのですが、そもそも「発想する」部分がまだ弱い。


2019年6月にDBIC Tokyoで開催されたディスカッションの模様

今回のTibさんとのコラボレーションでその「発想」部分を伸ばして、それを会社に持ち帰ることが自分の成長にもなるし、会社の取り組みの方向性とも整合しています。

東京海上Gやインフォテックは会社としてどのように皆さんの活動をサポートしているのでしょうか?

IT加藤:今回のコラボレーションに関して会社から特別にサポートがあるわけではないですが、自由にやらせてもらっています(笑)。

TM畑中:Tibもあくまで有志団体なので、私たちも会社から直接的なサポートは受けていないです。部活のTシャツやパーカーをつくりましたが、すべてメンバーの自腹です。

でも活動については会社も認知していて、たまに経営企画や人事部門から「今どういう状態なの?」という感じで声がかかって、フラットに話を聞いてくれます。あまり干渉しすぎるとこちらが萎縮したり自主性が損なわれることを向こうもわかっていて、良い意味での距離感が保たれている印象です。


2019年6月にDBIC Tokyoで開催されたディスカッションの模様

企画中のプロジェクトをいよいよ製品化するぞ、という段階まで来たら会社を巻き込んでいく必要も出てくるのではないでしょうか?

TM畑中:今はそこまで考えていない、というのが正直なところです。そこを考えてしまうと、一気に「ビジネス感」が出てしまうので(笑)。とはいえ、本当に有志での活動では限界になったとしても、それを理由にプロジェクトを中止することはしたくないので、そのときは会社に相談します。

IT千葉:私も今の段階ではビジネスにしようというビジョンは持っていないですね。サークル活動を始めてまだ2ヶ月、まずは楽しく取り組めるネタを探したいという段階です。将来的に、仮に東京海上Gさんが公式にサービス化する、という話になったら、そうですね、インフォテック社内の営業部門に相談しますかね(笑)。

想いを共有する対等な関係性から、新しいものが生まれる

お話を伺っていて、皆さんが心から「楽しそう」に活動されているという印象を受けました。

IT千葉:私もそうですが、キャリアについて悩んでいる社員は少なくありません。そういう人がここに集まって「こういう新しい世界もあるんだ」と知ることが、今後のキャリアを考える良いきっかけになると思います。

IT加藤:IT業界は外から見るとキラキラしている世界に見えるかもしれませんが、実際にはCOBOLで書かれたレガシーシステムを何十年も保守する、といった地道な業務もたくさんあります。私も現在の新製品開発の前は、自社製品とはいえ20年以上保守しているサービスを担当していたので、新しいことに取り組むには限界があり、キャリアに対する不安を持っていました。

DBICにおける東京海上Gさんとのコラボレーションを通して、「全く新しいものを、対等に相談できるチームでつくる」という体験ができているのは、自分にとって大きなチャンスです。


2019年6月にDBIC Tokyoで開催されたディスカッションの模様

TM畑中:今回のインフォテックさんとのコラボレーションでは「企画側」と「開発側」という役割分担はしていなくて、全員が「こんな未来をつくりたい」というひとつの思いを共有しているスタートアップのような感覚でいます。

私は船舶や洋上風力発電の保険を取り扱う部署に所属しており、システム開発の経験はあまりありませんが、「プロダクトありき」の伝言ゲームのような開発がされてしまうことが多いイメージを持っています。しかし、本来は対話を通じてカスタマーの悩みを徹底的に理解し、関係者全員がまるで自分の悩みかのようにこれに共感しながら解決していくのが、システム開発のあるべき姿ではないかな、と思います。

ですから、私たちが考える企画に対してインフォテックさんに内心「ちょっと違うのでは」と思われてしまったら意味がないんです。逆もまた然りです。こうやってDBICで定期的に顔を合わせて、日常的にもSlackで緊密にやり取りして、徹底的にビジネス感のないフラットな関係で何かをつくる、というスタイルそのものがキモで、何をつくるかはその次だと考えています。

これが成功したら「システム開発の新しいスタイル」として他のプロジェクトにも展開できるかもしれません。そこにもワクワクしています。


2019年6月にDBIC Tokyoで開催されたディスカッションの模様

TM林:私にとってこのコラボレーションのワクワク感の源泉はふたつあります。ひとつ目は「納得感」です。このコラボレーションでのアプリ開発では、自分たちがひとりのユーザーとして「日常生活の中で本当に欲しいもの」をつくっている、という感覚を強く持っています。Tibの行動指針のなかにも「欲しいをつくる」という項目がありますが、実際に「痛み」を抱えている人のことを想像しながら、その人が真に欲しいサービスをつくりあげるプロセスは納得感を伴いますし、何よりも早く届けたいという思いでワクワクしています。

もうひとつは「まずやってみる」という点です。何の数字的な責任もない有志団体なので、失敗しても誰に気兼ねすることもありません。汗をかいて動かないことには当然失敗もしませんが、そこに何の学びも価値もありません。スモールスタートでたくさん失敗することこそが最終的な成功への近道であると思っているので、こうした場は貴重だと感じています。

以上のふたつを大切にして、ワクワク感を保ちながら、これからもこのコラボレーションを楽しく続けていきたいです。


メンバー紹介(画像左から):
東京海上日動火災保険 企業商品業務部 保有企画グループ
林 嵩大氏

東京海上日動火災保険 海上業務部 船舶業務グループ
畑中翔太郎氏

インフォテック株式会社 プロダクトソリューション本部 プロダクトソリューション統括部
加藤 翼氏

インフォテック株式会社 システムソリューション本部 金融第1統括部
千葉大介氏

※記事内の各種表記は2019年6月の取材時点のものです。

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