2017.12.15

 スマートフォンで遊べるロールプレイングゲームを通して心理的な問題を具体的に解決するための方法(認知行動療法)を学ぶ「SPARX」。ビデオチャットシステムを通した高品質なオンラインカウンセリング「ココロワークス」。

 ふたつのサービスを中心にデジタル時代の新しい心理ケアを提供するDBICのTPF(タレントプラットフォーム)メンバーの一員、株式会社HIKARI Labの清水あやこ様にオープンイノベーションのパートナーとしての可能性を伺いました。

効果検証済みの稀有なデジタルヘルスアプリケーション「SPARX」

清水:近年デジタルヘルス分野は大きな注目を集めていますが、効果研究まで完了しているサービスやアプリケーションは世界的に見ても数少ないのが現状です。

 そんな中、私たちが日本でローカライズとライセンス販売しているスマートフォン向けアプリ「SPARX(スパークス)」は、ニュージーランド・オークランドの大学研究者と臨床医のチームで開発したソフトで、現地での効果研究では「抑うつの寛解率が43.7%」という数値が立証されています。ニュージーランド版は国連やユネスコの賞も受賞しています。


「SPARX」のスクリーンショット

今起きている問題を解決できる認知行動療法

清水:日本人におなじみの剣と魔法の世界観に基づいたRPG(ロール・プレイング・ゲーム)を通して、認知行動療法と呼ばれる心理ケアの手法を学ぶことができます。日本では40代〜50代の一般男性ユーザーの方に多くご利用いただいています。認知行動療法は数少ない科学的に効果が立証された心理療法で、日本でも精神科医が行えば保険適用になります。

 端的に説明すると「今起きている問題を解決することが目的であり、短期間でその具体的な考え方や行動を学ぶ」というのが認知行動療法です。例えば「誰も他人の気持ちを読み取ることはできない」という基本的な考え方を学ぶことで、「自分はこう思われているに違いない」といった想像からくるストレスを抱えないようにしよう、といったトレーニングです。


「SPARX」のスクリーンショット

 ダイエットやランニングがなかなか続かないのと同様に認知行動療法も継続的に学習することは難しいですが、「SPARX」はゲーミフィケーションによって、プレイヤーが自然なモチベーションを持って最後まで続けられるように設計されています。

日本の心理ケアの現状

清水:日本では心理カウンセラーを名乗るための必須資格は存在しないため、自己申告で「カウンセラー」と名乗れてしまうのが現状です。民間の資格もいくつかありますが、2時間の受講だけで修了してしまうようなものもあり、品質もマチマチです。

 一方で「臨床心理士」は国家資格ではありませんが、指定の大学院で2年間のコースを修了しないと受講資格が得られないというもので、民間資格の中では最も難易度が高く、信頼性もあるものだとされています。今度「公認心理師」という国家資格が新設され、最初の試験が2018年にスタートするので、日本における心理ケアの品質向上が進むことを期待しています。

ストレスチェックの義務化とその限界

清水:2015年12月から従業員50人以上の事業所では年に1回のストレスチェックが義務化されました。日本における心理ケアの普及に向けた大きな一歩ですし、実際HIKARI Labのサービスを健保組合様へ導入すべく検討してくださっている企業様からお声がけいただいており、絶好のビジネスチャンスとして捉えています。

 一般的なアンケート形式のストレスチェックものよりも、「SPARX」のようなゲーム感覚で入っていけるようなものの方が従業員のみなさんにとってもとっつきやすいですよね。


「SPARX」のスクリーンショット

 とはいえ、健保組合様のサービスというだけで「利用しただけで会社に知られてしまうのではないか」という不安を感じてハードルになってしまうのも事実です。また、ストレスチェックの結果を受けて勇気を持って産業医への面談まで進んでも、精神科がご専門の産業医は少ないので結局は外部の精神科や心療内科を紹介されて終わりになることが多いと聞いています。

 困っている人が自分自身で「ひっそり、こっそり、手軽に」できることはやはり重要で、そのためにもAppストアやGoogle Playから健保組合を通さずに直接入手できることは必須だと考えています。

 こういう事業をやっていると「治験は取らないのか?」、つまり日本でも「SPARX」の臨床試験をやって厚生労働省から治療方法として認可を受けないのか、という質問をよく受けるのですが、私たちのサービスは「お医者様に行けない人に手を差し伸べるもの」でありたいので、敢えて治験は受けていません。治験を受けてしまうと、医療機関に行かないと使えないサービスになってしまうのです。

ポスト・スマートフォン時代に備え、Mixed Realityを研究

清水:DBICメンバー企業様に対しては、当然「SPRAX」やビデオチャットを使ったカウンセリングサービスである「ココロワークス」を健保組合様や福利厚生サービスとして導入をご検討いただきたいのですが、本当のオープンイノベーションはその先にあります。具体的には、新しい心理ケアサービスの企画開発でパートナーシップを組みたいと考えています。

 現在スマートフォンは巨大なビジネスプラットフォームですが、将来的にはスマートフォンも賞味期限を迎え、新しい時代が訪れると予想しています。次は「目」つまり「視覚」がキーワードのひとつになるというのが私たちの予想です。

 マイクロソフトの「HoloLens」が提唱している「Mixed Reality(複合現実)」に大きな可能性を感じています。現時点では認知行動療法を心理ケアのための効果的な手法として最重視していますが、私たちとしては心理ケアの効果が高くサービス展開が可能なものであれば、認知行動療法にだけに留まるつもりはありません。

 社名であるHIKARI Labの「HIKARI(光)」は、当事者に希望を持ってもらう、という意味もありますが、もう半分の意味は「光を使ったサービスをしたい」という想いを込めています。ウェアラブルという意味ではHoloLensでもいいし、Team Lab様のような光と音の空間を使ったサービスという方向性もあります。

心理ケアをいつでも、誰でも、簡単に受けることができる社会へ

清水:看板商品である「SPARX」も、私たちの能力限界を越えたレベルでリファイン、ブラッシュアップできる企業様がいらっしゃったらライセンスをお譲りしても構わないとすら考えています。オークランド大学からのライセンスの条件は「セリフやシナリオの流れを変えない」だけなので、キャラクターを変更したり、ミニゲームを導入したり、というアップデートの余地はたくさんあります。

 私がこの道に進むことになった背景には、親戚が深刻な体調不良を引き起こした際に、それがストレス起因であることが長期間にわたって特定されなかったため、壮絶な苦労をしてきたのをずっと見てきたという原体験があります。あんな思いをする人を、家族を、ひとりでも減らしたい。そのために海外留学をしたり、就職して資金を貯めたりしてここまで進んできました。

 手法にはこだわらず「心理ケアをいつでも、誰でも、簡単に受けることができる社会」を実現することがHIKARI Labの本質的な事業目的です。私たちと共に、次世代のデジタル心理ケアサービスを開発するパートナー企業をお待ちしています。

プロフィール


清水あやこ Ayako Shimizu
株式会社HIKARI Lab代表取締役。
上智大学国際教養学部卒業。外資系証券会社勤務を経て東京大学大学院臨床心理学コース修士課程修了。2015年、心理ケアサービスのスタートアップHIKARI Labを創業。
2018年4月に著書「ちょこっと、ポジティブ。 一瞬で気持ちがふわっと軽くなる35のコツ」を発売。

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