2017.12.15

 宮崎県を拠点にICTを活用した農業経営者向け経営管理支援サービス「RightARM(ライトアーム)」を展開する株式会社テラスマイル。本年からは福岡県、静岡県も加えた3拠点体制でサービスを広げているDBICのTPF(タレントプラットフォーム)メンバーの一員です。


左から梅林泰彦様、金田千広様、生駒祐一様

 最前線のひとつとなる静岡のトマト農場で、テラスマイル代表取締役の生駒祐一様、プロダクト責任者の金田千広様、そしてサービス利用者代表としてホットファーム株式会社 統括マネージャーの梅林泰彦様をゲストに迎え、オープンイノベーションパートナーとしての可能性を伺いました。

市況に左右されない農業経営のためのツール

生駒:テラスマイルが提供しているRightARMは、農業における収穫と出荷のデータに特化して分析を行ない、過去の市況の統計を組み合わせることで予測に基づいた農業経営をしていただくためのクラウドサービスです。

 栽培フェーズには原則関与していません。収穫量を増やす場面でもデータの活用による大幅な改善は有効ですが、収穫量が上がった分、単価が下がり、売上も前年度比マイナスという状況はよくあります。「つくらなかったほうが儲かった」という残酷な結果です。ひたすら単純に収穫量を増やせばよいというものではないのです。

 それよりも「市況をなくす」をテーマに「つくったものがいくらで売れるのか」「マーケットから何を求められているか」を最初に予測して、そこから逆算して作付けができるような仕組みづくりを重視しているのがRightARMです。

 料金体型としては初期費用が90,000円、管理者が複数の契約生産者を一覧管理するためのライセンスが月30,000円、個別の農家さんが評価レポートを見るのが月1回3,000円。ニーズが刺さったようで2017年12月時点で日本全国706枚の畑が集まっています。

現場の農業関係者とのネットワークが実現

金田:ヒト・モノ・カネ・情報で言うと「情報」から農業者さんを支えていくのがRightARMです。

 管理画面から月別にランク別、大きさ別、糖度別、規格別の出荷データが対前年比で「見える化」されています。何10円で仕入れた苗に対して、1本あたりいくら利益を上げているかまでを追えるようになっています。

 例えば農業の部会リーダーさんが導入し、部会内でのランキング表示や比較をすることで「どうしてこの畑は成績がいいんだろう?」と議論のきっかけにしていただいています。

 また、普及員さんという地域の農家に栽培指導をする立場の人がいらっしゃるのですが、RightARM導入のためのデータ収集に積極的にご協力いただいています。RightARMのセールスポイントのひとつに農家さんが独自に蓄積していたデータを統一フォーマットに整形して分析するサービスがありますが、これによって普及員さんの手間が圧倒的に減る点を喜んでいただけているようです。

活用されていなかったデータが宝に変わる

梅林:テラスマイルさんと出会う前からホットファームとしては膨大な栽培データと出荷データをExcelで記録していたのですが、ひたすら貯めているだけでどうやって活用していいのかわからずにいました。今年になって偶然、生駒さんとお話する機会があった際に「すごいデータをお持ちですね」と初めて評価していただいて、お付き合いが始まりました。

 とはいえ、足りないデータもありました。栽培データと出荷データが紐付いていなかったのです。例えば1番ハウスからトマトが100キロ、2番ハウスから200キロ、合計で300キロ取れましたよ、という栽培データを持っていても、出荷データとしては「合計300キロ」としてしか記録していませんでした。

 お客様がトマトを50キロ買ってくださったとき、それがどちらのハウスから出たのか内訳がわからない。テラスマイルさんからその重要性を指摘されて、過去のデータからわかる部分は抽出し、今後のデータの取り方も変えました。手間は増えますが「これだけの売上になるから、こういう栽培をしよう」という分析ができるようになったのは大きいです。

全国の農家さんの経営を数値化したい

金田:ホットファームさんのように、日本全国の多くの農家さんが独自のフォーマットで独自のデータをお持ちです。それを今まで一軒ずつ足でまわって、データを確認し、活用方法を考えるのを個別にコンサルしていたのですが、それだと「全国の農家さんの経営を数値化する」という弊社の夢はなかなか叶わないですよね。

 そこで、これまでのノウハウから「どんな農家さんも共通で持っている情報、欲しがる情報」を厳選してパッケージ化したのがRightARMです。

梅林:例えばボラティリティという収量の振れ幅があるのですが、これも農家にとって重要な情報なのに今まで可視化されていませんでした。

 ホットファームでは出荷作業を福祉施設のみなさんと行っているのですが、ある日に500キロ採れて大忙しだったから翌日には大勢スタッフを出していただいたのに、その日は200キロしか採れなくて手持ち無沙汰になってしまう、といったことがよくありました。

 ボラティリティを可視化することで「収量の振れ幅の大きい時期」が過去のデータからわかるので人員配置の計画に役立っています。

データ活用の将来

生駒:梅林さんのようにデータの可視化を通して経営改善に取り組んでいただいている話はたいへんありがたいのですが、一方でテラスマイルの限界としては「なぜ?」が説明できないところにあります。「データがそう言っています」としか説明できないのです。

 一方、近年メーカーの研究所では「説明AI」という技術が研究されており、「予測」だけではなく「根拠の説明」ができます。例えば橋梁の劣化診断のために長期間の定点撮影をされていて、どこかに不具合が出ると何ヶ月、何年前のこの気候が原因ではないか、といった理由付けができる技術です。

 ホットファームさんと今後進むであろう「説明AI」みたいな技術をマッチングしたら面白くなります。私たちだと農業の課題に対して「成績表」を出すことしかできなかったのが、「この時期のこれが大きく影響しています」まで言えるようになるはずですから。

ブランディング、海外展開、新規事業のパートナーとして

梅林:現状、農作物のブランドには生産地、品種、生産者の3種類しかないと考えています。そこに対して「ICTを使った農作物」「福祉施設と連携した農作物」といった新しい評価軸をつくっていけたらな、と考えています。

 なかなか浜松からはそういった全国規模の情報発信が難しいので、DBICメンバー企業様とのコラボレーションをきっかけにできたらありがたいです。

金田:おかげさまで日本国内の展開は徐々にネットワークも広がって、将来が見えるようになってきました。一方で海外についてはアクセスできる窓口がなくて目処が立っていないのが現状です。

 RightARMの海外展開のパートナーとなっていただけるDBICメンバー企業様と出会えたら素晴らしいです。

生駒:新規事業を検討されているDBICメンバー企業様がいらっしゃったら、ぜひ浜松のテラスマイル拠点に出向していただき、一緒に取り組みたいです。また、ファンドをお持ちで農業に将来性を感じていただけるならば投資をしていただけないでしょうか。

 私達のようなベンチャーにとって切実なのが総務系のリソース不足です。契約書ひとつとっても手探りな状況です。バックオフィスの支援も大きな推進力になります。

プロフィール


生駒祐一 Yuichi Ikoma
テラスマイル株式会社代表取締役。株式会社シーイーシー勤務時代に宮崎県のトマト農家の立ち上げを手がけた後、2014年に宮崎県でテラスマイルを創業。株式会社エムスクエア・ラボと共同開発した経営の可視化・予測・分析を行う「RightARM」を展開する。


金田千広 Chihiro Kanada
テラスマイル株式会社のプロダクト責任者。東京大学農学部卒業後、東京の電気工事会社を経て株式会社エムスクエア・ラボ入社。テラスマイルに出向し、同社の事業計画、「RightARM」のサービス企画・営業を担当している。


梅林泰彦 Yasuhiko Umebayashi
ホットファーム株式会社統括マネージャー
テラスマイルのパートナーとして取材にご協力いただいたホットファーム株式会社は2010年に設立し、静岡県の浜松市エリアを拠点に完熟収穫トマト「アップルスター」などの栽培を手がけています。農林水産ビジネスを通して高齢者の健康予防や、障がい者の就労支援事業といった地域福祉課題にも積極的に取り組んでいるのが特徴です。

お問い合わせ

掲載されている企業、タレントへの問い合わせは以下のページから受け付けています:
DBICお問い合わせ