【横塚裕志コラム】日本の3密と韓国の3T

2020.06.11

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DBIC代表の横塚裕志です。2020年6月4日の「横塚裕志が聞きたいシリーズ」では、
e-CORPORATION.JPの廉宗淳さんをお招きして、コロナ対策の日韓比較をしていただきました。

私が一番強く感じたのは、両国政府の国民に対する基本的な考え方の違いでした。
それを象徴するのが戦略の骨子。日本はおなじみ3密。これは、「国民に3密を避ける責任があり、政府はできる範囲でお手伝いします」という戦略。
一方、韓国は3T。Test、Trace、Treat。検査で早く見つけて、感染者の動きをトレースして他者への感染を予防し、患者にしっかり対応する、という戦略で、これは「政府が感染予防の責任を持ち、施策を実行する」という戦略になっています。
日本は結果責任が国民にあるので、政府は国民と関係なくプロダクトアウトの考え方で、政府がやれそうなことをやるという考え方。韓国は結果責任が政府にあるので、国民の感染状態を早くつかみ、希望や望みを聞き、徹底して予防していくための必死の努力をするという考え方で、両者のスタンスの違いが浮き彫りになっています。
この構造の違いがコロナ以外のすべての戦略で明暗を分けています。例えば、マイナンバー制度。韓国は徹底して国民の手間を省くための制度としてとらえているから、すでに、金融、不動産、買い物、医療、学校などありとあらゆるものが紐付けされて国民の年末の確定申告書の計算は政府のサービスになっていたり、スマホですべての政府のサービスが受けられたりします。一方、日本はマイナンバーを政府の仕事を効率化するためのものと考えているため、省庁縦割りの壁で何もできていません。

これをビジネスの分野に置き換えて考えると、徹底して顧客に焦点を置き、顧客が買ってくれないのは企業側の責任と考える韓国流と、顧客は神様なので、企業は自分の製品を作るだけで買う買わないは顧客の責任という日本流との違いと全く構造が似ています。
自分の会社の商品を中心に考える日本の戦略では、「事業計画」であったり「ウォーターホール型」の経営がなじみ、お客様を中心に考えるデザイン思考やアジリティ経営などはなじみません。

21世紀のVUCAの時代にあっては、顧客に焦点を当てて顧客の望む価値を創造するビジネスでないと生き残れないというのが世界の常識になっています。しかし、コロナ対策でもはっきりしたように、日本だけが古いプロダクトアウトの考え方のまま取り残されていることを再確認させられました。コロナは、たまたまアジア人にはファクターXがあるために欧米のような状態にはならなくて済んでいるというようなことも言われていますが、多くの方が日本の戦略が正しかったという理由ではないと認識しています。それは、先ほどのマイナンバー制度の充実度の違いで明白です。

21世紀に入った新しい時代では、20世紀とは全く異なるビジネスの考え方に変革しないといけません。スポーツで言えば、野球からテニスに転換するようなことを求められていると認識すべきです。私たちが急いで転換していかないと、日本政府のように「偏差値の高い人が長時間働いても成果は何も生まれない」ということに陥る危険性が高いと考えるべきだと思います。
それがDXの本質だと理解するとすべてのつじつまがあってきます。顧客に焦点をあてると、その延長線上に「社会課題の解決」が見えてきて、個々の会社の存在意義が問われてくることになるのです。

廉さんによれば、韓国のビジネスではポストコロナの戦略として「NO CONTACT BUSINESS」の動きが活発とのこと。コロナが落ち着けば元の営業方式に戻れるなんてことを考えているとすれば、また、大きく差をつけられてしまうことにもなります。お客様はセールスに接したくないのだから、それを最優先に新しいビジネスモデルを考えるのがDX時代の考え方だと、早く宗旨替えすることが必要です。

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執筆者紹介


横塚 裕志
一橋大学卒業。1973年、東京海上火災保険入社。2007年に東京海上日動火災保険の常務取締役に就任、2009年に東京海上日動システムズ株式会社代表取締役社長就任。2014年より特定非営利活動法人CeFIL理事長となり、2016年にデジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)を設立、以降代表を務める。DBICでは日本を代表するメンバー企業約30社と共に、DX促進や社会課題の解決に取り組んでいる。

  • 特定非営利活動法人CeFIL 理事長 / DBIC代表
  • 産業技術総合研究所 研究評価委員会(情報・人間工学領域)委員長
  • 高崎商科大学アドバイザリーコミッティーメンバー
  • 日本ビジネスプロセスマネジメント協会副会長
  • インフォテック株式会社 取締役
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