【横塚裕志コラム】HOW TO WINをリードする経営者の強い覚悟 ~IMDマンゾーニ学長との「トップ会議」レポート~

11月7日に、IMDのマンゾーニ学長、一條教授とDBICメンバーの経営者との「トップ会議」を行った。
マンゾーニ学長の講演「Leading Transformation」とその後の参加者との熱いディスカッションは、経営者のリーダーシップについての議論であった。
学長のメッセージはシンプルで、世界の厳しい競争の中で勝ち抜くためには、「HOW TO WIN」を意識した経営者の強い覚悟・戦略が何より重要だ、ということであった。そのために経営者は何をすべきか、学長の主張を私の感性で報告する。
(横塚が感じたことを書くので、客観的に正しく書けていないことはあらかじめお詫びしておく)

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<勝つために経営者が取り組むべきこと>

①「どこで戦うか」「いかに勝つか」の強力な戦略が重要。明確な戦略を決めて、そこに集中しなくては勝てない。やらないことを決めることもポイント。戦略は「価値の創造」が不可欠だが、「価値の獲得」はもっと難しい。「獲得」するためには、競合すべてに秀でる「何か」を持つ差別化された組織能力が必要だ。「かなり得意」では全く足りない。

② 戦略は、部門ごとの戦略を束ねるようなものであっては成功しない。「会社全体としての戦略」を企画することが必要だ。そして、戦略の明確性を担保するために、「戦略的ナラティブ」を学び、実践することも重要だ。

「全体戦略」について、私がイメージしたことをコメントする。
経営戦略を立てるときに、商品戦略・チャネル戦略・IT戦略・人事戦略などと作成していくことをやりがちだが、これでは部門ごとになってしまう。会社全体として「どこで戦うか」「いかに勝つか」を明確に決めなくてはならない。例えば、「どういう困りごとを持った人がどういうマーケットに存在するので、当社ならこのように解決することができ、潜在マーケットはこれくらいあるので、これを戦略として実行する」というように決めることが必要なのだろう。加えて、戦略はナラティブなステートメントで書き起こすことがポイントのようだ。箇条書きのパワポでは項目が羅列されているだけで一貫した戦略になりにくい。社員や他のステークホルダーの共感を得るためにはナラティブな「戦略」が必要だと、シンガポールのアクセラレーターから学んだことがある。

③ 戦略実行の過程では、「NO」を突き付けなくてはならない事案もある。その結果、一部の人から嫌われることになるが、嫌われることを恐れてはならない。「イノベーションとは1000のことにNOと言うこと」(スティーブ・ジョブズ)

④ 世界レベルで通用する優秀な人材でなくては勝てない。世界レベルの人材をいかに集めてくるか、自社で働いてもらえるか、に取り組まなくてはならない。

⑤ 経営者の自己管理がキーになる。戦略に対して、経営者自身が社内で一番強くコミットする行動をとる必要がある。熱く真剣に戦略にコミットする態度がなくては、戦略の説明にも説得力が生まれない。人生賭けて取り組む経営者の姿勢が社員やパートナーの共感を生む。だから、経営者は自分の時間を戦略の実行に向けて、どのように使うのかを自分で考えなくてはならない。

⑥ 経営者は、社員や関係者への「思いやり」の心を持つ必要がある。社員や関係者だけに苦労を負わせてはいけない。この戦略実行によって、社員がどれだけのベネフィットを得ることができるかを説明しなくてはいけない。会社の成功だけでは関係者の共感や協力は得られない。

⑦ 戦略の内容を言葉で社員に伝えることはたいへん難しいことだと認識すべき。アライメントを確保することは大変重要。従って、リーダーは繰り返し繰り返し、社員に語り続けなければならない。学長ご自身も、毎日月に数百回のレベルで説明を繰り返しているとのこと。

⑧ 失敗は讃えるべきことだ。だが、プロセスと結果を分けて考える必要がある。闇雲に挑戦しても確率は低くなるので、挑戦のプロセスをベストプラクティスのプロセスとして定め、そのプロセスで進めることが重要だ。

⑨ スタートアップをM&Aするケースでは注意すべきことがある。スタートアップを大企業の中に組み込むと生産性が下がってしまう事例が多い。彼らから報告を求めることは必要だが、オペレーションは彼らに任せておくほうが良い。特に本社は別にすべき。

学長のメッセージについては以上だが、一條教授からのメッセージもとても厳しいものであった。それを最後に書いて終わりにする。
「日本企業は、過去の成功体験というユートピアの中でのんびりしているように見える。それでは、どんどん競争力を失っていく。ウエルビーイングもいいが、今こそ、「HOW TO WIN」を主題にした経営者のリーダーシップが問われている。」

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