【横塚裕志コラム】トップが弱音を吐くシーンは魅力的 

2020.06.24

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 DBIC代表の横塚裕志です。2020年6月11日のトヨタ自動車株式会社の株主総会をトヨタイムズで視聴した。

議長の豊田章男社長の話、「番頭」の小林耕士執行役員のメッセージに感動しました。
「人材育成に劣後した、成功体験を持つ故に変われない人が多くて苦労している・・・」と株主総会という公の場で本音で弱音を吐いている姿に心を打たれた。普通、トップは順調に行っていますとか、人材育成が大事ですとか、形式的なことしか言わないのに、なんと株主総会でトップが愚痴るとはなんと素晴らしい会社なのかと思った。

一般的に、私も含めて企業人は人前では弱音を吐かないのが普通だし、礼儀だと思っているし、やってはいけないことだという常識を持っている。
しかし、実際にトップが弱音を吐く姿を見ると、何故か感動する。なぜ感動するのだろうか。
それは、トップがそこまで悩んでおられるのか、という共感を持つことになり、こちらも本音で協力しなければいけないという気持ちになるからだろうと思う。自分と関係がないトヨタのことでさえ、なにか、共感を抱くのはなぜなんだろうか。不思議と自分の心がオープンになっていく。

会社の中が自由闊達に議論できる場となるためには、「心理的安全性」が保たれていることが重要だと言われる。この「心理的安全性」を保つためにはどうすれば良いのか、ということがたいへん難しい課題であることもわかっている。しかし、不思議なことに、トップが弱音を吐くことで急速に「心理的安全性」が浸透していくように感じるのはなぜだろうか。トップが鎧を脱いだのだから鎧は不要だと共感するのでしょうね。難しい心理的安全性を一瞬で実現してしまうトップの行動、これは素晴らしいことです。

では次に、トップはだれでも弱音が吐けるのか、という問いです。私の経験から言うと、公の場で本音で愚痴ることができる方は相当少ないのではないかと思う。それは、そういう方を見たことがないのでそう思うし、自分でもできないだろうなと思うからだ。例えば、安倍首相が国会で弱音を吐くことは絶対ないだろうと容易に想像できる。

では、どういう方がそれをできるのだろうか。
自分の会社を近い将来こういう姿にしたい、というビジョンを持っている方が本音で弱音を吐ける方なのではないかというのが私の仮説だ。その真偽のほどはわからない。
ただ、これからのVUCAの時代、トップが謙虚に学ぶこと、謙虚に弱音を吐くことが求められることはまちがいない。トップの役割が大きく変わっていく大転換の時代だということなのだろう。

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執筆者紹介


横塚 裕志
一橋大学卒業。1973年、東京海上火災保険入社。2007年に東京海上日動火災保険の常務取締役に就任、2009年に東京海上日動システムズ株式会社代表取締役社長就任。2014年より特定非営利活動法人CeFIL理事長となり、2016年にデジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)を設立、以降代表を務める。DBICでは日本を代表するメンバー企業約30社と共に、DX促進や社会課題の解決に取り組んでいる。

  • 特定非営利活動法人CeFIL 理事長 / DBIC代表
  • 産業技術総合研究所 研究評価委員会(情報・人間工学領域)委員長
  • 高崎商科大学アドバイザリーコミッティーメンバー
  • 日本ビジネスプロセスマネジメント協会副会長
  • インフォテック株式会社 取締役
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