2018.02.05

 新興国で日本語を学んでいる学生と、日本の高齢者施設のシニアをビデオチャットでつなぐ日本語学習サービス「Sail」を展開する株式会社Helte(ヘルテ)。代表取締役の後藤学様には2017年9月にDBICのAmazing Fridayに登壇していただきましたが、その直後に連続してNHKの番組で取り上げらるなど、Helteの取り組みは大きな注目を集めています。

 後藤様の出身地でもある千葉県・柏のコワーキングスペース「ノブレスオブリージュ」内のHelteオフィスに伺い、オープンイノベーションパートナーとしての可能性を伺いました。

独自に開拓したタイの大学ネットワーク

後藤:2018年1月時点でタイのバンコク市内にある8つの大学、語学学校と提携しています。最初からタイにコネクションがあったわけではなく、バンコクの大学や日本語学校にアポイントなしで飛び込み営業をして、ひとつずつ開拓していった結果です。

 現地の大学とMOU(Memorandum of Understanding)という正式な契約が締結できていますので、Sailのサービスは大学の研究対象として実証実験されて、学会でも発表されていく見通しになっています。例えば、タイの大学が自ら、現地の学生と日本のシニアが共同で使う専用の日本語学習教材を新しく開発してくれています。これによってサービスの信頼度を高め、タイの次にはベトナムやインドネシアへの展開へとつなげていきたいです。

日本の介護施設に現れた成果

後藤:日本の介護施設でもSailの導入で良い効果が出ています。デイサービスのアクティビティとしてSailを導入していただいている北海道の介護施設の事例ですが、これまで月に4〜5回キャンセルをしていた利用者様が「この曜日は生徒に日本語を教えなければいけないから」とキャンセルをしなくなっています。これによって施設の収益率が改善しますね。

 また、NHKの番組でも取り上げられていたように、オンラインで出会った海外の生徒が、先生であるシニアに会うために来日して施設を訪れることがあります。このスキームを地域の活性や地方創生のビジネスモデルのひとつとして収益化できないか検討しています。

 他にも、Sailで日本のシニアとのコミュニケーション実績を積んだ新興国の学生の人材紹介というモデルがあります。近年は日本と経済連携協定(EPA)を締結しているベトナムやインドネシアからの介護人材に期待が高まっていますが、仲介業者の透明性が十分ではなく、多くのミスマッチが多く生まれています。Sailの会話数データは、海外からの介護人材の適性を判断する際のひとつの基準として機能しそうです。

 介護施設では想定していなかった成果も出ています。施設内でiPadの使い方を聞いたり教えたりすることから、利用者間の交流が深まり、Sailとは関係なしに外にでかけるシニアカップルが出てきているそうです。

介護施設開拓のハードルを乗り越えるために

後藤:本当はSailをオープンなサービスにして多くのユーザー様に使っていただきたいのですが、学生の数に対して、教える側の日本のシニアが圧倒的に足りていません。そのためタイの提携先の学校にしかサービスを開放できていないのが現状です。


Helteと提携してSailを活用している岩手県の「オークフィールド八幡平」のFacebookページより

 その意味では、日本の介護施設の開拓が最大の課題です。施設に営業活動に伺っても「実績がない」「信頼性がない」と拒絶反応を示されてしまいます。一度でも大手の施設で安定した実績がつくれたら、そこから先は雪だるま式にサービスが拡大していけるのではないかというビジョンはあるので、DBICメンバー企業様とパートナーシップを組んで導入を進められたらありがたいです。もちろん資金や開発面でもリソースが足りていないので、そういったサポートも必要としています。

フランス人投資家との運命的な出会い

後藤:Helteの起業に際して私は資金もコネもなく、簿記やプログラミングの学校に通いながらアルバイトでギリギリの生活を送る、真っ暗なトンネルを走るような時期が1年ほどありました。Sailの原型となるアイデアを着想してからも、日本ではなかなか取り合ってくれる企業や投資家が見つかりませんでした。

 そこで、アジアの友人に香港の投資会社を紹介してもらい、所属するフランス人投資家にプレゼンをしに香港まで行きました。私の30分ほどのプレゼンを聞いた彼が「とてもよいアイデアだから、私が投資する」と、即決してくださったんです。

 その場で「これで会社をつくれ」と、飛行機で持ち帰れるギリギリの現金を手渡され、帰国してからも現金が定期的に振り込まれるようになりました。そのお金を握りしめて、タイの大学に飛び込み営業に行ったのです。彼がリスクを取ってくれたから起業できたし、恩返ししなければならないという気持ちで日々を過ごしています。

未来のためのマインドセット

後藤:彼からは「明日にでも会社が潰れるかもしれない、と不安になるかもしれないけれど、それは実際には起きていないことだ。起きていないことで不安になることに意味はない」という恐怖と向き合うためのマインドセットを学びました。ビジネスレッスンの一環でしたが、これは人生すべてにおいて役立つ考え方だし、彼のようなメンターと出会えたとことが何よりの財産です。

 その後、IC-NET様が主催する「40億人のためのビジネスアイディアコンテスト」で受賞することもでき、IC-NET多田社長のサポートもあって一気に起業へとつながりました。これからもしHelteが大きく成長することができたら、自分も若い世代に対して同じように出資したり、サポートさせていただきたいと考えています。

プロフィール


後藤 学 Manabu Gotou
株式会社Helte(ヘルテ)代表取締役。
日本大学国際関係学部卒業。在学中にアメリカ・ワシントン州立大学留学、インド・ゴア大学に留学。2016年3月に株式会社Helte創業。

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