【レポート】DBIC ダイビングフォーラム 2019

2019.11.28

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2019年11月22日(金)東京・室町三井ホール&カンファレンスにて「DBICダイビングフォーラム 2019」を開催しました。

冷たい雨の中、100名を超える皆様にお集まりいただき、DBICが掲げるイノベーション施策「4D+S」のうち、2019年度の「Diving=短期間で実際の事業創出に挑む」に挑戦したメンバー企業社員が成果発表を行いました。

本レポートでは当日の内容を再構成してお伝えします。

オープニング


ティエリ・ドゥ様(中央)

プログラムの冒頭では、アイスブレイクとしてDBIC設立前からデザインシンキング・ワークショップ講師を務めるフレッシュリーグラウンド社のティエリ・ドゥ様による「ウォーターメロン体操」を会場全員で行いました。

続くオープニングトークでは、DBIC代表の横塚裕志が2年間のダイビングプログラムの実施を通して気づいた「イノベーションに必要なふたつのこと」について語りました。内容については横塚のコラムをご参照ください。


横塚 裕志(DBIC代表)

「DBIC シンガポールイノベーションプロジェクト」成果発表会

2019年度の「DBIC シンガポールイノベーションプロジェクト(SIP)」にはDBICメンバー企業のうち住友生命、大日本印刷、コニカミノルタ、東京ガス、野村総合研究所、東京ガスiネットの各社(登壇順)から計8名の社員が参加しました。

4月の国内事前研修、5月のマレーシア語学研修を経てシンガポール入りしたプロジェクトメンバーは、約5ヶ月間の滞在期間中に現地パートナー探索と新規事業開発に取り組みました。個別のプロジェクト概要は10月にシンガポール現地で開催した成果発表会のレポートをご参照ください。

本記事では、現地で大きな話題を呼んだ障がい者向けコワーキングスペース「TomoWork」のPoCを実施した住友生命の百田牧人様のスピーチ内容をご紹介します。冒頭でTomoWorkに参加した15名の障がい者の皆様と撮影したエネルギッシュな集合写真を紹介しながら、百田様は「ライフチェンジングな素晴らしい体験だった」とプロジェクトを振り返りました。


シンガポール現地で撮影した「TomoWork」参加者との集合写真

TomoWork開始時の参加者には、過去の就職活動で何度も不採用となり、社会に対する不満を口にする人も少なくなかったそうです。ところが2週間のPoC終了時には参加者から「初めて自分が誰かを助ける側にまわることができた」という声を聞くことができました。

TomoWorkには現地企業の人事担当者が頻繁に視察に訪れ、参加者の働きぶりを見た企業への就職が実現したケースも生まれました。中でもジョンソン&ジョンソンからは「シンガポールで初めて障がい者を雇用した。それはTomoWorkがあったからだ」という言葉が百田様に贈られたとのことです。

とはいえ、百田様にとってTomoWork実現への道程は平坦なものではありませんでした。日本、マレーシア、シンガポールで50名以上の障がい者との対話を通して障がい者やその家族にとっての「働く」ことの重要さに注目した百田 様ですが、シンガポールでのコネクションはゼロ。英語力も不十分でした。

それでも百田様は現地で「お金ではなく熱量のある人を集めたい」という思いを胸に、障がい者関連のイベントや関連企業をリサーチし、直接赴いて対話を重ねていきました。

シングリッシュと呼ばれるクセのある英語に苦戦し「正直、相手が何を言ってるかわからないことも多かった」と語る百田様ですが、毎朝5時からオンラインで英会話レッスンを受講し、重要な交渉ではDBIC現地ディレクターの三井幹陽に同行を依頼した上で会話を録音し、夜に何度も聞き返して勉強したとのことです。

このような「食らいつく」百田様の姿勢が次第に周囲を巻き込み、TomoWorkの成功へとつながりました。住友生命からの公式なバックアップも得て、2020年には事業化に向けた2回目のPoC実施が決定しています。


住友生命 百田 牧人 様(SIP2019メンバー)

本プロジェクトを通した学びとして、百田様は「シンガポールのオープンな文化の中で、議論や検討するだけではなく、行動して実験して前に進むことを目の当たりにしました。そういった体験を積める環境に若いイノベーターの卵が飛び込んでいくことで日本企業が活性化し、更には日本全体が良くなっていくと感じました」と締めくくりました。

「イノベーション創出実践プログラム in ジャパン」成果発表会

続いてSIPの日本版として2019年度からスタートした「イノベーション創出実践プログラム in ジャパン(JIP)」の成果発表が行われました。本プロジェクトにはメンバー企業のうち住友生命保険、大日本印刷、テプコシステムズ(東京電力ホールディングス)、野村総合研究所(登壇順)から計5名のメンバー参加して「デジタルコミュニティ」をテーマに7月にキックオフし、活動を続けてきました。

SIPとは異なり、JIP参加者は各社での通常業務と並行してプロジェクトに取り組む必要があり、なおかつ期間も短かったためゴールをPoCに至る前のビジネスプラン策定に置いていることが特徴です。


渋谷 健(DBICディレクター)

コーチングを担当したDBICディレクターの渋谷健は「参加者に対しては、研修だという意識を捨てて本気のビジネスを創出することを求めました。『今この瞬間変わって進化するか消えるかを選べ。現状維持はない』と、マインドチェンジを強く求めました」と語りました。

そんな中、メンバーは認知症予防、体調不良者と周囲の関係性改善、フードロス削減、地域活性化、コンピューターサイエンス教育といった自身の課題を発見し、パートナーを探した成果やビジネスプランをプレゼンテーションしました。

プログラムを通した学びとして共通して発せられたのは「会社と自分を切り離し、個人として本当にやりたいことを見つけること」の難しさと重要さです。


日本ユニシスの市原潤様による「NICOLLAP」紹介の模様

JIPで芽生えたビジネスプランは、DBICメンバー企業である日本ユニシスが長野県で手掛ける「長野ITコラボレーションプラットフォーム(NICOLLAP)」とも連携し、PoCへと進んでいきます。最後は渋谷から「これがスタートライン」と、参加メンバーに対するエールが送られました。

意見交換会

休憩を挟んで、「ダイビングプログラムを通して見えてきた、日本企業の課題と組織変革に向けて」をテーマにDBIC講師陣によるディスカッションを行いました。発言をピックアップしてご紹介します。

ティエリ・ドゥ様(デザインシンキング講師):イノベーションは偶然では起きません。本当の変革が必要であり、そのためには経営陣のサポートが不可欠です。

9年前、私とシャンがシンガポール政府からデザイン・シンキングの普及を依頼された時、ほとんどの大企業の経営陣から多大なサポートを得ることができました。

その結果、今のシンガポールでは銀行から製造業、食品業までイノベーションを起こすためにデザインシンキングを活用するのが当たり前になりました。日本の経営陣の皆さんにも、変革のためのサポートをぜひお願いします。


ティエリ・ドゥ様(左)、シャン・リム様(右)

シャン・リム様(デザインシンキング講師):私から会場の皆さんには「エンパワーメント」と「エコシステム」というキーワードを贈らせてください。

私たちのデザインシンキング・ワークショップに参加された日本企業の皆さんに後日お会いすると「あんなに知識を得て、やる気もあるのに、職場に戻ると何もやらせてもらえない」という嘆きをよく聞きます。パワーを得た社員が、それを発揮できるような環境づくりをお願いします。

先ほど渋谷さんが「スタートラインに立ったところ」とおっしゃっていましたが、多くの社員にとってはスタートラインがどこにあるかすら見えないのが実情ではないでしょうか。


岩井秀樹(DBICディレクター/中央)

岩井秀樹(DBICディレクター):私は日本でデザインシンキングの導入に取り組んでいますが、今年の夏に初めてシンガポール現地を訪問し、大きなショックを受けて帰国してきました。シンガポールでは明確に「イノベーションを起こすための手法」としてデザインシンキングを扱っていたのです。

ところが日本の多くの企業では経営陣が「デザインシンキングを社員に勉強させれば、社員がイノベーションを起こしてくれるのではないか」という意識でいるのがほとんどです。個人レベルで知識を得ただけでイノベーションが起こるはずがありません。むしろ経営陣こそが、特に上流工程で組織変革をしないとイノベーションは起きないのです。

イノベーションに必要なのは「変化すること」なのに、会社では「上司の言うこと」や「答え」を教えようとします。これでは「イノベーティブになるな」と言っているのと同じことです。


三井 幹陽(DBIC現地ディレクター/CLO LABS CEO)

三井 幹陽(DBIC現地ディレクター/CLO LABS CEO):(会場から出た「社会課題解決と会社の事業をどう繋げたらよいのか」という質問を受けて)中国アリペイグループのアント・フィナンシャルという会社が、アリペイに残った残額を少しずつ積み立てて、労働者向けの共済のシステムをつくりました。

このように「エコシステム」という観点で見れば、現状だと「自社には関係ない」と思っている領域も、どんどん自分のビジネスとして巻き込んでいける可能性があります。これはひとつやると、その次が見えてきます。卵と鶏の関係と同じで、やらないと見えないのです。


福田 秋裕(DBICプログラムマネージャー)

福田 秋裕(DBICプログラムマネージャー):SIP/JIP共に参加メンバーが様々なアイデアを生み出しましたが、これが実際にビジネスになるのか、社会課題の解決になるのかは会社次第です。多様なアイデアを受け止める企業文化をぜひつくっていただきたいです。

DBICからの報告


西野 弘(DBIC副代表)

当日は、DBIC副代表の西野弘から、10月に開催した「海外探索ミッション(スイス&デンマーク)」の報告と、訪問先だったデニッシュデザインセンター、そしてコペンハーゲンインタラクションデザイン研究所との提携について発表がありました。2020年2月には両施設とのコラボレーションによる新しいプログラムを開催します。詳細は近日中に当サイトで公開します。

また、西野からは2019年度からスタートしたDBIC独自のソーシャルイノベーションプロジェクトである「発達障がい」「睡眠障がい」「働く女性の健康問題」についても進捗の報告がありました。

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