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【レポート】企業変革実践シリーズ第19回「信頼に基づく学校経営」

開催日:

2022年4月14日(木)、DBICでは企業変革実践シリーズ第19回として「信頼に基づく学校経営」をオンラインで開催しました。講師は鳥取県の青翔開智(せいしょうかいち)中学校・高等学校校長の織田澤博樹さん(41歳)、2022年4月時点で、日本で5番目に若い校長です。開校9年でありながら文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定をはじめ、世界ランクトップ100の海外大学への進学などの輝かしい実績で全国から注目を集めている中高一貫校。教員の能力を最大限に引き出し、生徒の探究学習を支援する仕組みなどのお話しを通じて、組織運営のヒントを学んでもらおうと企画しました。

織田澤さんは大学卒業後、日立製作所でシステムエンジニアを経験、その後、親族の関係で青翔開智中学校・高等学校の開校に携わったとのこと。更地から建設されたモダンな2階建て校舎は吹き抜けの明るい空間が広がり、生徒たちは思い思いの場所に集まって"探究学習"をしています。1学年2クラスで、1クラスは20人で構成。校舎には廊下や壁面などあちらこちらに本棚が設置されていて、織田澤さんによれば「図書館の中に学校がある」というコンセプト。天井裏にWi-Fiルーターが設置されていて、どこからでもインターネットにアクセスできる。そういう環境を10年前に実現しています。
先生の平均年齢は33歳。文科省調べでは公立学校の先生の平均年齢は44~45歳ですから、ひと回り若いのが青翔開智。もう1つの特徴は、県外出身の先生が70%超えで、しかも"馬鹿もの"が少なくないそうです。例えば、ハロウィンには先生がコスプレで教室に乱入する。文化祭では、マグロの被り物で登場する先生もいて生徒からの人気も上々だそうです。青翔開智ではどのような人材育成を目指しているのかという問いに織田澤さんは「鳥取・日本・世界のヒーローになる人材 誰かの味方になれる人材」だと断言。この言葉は、毎日、生徒に伝えていると言います。また、選択肢の多い大人になって欲しいと言い、具体的には、1)日本から精神的に脱出し自立できる大人 2)物理的に世界のどこでも働いて生きていける大人 3)消滅可能性のある鳥取で生活する家族を支援できる大人 を目指して欲しいと声を大にしていました。
建学の精神として、「探究」「共成」「飛躍」の3つの柱を打ち立てていて、最重要と位置付けているのが「探究」。創造力をスパークさせ、鳥取県そして世界の課題を発見し解決することを目指す目的で、「探究基礎」という授業も運営しています。週に2回(90分)、この探究授業があり、内在する問題を発見して、その問題を創造的に解決していくという営みを中1から高3まで徹底的にやっています。
中1から高1までは、4人1チームで問題に取り組んで、高2~3では論文作成に注力するシステム。中1のテーマは、「鳥取県に魅力的な〇〇を作ろう」というもの。例えば、近くの公園のリニューアルに本格的に取り組んだりしているそうです。中2は、「課題解決型職場体験」。企業に行って、企業の課題を見つけて、その問題をクリアするアイデアを社長に提案するといったもの。これを実行するにあたっては、デザイン思考を活用しているとのこと。例えば、「タバコポイ捨て解決策」。これはあるチームがコンビニに行った時に、駐車場にタバコの吸い殻がたくさん捨てられている状況をどうにかしたいと彼らが考えたのが、梅か昆布のおにぎりのどちらかに吸い殻投票してもらう箱の作成。投票が多かったおにぎりを翌月安くしてもらうことをオーナーに提案したそうです。
また、世界史や英語、数学など通常の授業でも「探究基礎」のアウトプットの質を高めるための手法を取り入れ、世界史では「絵画が歴史にどのような影響を与えたか」、英語では「ジブリ映画のシーン紹介」、数学では「鳥取県の気象データを使って新しい観光プランを作成する」といったことが実行されています。
文科省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)にも早々と認定されています。SSHは全国5,000校ある高等学校の中で約200校が選ばれているものですが、ある調査では青翔開智の生徒の「独創性」、「問題発見力、気づく力」、「問題を解決する力」が全国平均に比べてずば抜けている結果が出たようです。実際、学校の外に出て、活躍する生徒が急増していて、小学生向けの英語教室を主催する女子生徒のほか、eスポーツ大会を主催する生徒たち、鳥取砂丘にある砂の美術館でファッションショーを実行する生徒たちなど、こうした生徒たちは、偏差値だけでなく、自分がやりたいテーマを継続して学習できる大学選びにまい進しているとのこと。

後半は、「学校経営への思い」が語られました。
「学校をつくるとは、文化をつくること」と織田澤さん。彼は、9年前の開校時の教員集めから奮闘していますが、その時に参考にしたのがジム・コリンズ著「ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則」だったそうです。教員採用の基準は「クレイジーな人」、「シンプルな人」、「カジュアルな人」の3つの要素。クレイジーな人とは「枠にハマらずぶっ飛んでる人」。その基準で採用した女性教師は、鳥取にはハンドボールの文化がないから、自分がハンドボールの文化を根付かせますと胸を張ったそうです。何かを変えたいと堂々と言える人は魅力的という理由で採用。ハードルが高い国立公園の鳥取砂丘でハンドボール大会を主催してしまったそうです。シンプルというのは、「物事を簡単に伝えられる人のこと」。学校の先生は難しいことをさらに難しく伝えようとする人がとても多い。それでは生徒たちに物事を教えられません。カジュアルは、「気軽で格式張らない人」の意味。上から目線で生徒と接するのではなく、生徒と対等に話し合える先生を欲している。ルービックキューブが得意な生徒にコツを教えてもらっている先生の話しもありました。生徒たちに人気があるアフロヘアーの社会科の先生は、VRゴーグルを装着して体験する「大政奉還ゲーム」を開発。他校では「VRゴーグルが生徒分ないじゃないか」となりそうですが、青翔開智では、せっかくの機会なのだから、最先端の技術を生徒たちに経験させようというノリになるわけです。
青翔開智の人事制度では、グーグルや3Mも実施している「8対2の法則」を取り入れて、先生には、「全体の2割は自分のやりたいことをやって下さい」と伝えています。そうした中で先生から「統計検定を実施したい」、「ハンドボール部をクラブチームにしたい」、「英語の発音矯正合宿をする」、「青翔開智をSSH校にする」という目標を過去にもらい、これらはすでに実現されているそうです。
最後は、「自分を大切にして」というテーマでした。
「勤務時間内は自分と生徒を、勤務時間外は自分と家族を大切にする」ということを織田澤さんは口を酸っぱくして訴えています。その流れで、織田澤さんは、マズローの欲求の5段階説や矢沢永吉の「矢沢は矢沢のためにうたっている」という話しを引用しながら、企業もお客様のためにだけではなく、自分のためにとの認識を新たにした方が良いのではと示唆していました。教師の"上から目線"を解消するために考案したのが、生徒の方が上から目線になるソファ。物理的に生徒を上げることでようやく、フラットな関係になるという考え方。また、校内で使う言葉も、「生徒指導を生徒支援へ」「進路指導も進路支援へ」と置き換え、効果を発揮していると言います。
コロナ禍前の教員室の映像では、生徒たちが教員室に押し寄せ、いろいろなことを先生とコミュニケーションしているシーンが感動的でした。織田澤さんは、最後に、最近ハマっていることとして、「ルールによる管理から倫理によるマネジメントへ」という言葉を紹介されました。

【スピーカーご紹介】

織田澤 博樹(おたざわ ひろき)氏
群馬県沼田市出身。電気通信大学大学院修了。日立製作所でシステムエンジニアを経験した後、アニメ・キャラクタービジネス業界で子供向け玩具やイベント・ミュージアムの企画を行う。2012年より鳥取県に移住し青翔開智中学校・高等学校の立ち上げに設立準備室室長として関わる。2016年度に副校長、2020年度より校長に就任。

織田澤 博樹 氏のインタビューはこちら:DBICデザインシンキング ケーススタディー CASE:01織田澤 博樹青翔開智中学校・高等学校

横塚裕志コラムはこちら:【横塚裕志コラム】若い校長が挑みつづける ほんとうの育成モデル ~「信頼経営」の姿を求めて~

デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)が活動を続ける理由

設立エピソード

2014年、世界で起きていることを肌感覚で確かめるため、半年をかけて世界を回った。そこで感じた危機感を日本企業に正しく伝え、行動を促すための研究会を発足するために奔走。26社の名だたる企業と世界有数の大学と連携し、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)の立ち上げとともに我々のイノベーションジャーニーが始まった。

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