【横塚裕志コラム】あの古臭い教育界が大きく変わり始めた

2020.09.15

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DBIC代表の横塚裕志です。DBICと関係が深い青翔開智中学・高校(鳥取県鳥取市)の織田澤博樹校長のセミナーを拝聴しました。

織田澤さんとは開校間もない2013年頃からの知り合いで、2018年にはDBICのデザインシンキング・ワークショップに生徒を派遣していただいたこともあり、また、私も2回ほど授業をさせていただいたこともあります。セミナーのタイトルは、「デザイン思考を活用した探求学習の最前線を知る」というもの。

 私は、教育界というのは10年に一度しか変えない「指導要領」という憲法の下で、30年前と同じような授業に終始しているという偏見を持っていましたが、最近は多くの学校が変革を進めており、その素晴らしい内容に驚きます。それは、企業の変革が遅々として進んでいない状況と比較すると、教育界の方が断然大きな変化を進めているように見えます。2018年に有名になったのは、日比谷高校(東京都千代田区)という超名門で、期末試験という定期試験を廃止したという事例。これには驚かされました。指導要領で決まっていたのではないのか、と目を疑ったことを覚えています。

 青翔開智中学・高校も、開校当初から従来型の中高一貫校とは違う考え方で設立されました。表面上は、今回のセミナーのタイトルにように「探求学習」に力を入れているとか、デザイン思考をベースにしているとか取り沙汰されますが、実は決定的に違うのが学校の存在目的にあります。一般的に中学高校の存在目的は、偏差値の高い大学に入り、有名な大会社に入社するための教育を実施することにありますが、青翔開智は違います。この学校の存在目的は、「20年後、30年後のための人格形成」にあるのです。偏差値の高い大学に入るための勉強ではないのです。結果的には、有名な大学に進学する生徒が多いようではありますが、その中身は相当違っています。60%の生徒がAO入試で合格するとか、海外の大学に進むとか、私たちの従来の発想、すなわち、京大・東大、慶応・早稲田とかという感じではありません。

 「探求学習」の目的は、自分の好きなことや自分がやりたいことを、自分に向き合うことで自由に発想しながら探していくということにあります。高校に入ると、個人個人が、自分がやりたいことや自分が好きなことと社会課題とが重なる分野で具体的なテーマを決めて、その解決策を研究し、校外に出て調査したうえで、論文を書くという授業をしています。だから、自然と自分の生きたい進路が見えてくるので、それをそのまま継続して活動できる大学を選ぶことになるようです。「偏差値が自分にあう大学や学部を選ぶ」というような感じではありません。織田澤校長に聞くと、やはり自分が好きなことをやるというのは創造性も豊かになるし楽しそうに取り組んでいるから、その能力も自然と向上しているとのこと。一方、中には親から有名大学への進学を強制された生徒もいるが、結果的にはあまりうまくいっていないことが多いとのこと。

 企業でも、自分のやりたいことが自由にできるような仕組みに変革することができないものでしょうか。企業の「存在目的」を、現在の「利益を上げること」をやめて「20年先、30年先の社会課題解決」にセットしなおすことで、この学校のようにワクワク楽しい活動に大きく変革することができないでしょうか。この学校には、自由に何でも相談する空気感、自由に考えていい空気感があります。校内での競争はなく、お互いの希望に共感する空気感があるのです。

会社でも、ストレスの中で働くというのではなく、希望をもって、仲間と楽しく働く会社になったらどんなにいいことでしょうか。あの古臭い教育界でも実現できているのだから、さあ、皆さん、仲間と結託して会社を変えていくことを考えませんか。

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執筆者紹介


横塚 裕志
一橋大学卒業。1973年、東京海上火災保険入社。2007年に東京海上日動火災保険の常務取締役に就任、2009年に東京海上日動システムズ株式会社代表取締役社長就任。2014年より特定非営利活動法人CeFIL理事長となり、2016年にデジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)を設立、以降代表を務める。DBICでは日本を代表するメンバー企業約30社と共に、DX促進や社会課題の解決に取り組んでいる。

  • 特定非営利活動法人CeFIL 理事長 / DBIC代表
  • 日本疾病予測研究所 取締役 
  • 富山大学非常勤講師
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