2018.04.05

 トライポッドワークス株式会社は企業向けセキュリティソリューションの開発・販売を中核に2005年に創業し、近年ではIoT事業の展開やドローンを活用した空撮映像の制作で注目を集めています。代表取締役社長の佐々木賢一様は「ドローングラファー」の肩書を持ち、自らドローンの操縦、撮影、映像編集まで手がけられています。

 開発拠点である仙台本社にて佐々木様のインタビューを行い、仙台で起業した意味、海外企業との連携、ドローンビジネスの将来など、DBICのTPF(タレントプラットフォーム)メンバーの一員としてのオープンイノベーションの可能性を伺いました。

ローカルな視点とグローバルな視点

 生まれは仙台で大学から東京、日本総合研究所を経て日本オラクルで11年半ほど働いてからトライポッドワークスを2005年に起業しました。38歳のときです。

 本社所在地を働き慣れた東京にするか地元の仙台にするか迷ったのですが、優秀な技術者がUターン/Iターンで多く戻ってくる仙台の実態を見て、仙台を本社兼技術の拠点とすることにしました。

 生活や子育てにとって仙台はよい環境なのですが、最先端技術を活用する仕事がしたいとかクリエイティブな仕事をしたい人にとってはあまり恵まれた地域ではなかったと思うんですね。だったら仙台に居ながらにしてグローバルな仕事がしたいという、自分のような人間にとっての受け皿となるIT企業を作ったら優秀な人材が集まるのではないか、という狙いがありました。

 実際に集まった人材で何ができるかを考えて、結果的にセキュリティ事業を興した、という経緯になります。


並べられたドローンの前で創業の経緯を語る佐々木賢一様

 オラクル時代の経験から「パートナーを重視する」というスタイルだけは事前に決めていました。オラクルは海外ではダイレクト販売ですが、日本だけはインダイレクトのパートナー戦略をとっています。

 日本ではアメリカと違って、富士通、NEC、NTTデータなどといった国産メーカーやSIerがひしめいていますから、そことは競合せず、全員を味方につけるためにOEMやパートナー販売をする戦略です。自分で起業した際にも、開発は韓国や台湾や中国のパートナー企業と、販売は国内の大手企業とパートナーシップを結んで行っています。

新しいマーケット、異なるカルチャー

 大手企業向けのセキュリティ製品市場はレッドオーシャン化していますが、中小企業、中でも従業員規模数人から数十人といった企業のマーケットは当時未開拓。そこで、パートナー企業と一緒に中小企業様の現場に出向いて、実際の業務の様子を観察するところから始めました。ニーズを見極めて生まれたのがIP電話とセキュリティソリューションを統合した「SWIFTBOX(現行製品は後継機種の「CuteBox Plus」)」という製品で、セールス的にも成功し、トライポッドワークス成長のエンジンとなりました。


中国のメーカーDJIがドローンマーケットで大きなシェアを持つ。トライポッドワークスが所有する10台もほぼ全てが同社製

 ただ、当初開発パートナーである韓国企業との間で「品質の良いソフトウェア」が意味する認識のギャップに苦労しました。韓国やアメリカのソフトウェアは、当初多少のバグが出ても販売しながら改善していきます。日本は真逆で、販売時点での品質を厳しくチェックし、買う方も売る方も事前のチェックが非常に厳しい。一方で、導入後はこの業界でよく使う「運用でカバー」というスタイルで品質を補おうとします。

 これは逆に言えば、韓国と日本のエンジニアの特性の違いを相互に補完しあえることを意味します。わかりやすい例では、仕様決めやクオリティテストの実施は日本の技術者、実際にプログラムをするのは韓国の技術者という分担にする。その結果、日本的な意味での「品質の良いもの」が早くできることにつながっています。

社会課題をIoTで解決する

 セキュリティビジネスは現在でも中核事業ですが、3年ほど前からIoTと映像事業を第2の柱として育てています。2017年度の決算では約85%がセキュリティ、15%がIoTと映像関連との売上になる見込みです。IoTですと2018年春現在で引きが強いのが台湾企業と提携しているタイヤキャップ型のセンサー「BLUE-Sensor」です。

 トラックやバスなどの大型商用車のタイヤの空気圧や温度をセンシングするデバイスなのですが、元々の製品はスマホのアプリでドライバーにタイヤの状態を知らせるものでした。そこで、開発元の台湾企業にAPIを公開してもらい、スマホをゲートウェイにしたクラウド連携の部分を私たちが開発しました。
 これをベースに「BCクラウド」という車載IoT向けプラットフォームを開発しています。車両の状態、ドライバーの状態、運転の状態などをクラウド上でビッグデータ化し、安全管理や整備点検等に向けた提案を始めたところ、現在では大手から中堅どころの物流各社が本格的なテスト運用を行ってくださっています。

 イメージソリューション事業は、主に建設業に注力しています。工事の進捗管理や安全管理、品質の維持のためのプロセスの見える化などができるソリューション「ViewCamStation」がその代表例ですね。タイムラプス(早送りのコマ撮り動画)により1日の工程を30秒でざっと見たり、重機や作業員の移動を可視化したり、といった解析を加えています。

 物流も建設も農業もフィールド業務ですから、人手不足や少子高齢化の影響をダイレクトに受けますよね。起業の際にも触れましたが「ローカルな課題」を「グローバルな技術」で解決する、という視点が必要になってきます。最近は建設向けの画像解析技術をベースに開発した、保育園向けの赤ちゃん見守りシステム「べびさぽ」も大きな反響を頂いています。このように映像を分析して動きや行動を分析するニーズは、様々な分野に応用が効くと考えています。

ドローンの黎明期はこれから

 日本の巨大インフラが一斉に50年の寿命を迎えていることから、保守点検業務にはドローンが欠かせなくなるでしょう。今はまだドローンは人の操縦で飛ばしていますが、自動操縦に変わるのも時間の問題です。

 現在、業務で安全にドローンをオペレーションできる人材は国内でおそらく数百人程度だと思いますので、人がドローンを操縦している限りそれ以上の数のドローンは飛びません。しかし近い将来、自律的な自動飛行が当たり前になれば、何万という数のドローンが飛ぶようになり、多くの産業が変貌します。ドローンは黎明期と言われていますが、私はまだ黎明期にすらなっていないと考えています。自動飛行が実現してからが本当の意味での黎明期のスタートです。

来るべき需要爆発に向けて、最先端であり続ける

 私は2014年に「ドローンはプログラミングして自動飛行ができる」ことを知り、空間を活用したIoTデバイスとしての可能性を感じました。しかしながら、ドローンの本格的な産業活用はまだまだ実験の域を出ておらず、機体の販売、空撮や測量、スクールなど一部の分野を除くと、誰にとってもマネタイズは難しい状況がしばらく続くでしょう。

 一方で、近い将来やってくる需要の爆発を想定すると、この数年でどのようなノウハウを得、どのようなポジションを確立し、どのようにブランディングして行くかと言うのが非常に重要だと考えています。

 私たちのようなベンチャーにとってはマネタイズできていない事業を継続することは本来難しいのですが、たまたま私は写真撮影が趣味で、それが高じてドローングラファーとしての活動が増え、たった3年にも関わらず、幸運にも日本における先駆者のひとりになることができたと思っています。

 今や空撮映像のコンテンツ制作が事業のひとつに成長し、観光地や教育機関、企業のPRや花火大会の中継など、日本全国からご依頼をいただいています。それによって人脈ができたり、新しい技術に触れる機会ができ、将来的な事業の展開につながる話も増えてきています。

映像制作を手がける理由

 ドローンなど最新技術を活用した映像制作においては、ひとりもしくは数人のチームによって、従来10人程度で行っていた全プロセスをカバーできる可能性がある。ヘリコプターやクレーンなど特別な巨大装置を使う必要もない。だからこそ、私たちのようなIT企業が高付加価値な映像コンテンツを提供する意義があると考えています。

 一方で特別なスキルが必要な仕事ですから、どんどん人を増やして大きな売上は見込むことは難しい。ただし、この空撮事業を通じて、最新のドローン機材を実践的に使い、技術やトレンドにキャッチアップし続けることが重要です。そうすれば本格的なドローン自動飛行の時代が来たとき、いつでも事業参入できるポジションに居続けられる。

 また、ドローンに出会った私が経営者であったこともラッキーでした。客観的に考えたら、セキュリティソリューション開発会社の社員がドローンを飛ばせて映像編集ができても、経営判断として参入できないですよね。

 そもそも私の「趣味」から来た事業であることも強みだと感じています。もしこれが純粋な仕事だったら、こんな面倒な映像作業はその道のプロに外注しますし、これほど速い技術や法令などの変化をキャッチアップしきれないと思います。

大企業とベンチャーの関係性

 トライポッドワークスはIoT関連のエッジデバイスを海外から見つけてきてプロトタイプ化したり、センサーを活用したクラウドシステムをつくることを得意としています。DBICメンバー企業様からは、俊敏に動くベンダーとして活用していただければありがたいです。

 一方で、私たちは大手企業の困りごとや必要とされているニーズを正確に把握できていません。ドローンの講習会や映像制作などで出会うお客様を通して、手探りで学んでいるのが現状です。ですので、ユーザー企業の皆様、中でもIT部門ではなく実際に「困っている部署」とダイレクトにお話しして、ニーズの勉強をさせていただくことを通して、新しいマーケットを共に築き上げることができるのではないかと期待しています。

プロフィール


佐々木賢一 Kenichi Sasaki
トライポッドワークス株式会社 代表取締役社長 兼 ドローングラファー
 宮城県仙台市出身。日本総合研究所を経て、日本オラクルに入社。2000年に日本オラクル東北支社長として同支社を立ち上げ。2005年11月にトライポッドワークス株式会社を設立。創業以来の柱であるセキュリティ事業においては企業向けオンラインストレージ、メールセキュリティ、ネットワークセキュリティの製品が、のべ23,000社へ導入済。新規事業の映像解析ソリューションとIoT事業では、建設、物流、農業や保育の分野で実績を増やしている。
 ドローングラファーとしても2017年、2018年連続でデジタルハリウッド主催「Drone Movie Contest」のファイナリストに選出。2018年は 東北地方の四季を鮮やかに描いた「SHIKISAI – Four Seasons of TOHOKU」ががグランプリに次ぐ審査員特別賞ブルーイノベーション賞を受賞した。

Drone Movie Contest 2018 審査員特別賞受賞作品「SHIKISAI – Four Seasons of TOHOKU」

 100名以上のメンバーからなる震災復興支援団体「ITで日本を元気に!」の主宰者としても現在に到るまで数多くの活動を継続している。