【横塚裕志コラム】目的があるから企業の戦略に広がりが持てるイノベーションが起こせる

2020.02.27

facebook twitter

DBIC代表の横塚裕志です。DBICではかねてから、「プロブレム・ステートメント」を書くことがイノベーションのスタートだと主張してきました。

メンバー企業がシンガポールでプロジェクトを実践するなかで学んできたことであり、世界を眺めるとそれが当たり前になってきています。

「プロブレム・ステートメント」とは、プロジェクトの目的を文章で具体的に記述したもので、対象となる方々はだれか、その方々のプロブレムはなにか、その真因は何か、その解決策はなにか、を端的に描いたものです。

この「プロブレム・ステートメント」、「目的」を持たないプロジェクトは、表層的で対症療法的で、さしたる効果を持たないものになります。つまり、少し便利になった、という程度にとどまることが多いのです。

目的をもつこと

ハーバードビジネスレビュー2020年3月号「パーパスを戦略に実装する方法」※1の中で「目的を戦略のコアに適用することで戦略の幅を広げることができる」という内容が掲載されています。

「目的」が企業の戦略を2つの角度で広げることができる、と。

  1. 活動領域の再定義
  2. 提供価値の再形成

この2つの考え方で成果を上げている企業の事例が紹介されています。まさに「目的を持つこと」が企業の活動をドライブしています。シンプルに例えると、「保険会社」の目的を「保険事業を行うこと」と定義するのか、「事故から市民を救うこと」と定義するのかで活動の範囲が大きく異なってくることは容易に想像できます。

しかし、この「目的」「プロブレム・ステートメント」を策定することが実はとても難しい。企画することも難しいうえに多くの方の共感を得るものでなければならないからです。

企業の存在意義や目指す価値を設定するために

2020年2月6,7日と2日間にわたって、デンマークデザインセンターによる「リーダーのためのデザイン」というワークショップを行いました。そのときに、クリスチャン・ベイソン氏(CEO)に聞きました。

「日本企業には、企業の目的、企業ビジョンがないのです。あっても、売り上げや利益率を目標としたものか、立派な会社になろうというような超抽象的なものしかありません。これでは、価値創造企業としてのスタートラインにも立てません。企業の存在意義や目指す価値を設定した真の企業ビジョンはどのようにして作成したらいいのでしょうか。」

クリスチャン・ベイソン氏は以下のように答えてくれました。
「2つの要素が必要だ。

  1. 社内に設置したデザインチームが、市民や顧客が私たちのビジネスやその周囲の状況の中で、どのようなことに困っているのか、どのような悩みを持っているのか、先入観を捨てて、純な気持ちで感じる中で、インサイトを得る。そのインサイトを映像や音声などで再構成し、それを社長と対話しながらビジョンに昇華させていくこと
  2. 社長も実際のお客様と本音で触れる中で、助けたいと思うことを体験で拾い集めてくること」

つまり、実際のお客様の観察からのインサイトが重要、ということであり、これがまさに「デザインの力」だとの主張でした。

「デザインの力」がないと「目的」「プロブレム・ステートメント」は書けません。
「デザインの力」を武器として持たないとビジョンがつくれない、ということをあらためて感じました。そして、デザインの力を持っている方を会社のコアに据えなくてはいけない、ということが少しわかってきた感じがしました。

※1 著者

  • トーマス W.マルナイト IMD教授
  • アイビー・ブッシュ  IMDビジネス・トランスフォーメーション・イニシアティブ アソシエートディレクター
  • チャールズ・ダナラジ テンプル大学教授

関連リンク

横塚裕志コラム一覧

執筆者紹介


横塚 裕志
一橋大学卒業。1973年、東京海上火災保険入社。2007年に東京海上日動火災保険の常務取締役に就任、2009年に東京海上日動システムズ株式会社代表取締役社長就任。2014年より特定非営利活動法人CeFIL理事長となり、2016年にデジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)を設立、以降代表を務める。DBICでは日本を代表するメンバー企業約30社と共に、DX促進や社会課題の解決に取り組んでいる。

  • 特定非営利活動法人CeFIL 理事長 / DBIC代表
  • 産業技術総合研究所 研究評価委員会(情報・人間工学領域)委員長
  • 高崎商科大学アドバイザリーコミッティーメンバー
  • 日本ビジネスプロセスマネジメント協会副会長
  • インフォテック株式会社 取締役
facebook twitter